インバウンドの受け入れ対策の1つとして多言語対応が活発化している一方で、「外国語案内」の質の偏りが現在問題となっています。
外国語の誤った表記が海外メディアで笑いのネタになってしまっている例もあり、今後インバウンド対応を強化していく上で、早急に対応が必要な課題と言えるでしょう。
今回は、日本の外国語対応の現状と課題をふまえ、より正確な外国語表記を実現するための解決策と、鳥取県の取り組み例を見ていきましょう。
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日本の多言語対応における2つの問題点
昨今では、日本における誤った外国語案内を取り上げている中国のSNSといった海外メディアが見受けられるようになりました。日本のテレビ番組で「面白すぎる外国語案内」などと話題にしているケースもありますが、今後さらなるインバウンド誘致に取り組む日本において、正しい外国語案内の整備は急務と言えるでしょう。
日本における多言語対応には、主に2つの問題点があります。
1つは、全国・業界共通の「汎用案内」に対し、事業者がインターネットの翻訳ツールを利用している点です。トイレの使用方法や方向案内といった汎用案内では「意味が通じれば良い」とし、インターネットの翻訳ツールで訳したものをそのままコピペするケースもあるとのことですが、文法や言葉の間違いが多く結果的に通じない可能性もあります。
観光庁では「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」を発表しています。多言語での表記方法や対訳語の一覧などが詳細に記載されていますが、ガイドラインの存在を知らない事業者も少なくありません。正しい外国語案内の情報が手に入れられる状況にも関わらず、情報収集不足から誤った翻訳をしてしまう原因の1つと言えるでしょう。
2点目として、翻訳内容を誰もチェックしていないケースが挙げられます。第三者による翻訳の確認を怠っているケースや翻訳会社の選定ミスから、最終的に質の低い外国語案内になってしまうことが考えられます。
インバウンド向け、より効果的な多言語表記を実現するために
前項で触れた日本の多言語対応における2つの課題をふまえ、今後はガイドラインの認知度向上が求められると言えるでしょう。観光庁の「観光立国実現に向けた多言語対応の改善・強化のためのガイドライン」に記載されている、多言語での表記方法といった情報を、自治体やDMO等がホームページへ掲載するといった対策を講じ、各事業者へ周知を図っていくことが効果的です。
また、翻訳を外部へ依頼する際は、ダブルチェックを実施する翻訳会社を探すなど、慎重に選定することが重要になります。
さらに質の高い多言語案内を作成するために、翻訳対象の国の文化的背景を考慮することも、はずすことのできない視点となってくるでしょう。
言葉を正しく翻訳することはもちろん大切ですが、言葉によりある意図を伝える「案内」では、その言語を話す国の文化を理解・把握した上で表現する必要があります。
例えば、日本ではトイレットペーパーはそのまま流すのが常識ですが、中国など一部のアジア地域ではトイレ詰まりを防ぐため、流さず近くのカゴに入れるのがマナーです。日本での当たり前が世界の当たり前とは限らないということを念頭に、翻訳対象の国に合わせた案内内容も検討すると良いでしょう。
鳥取県の多言語対策例:中国の慣習も考慮した表記が効果的
漫画『名探偵コナン』の原作者の出身地として、訪日中国人観光客を中心に話題となっている鳥取県東伯郡北栄町では、町全体でインバウンドを盛り上げようといった意欲が旺盛です。中でも「青山剛昌ふるさと記念館」では、中国ならではの慣習を考慮した中国語案内がされています。
「トイレットペーパーをそのまま流してください」という指示の案内だけでなく、「トイレットペーパーは水に溶けやすいです」と追記してある点がポイントです。前述したように、中国ではトイレットペーパーをトイレに流す習慣がないため、水に溶けるか心配し流さないケースを考慮しています。中国ならではの慣習をふまえ、プラスαの外国語表記をしたことで、訪日中国人観光客も安心して利用でき、マナー改善に対する効果も期待されるでしょう。
まとめ:正しい多言語案内でインバウンドの受け入れ体制整備へ
2020年の東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え、インバウンドの多言語対応を強化していく上で、質の高い翻訳で伝えたいことを正しく理解してもらうことが第一に重要です。国や自治体・DMO・各業界が連携を図り、訪日外国人観光客向けの正しい多言語案内の整備が求められます。
さらに、翻訳言語に合わせてその国の文化的背景や慣習も考慮した外国語表記も、マナー改善のみならずリピーターの獲得にも効果的と言えるでしょう。
<参考>
・東洋経済ONLINE:日本人が知らない「外国語案内」の不十分な現実
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