2018年の訪日外国人は3,000万人を超え、インバウンド全体の消費額は4兆5,000億円を記録しました。しかしながら政府が掲げている目標は「2020年に訪日外国人数4,000万人」「消費額8兆円」で、特に消費額において目標と現実にまだ差があります。
現在の訪日外国人一人当たりの消費額は15万円ほどですが、消費額8兆円を達成するためには、それを20万円にまで上げる必要があります。そこで観光庁は昨年から、新事業「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」を採択して一人当たりの消費額底上げに取り組んでいます。
6月13日には、改めて事業の実態を把握・精査し、今後の事業の進め方や予算要求などに活かす「行政事業レビュー」という会議が行われました。
今回の行政事業レビューは外部の有識者を交えて公開の場で行われることから「公開プロセス」と呼ばれます。実際に当日はニコニコ生放送での中継も行われ、全国に公開されました。
ここでは「最先端観光コンテンツ インキュベーター事業」の内容や会議で出た意見について紹介していきます。
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「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」とは
最先端観光コンテンツ インキュベーター事業とは、「2020年にインバウンド消費8兆円」という目標を達成するために観光庁が行う、訪日外国人向け新コンテンツの造成支援事業です。
近年日本のインバウンドでは、訪日外国人数自体は伸びているものの消費額がそれに伴っていないという実態がありました。観光庁はそれを改善するため、欧米諸国と比べ日本での消費額が低い「娯楽サービス費」に注目しました。
娯楽サービス費とは、いわゆる「コト消費」による消費を指します。「コト消費」とは、商品を買うことで得られる価値ではなく、何かしらの体験をすることで得られる価値を重視する消費傾向です。
観光庁は娯楽サービス費の部分を伸ばすためにはコト消費を促進する必要があると考え、地域における訪日外国人向け新コンテンツの造成を喫茶の課題としました。
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「モノ消費からコト消費へ」インバウンド市場の変化
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しかしながら中小規模の事業者による新規参入や、特に求められているICT等の新技術を活用した観光コンテンツの新規造成にはリスクが伴います。そこで観光庁が新規事業を支援し、成功した事業モデルを全国的に展開させることで消費額の底上げをはかるというのが今回の事業の趣旨です。
具体的には1件あたり1,500万円程度の規模の事業を公募し、国費で支援を行います。今年度は30件ほど採択するということです。
なお、「インキュベーター」という言葉は一般的に起業支援をする事業者という意味で用いられますが、今回の事業では新しいコンテンツの造成支援という意味で使われています。
昨年の事業内容:オフシーズンの自然体験アクティビティやVR体験などさまざま
![▲[「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」昨年度の採択事業]:観光庁HPより引用 ▲[「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」昨年度の採択事業]:観光庁HPより引用](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/3382/main_incu19.png?auto=format)
昨年度は、まず20の国と地域の外国人1万人にWebアンケートを行い、コト消費の傾向やニーズを把握するところから開始しました。その後会議を経て、注力すべきとされた分野について事業を公募しました。
具体的には自然体験・ビーチ・地域のお祭り等、ニーズはあるもののまだ活用されていない観光資源、ナイトタイムエコノミーにも関連する夜間の観光資源、最先端のICT技術を活用したコンテンツ形成などです。
実際に採択された事業に、福井県高浜市のビーチにおけるオフシーズンの体験アクティビティ造成、中部国際空港における「バーチャルなNINJA体験」ができるVRアトラクションブースの設置などがあります。
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デービッド・アトキンソン氏も参加、6/13「公開プロセス」では"抜本的改善"の方向に
![▲[最先端観光コンテンツインキュベーター事業「公開プロセス」の様子]:観光庁より引用 ▲[最先端観光コンテンツインキュベーター事業「公開プロセス」の様子]:観光庁より引用](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/3380/main_incu8.png?auto=format)
6月13日に中央合同庁舎で行われた「公開プロセス」には、『観光立国論』『世界一訪れたい日本のつくりかた 新・観光立国論【実践編】』などの著書で知られるイギリス出身の経営者デービッド・アトキンソン氏を含む、9名の外部有識者が参加しました。
公開プロセスでは主に、今回の事業の方向性・有効性について議論されました。会議では「地方の中小事業者への業務委託」という今回の事業計画が「消費額8兆円」という目標の達成につながるかが有識者の間で疑問視され、観光庁の担当者に繰り返し質問が及びました。
複数の有識者から「消費額8兆円を達成するために地域での新規観光コンテンツの造成をしたいというのは理解できる。しかしながら、一つの地域で成功した事業モデルを全国的に展開していくというこの事業計画でその目標を達成できるのかは疑問。」という意見が聞かれました。
会議の最後には投票結果が発表され、「廃止」に2票、「抜本的な改善が必要」に3票が入りました。
![▲[「公開プロセス」で発言するデービッド・アトキンソン氏]:観光庁より引用 ▲[「公開プロセス」で発言するデービッド・アトキンソン氏]:観光庁より引用](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/3381/main_incu7.png?auto=format)
「抜本的な改善が必要」に投票したアトキンソン氏は、その理由について「ここで廃止することもできるが、今まで問題だらけとされてきたDMOについてその役割が去年議論され、これから改善していく時期にある。その期待も込めて。」としました。
デービッド・アトキンソンとは
2017年6月より、日本政府観光局の特別顧問に就任したデービッド・アトキンソン氏は、イギリス出身、日本在住の経営者です。著書『新・観光立国論』が複数の賞を受賞し、その発言にインバウンド業界の注目が集まるようになりました。もともとは金融アナリストですが、大学では日本学を専攻しています。2009年には、文化財などの修理、施工を行う小西美術工藝社に入社し、2年後社長に就任しています。デービッド・アトキンソン氏の提言を受け改善に励んだ観光関連産業も少なくありません。こうした取り組みにより、昨年の訪...
デービッド・アトキンソン氏「少子高齢化の日本では『移民』より『訪日観光』を促進すべき」…その理由、インバウンドのあるべき姿とは?
株式会社小西美術工藝社代表取締役、デービッド・アトキンソン氏は『新・生産性立国論』をはじめ多数の著作を持ち、グローバルな視点から日本のインバウンド業界への提言を続けています。2018年7月4日には「ヒト・モノ動きの未来塾」の勉強会に講師として登壇しました。「ヒト・モノ動きの未来塾」は運輸・観光領域の再定義、基幹産業化するために必要となる取組について、様々な企業⼈・個⼈・官庁関係者が専⾨分野を越え議論を深め交流しようと立ち上げられたものです。数値やデータの分析など、しっかりとした裏付けから導...
今後の方向性に注目
「最先端観光コンテンツインキュベーター事業」は、今回の公開プロセスにおいて「抜本的な改善が必要」ということになりました。
しかしながら欧米諸国に比べて日本での消費が低い娯楽サービス費を底上げしようという考え方は、インバウンド消費を上げるという意味では理にかなっているといえます。
2020年の消費額目標を確実に達成できるよう、事業スキームを改めて練り直すことが求められています。
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