2019年6月25日、百貨店の高島屋を運営する株式会社高島屋(以下、高島屋)は中国から撤退し、子会社の上海高島屋の店舗を閉店することを発表しました。日本の老舗企業すら撤退を余儀なくされ、中国市場進出の難しさを考えさせられるニュースとして受け止めた方も多かったようです。
今回の記事では、高島屋の閉店までの経緯と中国の小売トレンドについて解説していきます。
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2012年開店「上海高島屋」の苦悩
2012年に開業した上海高島屋。日本人の住居者が多い地区に4万平方メートルと日本の旗艦店並みの売り場面積を持つ店舗として開発されました。しかし、注目を集めるにちょうどよい開業前には尖閣諸島を巡る日中対立の影響で、中国全土では大規模な反日デモが発生してしまい、結果として事前の告知や開店記念セールを控えたという事情がありました。
他にも、シンガポールで確立した高島屋海外店での成功パターンである不動産賃貸と百貨店運営を組み合わせるモデルが実現しなかったことも業績に悪化したようです。このように開店当初から上海高島屋は苦戦をしていました。
さらに、ネット通販の盛り上がりや米中貿易摩擦による消費低迷が上海高島屋に追い打ちをかけたとも言われています。
日系百貨店・大型小売店は中国の各都市へ
高島屋は上海から撤退をしましたが、実は上海には日系の百貨店が多く存在しています。例えば伊勢丹は1997年から開業、また2004年には久光百貨という名前で株式会社そごう・西武のフランチャイズ店がオープンしています。近年は中国地方都市の経済成長を受け、成都にはイトーヨーカドーが開業し、今後はロフトの出店も決まっています。また、2019年4月、広東省深セン市に「イオン深セン丹竹頭店」もオープンしています。
2019年中国は米国を抜き世界最大の小売市場に
米市場調査会社イーマーケター(以下、イーマーケター)によれば、中国は2019年中にアメリカを抜いて世界1位の小売市場となることが予想されています。2019年の中国の小売業界の売上高は、前年比7.5%増の5兆6400億ドル(約614兆円)に達し、アメリカは同3.3%増の5兆5300億ドル(約586兆円)になるとの予想です。米国を抜き、今や世界一の小売市場となった中国は非常に魅力的な市場に見えることでしょう。しかしながら、今回の高島屋の撤退の一因となった政治的なリスクの存在や、トレンドの移り変わりの速さもあり、攻めにくい市場という見方もされています。
中国で今ウケる小売形態は?安心&便利&楽しい
さてこうした難攻不落にも思える中国の小売市場ですが、近年の流行は「インターネットとの融合」です。アリババの次世代スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh)」は、スマホアプリから注文すれば商品が届くネットスーパーですが、実店舗でも商品が購入できます。
いけすの中の生きた海鮮商品を選び購入できるので、食材の新鮮さを自分の目で確かめることができます。海鮮以外でも、商品についたQRコードを読み込めば、食品の産地、収穫日、加工日、店舗までの配送履歴を確認できます。食品の安全性を求める消費者のニーズに応えています。
また自宅から、あるいは店頭でも、アプリで注文すれば自宅までの配送サービスが受けられます。配送時間は最短30分となっており、非常に便利だと評価されています。
店内は明るく、配送商品が天井を流れたり目の前で食材を調理してもらえる様子が楽しめます。

会計は基本的に全て無人レジで、支払いにはスーパーを経営するアリババが提供するスマホ決済「Alipay」にて行います。



様々なカテゴリの商品がECで簡単に手に入る中国において、店頭での体験に価値を見出されなければ客足は途絶えてしまいます。こうした中で、「盒馬鮮生(Hema Fresh)」は安全性、便利さ、そしてエンターテイメント性で差別化に成功しているようです。
まだまだ消費意欲の高い中国、現地展開は中国資本&外資がライバル
こうした中国のトレンドを取り込めなかったのは高島屋だけではありません。仏流通大手カルフールの中国事業もまた、先月、中国の蘇寧易購集団(SUNING)により買収されることが発表されました。SUNINGは中国の家電量販大手で、ECサイト「苏宁易购Suning.com」の運営や、そのサービスのオフラインとの融合で成功を収めています。
一方で、アメリカ資本のウォルマートは、スマート店舗の展開や会員制店舗の開始、中国EC大手京東との提携を通じて中国市場での展開に成功しています。
2017年の中国では、大型ショッピングセンター(SC)の出店がラッシュでした。中国の経済情報サイトによれば、売場8万平方メートル以上の大型物件は323施設、15~25万平方メートルの超大型が58件、25万平方メートル超えの巨大施設で17と報告されています。今後も中国人消費者はより購買力を強めていくと見られており、こうした市場で日系企業は中国や外資の小売店としのぎを削っていくことになるでしょう。
まとめ:最新のトレンド把握とターゲット選定がポイント
2019年上半期は、中国小売市場の厳しさが見えるニュースが続きました。現地に合った形で戦略を練らなければ、高島屋ですら勝ち抜くことができず、カルフールも買収という選択を取らざるを得ませんでした。
中国は、その国土の広大さもあり、地域により消費者のニーズも様々です。ターゲットの選定と競合の調査は欠かせないでしょう。さらに、流行り廃りのスピードも非常に速くなっており、日本以上に臨機応変に対応することが必要となってきます。
今後は、都心部だけでなく地方都市での消費が成長していくと見られています。消費者のニーズを見極め、成功に向けて施策を打つ日系企業と各国企業の動きに注目です。
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
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- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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