2016年から観光庁が取り組んでいる「テーマ別観光による地方誘客事業」のテーマの1つに「ロケツーリズム」があります。
中でも佐賀県は、訪日タイ人観光客をターゲットに「ロケツーリズム」に積極的に取り組んだ結果、3年間で約15倍のタイ人宿泊観光客の誘致に成功しました。今回は「ロケツーリズム」という観点から、インバウンド誘客を促進した佐賀県の取り組みを紹介し、ロケツーリズムが持つ地方誘客への可能性と成功の鍵について見ていきましょう。
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ビザ緩和と直行便の就航がタイ人の訪日旅行を後押し
佐賀県はロケツーリズムによるインバウンド誘客のターゲットとして、タイを設定しました。
観光課とともに尽力した佐賀フィルムコミッション(以下、佐賀FC)は、ロケ誘致や支援に取り組むことで、佐賀の魅力を国内外に発信し、観光客誘致に繋げていくことを目的としています。
こうした業界を取り巻く環境でいうと、2013年頃から日本全国のフィルムコミッションの競争が激化し、これまでターゲットとしてきた韓国や中国の誘致が厳しくなりました。そこで新たなターゲットとして浮上したのがタイです。
タイに注目した理由のキーワードには「ビザ緩和」と「直行便」があります。ちょうど2013年の7月からタイ人の訪日観光ビザの発給要件が緩和されたことから、訪日タイ人観光客の増加が見込まれました。
加えて隣県の福岡空港にはバンコクからの直行便が就航しており、佐賀県への誘致も期待できます。
ビザ緩和と直行便以外の条件として「映画・テレビ業界の動向」「日本への興味関心の高さ」「佐賀への導線」「日本の他地域でのロケ実績」について徹底的に調べた結果、タイをターゲットに選定するにいたります。
映画公開後の観光PRを見据え、プロモーションを準備
佐賀FCはインターネットの活用やジャパンフィルムコミッションの協力による、タイの映画・テレビ業界とのコネクション作り、そしてバンコクでのセールス活動を通し、タイ映画界の大御所監督が手がける映画のロケ地として、佐賀県をPRすることに成功しました。誘致成功の理由の1つとして「佐賀だけにあるもの」ではなく「佐賀にもあるもの」で勝負をしたことを挙げています。海外の映像関係者は桜や神社など、定番の日本のイメージであるとし、東京や京都などの有名観光地でも撮影が可能です。だからこそ、佐賀県なら同じものの撮影が低コストでできること、佐賀FCの豊富な実績と十分な支援を提供できることをアピールしたことで、佐賀でロケをすることの魅力を最大限に伝えられたと言えます。
ロケ地の誘致から観光地としてのPRへ繋げるためには、撮影中のタイ側の関係者たちとの信頼関係構築が重要です。佐賀県では、映画の主演女優が表紙の観光PR冊子の製作実現に向け、まず観光課が急遽タイへのプロモーション予算と人員の大幅投入を行いました。撮影中は佐賀FCや観光課のスタッフが頻繁に現場に顔を出すことで、タイ側との密なコミュニケーションを図っています。地道な取り組みの結果、タイ側からさまざまな協力を得ることに成功し、観光PR冊子の製作はもちろん、映画公開イベントで観光課スタッフが佐賀の魅力をPRしたり、旅行イベントで監督をゲストとして招き佐賀の魅力を語ってもらう機会などを設けることができました。
ロケ地の誘致決定をゴールとするのではなく、映画公開後の観光PRも見据え、迅速にプロモーション環境を整えることが、ロケツーリズム成功の鍵と言えるでしょう。
映画の大ヒットでタイ人の宿泊者数が大幅に増加
佐賀県でロケを実施したタイ映画『タイムライン』は、2014年にタイ全土で公開されました。初登場でタイ国内の人気映画作品ランキング2位、2014年のタイ映画年間興行収入5位の大ヒットを記録しました。
主演女優はタイ最大の映画賞で最優秀主演女優賞を受賞し、非常に大きな注目を集めることとなりました。
135分のうち佐賀のシーンは10分ほどでしたが、これをきっかけにタイのメディアで佐賀県の知名度が急上昇します。
事前に作成した、映画の主演女優が表紙の観光PR冊子「ADVENTURE SAGA」の効果は非常に大きく、ロケ地を中心としたツアー商品造成が続々と決まっていきました。ロケ地を中心に佐賀を訪れるタイ人観光客が増加していき、2014年の宿泊者数は前年比約4倍の1,540人、2016年には5,830人にまで急増しています。
この続きから読める内容
- 継続的に佐賀県のプロモーションを実施
- ロケツーリズムのチャンスは全国に
- 日本の魅力ある商品を在日外国人インフルエンサーとつなげるマッチングプラットフォーム「trial JAPAN」
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