G20サミット、開催地の取り組みに注目!地元企業や自治体のプロモーションから見る「ビジネスインバウンド」とは?

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今年6月、日本が初めて議長国を務めたG20大阪サミットは、我が国で行われる首脳会合と しては史上最大規模であり、G20大阪サミット関連最終需要として支出される金額は428億4,200万円と推計されています。(一般財団法人アジア太平洋研究所調べ)

その他にも日本各地で8つの関係閣僚会合が開催されるなど、一連の開催規模は2016年のG7伊勢志摩サミットを凌駕するスケールになります。

このような大規模な国際会議を受け入れる開催地では、一体どのような影響を与えているのでしょうか。特に自治体や地元企業はどんな動きをしているか気になるのではないでしょうか。

この記事では、ビジネスインバウンドの視点で、地元観光・文化資源等を活用した具体的な事例を、6月に開催された「G20貿易・デジタル経済大臣会合」と、10月に開催予定の「G20観光大臣会合」をケーススタディとして取り上げ、わかりやすく解説していきます。



【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】

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1. G20貿易・デジタル経済大臣会合

▲経済産業省公式HPより引用
▲経済産業省公式HPより引用

▲外務省公式HPより引用
▲外務省公式HPより引用

研究学園都市つくばは、国際会議の都市別開催件数は全国14位です。

海外からの研究者も多く訪れ交流の盛んな土地柄ですが、今回は各国の政府要人が集まる会議という性質上、参加者が地元市民と直接交流する機会は少ない印象がありました。

そこで自治体は、地元の食、文化を通じた「おもてなし」や、最先端科学技術・ものづくり技術の集積を伝える「魅力発信」の場と捉え、次のようなイベントを開催しました。

イベント事例1.  茨城県主催「いばらきグローバル商談会」:2019年6月8日(土)・9日(日)

 欧米から海外バイヤーらを招聘し、貿易・輸出、海外からの投資・誘致促進を目的に商談会を実施しました。

イベント事例2. 地元歓迎レセプション:2019年6月7日(金)

知事、県内各界代表者、各国来賓を含む約400名が出席しています。

アトラクションとして、県立水戸工業高等学校ジャズバンド部による演奏、水戸葵陵高等学校書道部によるパフォーマンスは海外参加者も大いに楽しませた。

常陸牛や新ブランド豚肉「常陸の輝き」のロースト、江戸崎かぼちゃを盛り合わせたサラダ、県産メロンのオリジナル品種「イバラキング」のケーキ、県内35酒蔵の日本酒等計46銘柄をPR。また、常陸秋そばを使ってそば打ちを披露。

▲外務省公式HPより引用
▲経済産業省公式HPより引用

イベント事例3. 会期中、参加者へ向けて組まれたツアー「エクスカーション」

エクスカーション」のツアーでは、茨城県を代表するサイバーダイン株式会社や独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)などを視察しました。

▲外務省公式HPより引用
▲経済産業省公式HPより引用

地元、関係団体、企業との連携と協働

PR活動及び歓迎機運の醸成として、駅から会場までの歩道や、街の掲示板など至る所に「G20ポスター」が掲示され、街全体で広報活動に力を入れていました。また、各国要人や随行員、メディア関係者等、大勢の人が会期中に宿泊されるため、同地区のホテルはほぼ満室の状況でした。

広報・PR効果

地元高校生がデジタル技術による「食品ロス」削減策をスピーチし、自ら「提言書」を大臣へ手交した取り組みは、海外メディアに対して大きなインパクトを与えました。また、地元メディアは、郷土料理、地酒、県内高校生によるパフォーマンスなど、積極的に県のイメージを発信していました。 
▲提言を発表する生徒達 出典:茨城県公式HP
▲提言を発表する生徒達 出典:茨城県公式HP
▲石田総務大臣及び世耕経済産業大臣への提言書手交 出典:茨城県公式HP
▲石田総務大臣及び世耕経済産業大臣への提言書手交 出典:茨城県公式HP

2. G20観光大臣会合

G20観光大臣会合は、羊蹄山のふもと、ニセコに程近い北海道倶知安町のウィンターリゾート施設で開催される予定です。これまでの関係閣僚会合の会場は「地方都市のホテル」や「国際会議場」が選ばれるケースが多かったのですが、本会合は珍しい「ユニークべニュー」での開催が決まりました。

開催地となる倶知安町(くっちゃんちょう)の特徴をご紹介します。国土交通省が今年3月に発表した「公定地価」によると、住宅地(50.0%)、商業地(58.8%)ともに全国で上昇率が1位です。

パウダースノーを目当てに訪日旅行者を対象にしたリゾート需要が牽引し、外資によるホテル建設が続いたことで郊外には新築住宅が目立ちます。

中心街では、ホテルのテラスでビールを片手に寛いでいる外国人や、スポーツウェア姿の旅行者が多く行きかっています。

▲北海道ニセコ町公式HPより引用
▲スキー場イメージ 出典:Pixta

自治体は、G20観光大臣会合の開催に先駆けて、地元の食や観光資源に加え、「世界的な国際リゾート地」の投資先としての魅力を発信する絶好の機会と捉え、5月に開催した事前の“準備会合”では、地元の関係団体・企業と協働し、以下のようなイベントを実施しました。

イベント事例1. 国際シンポジウム:2019年5月24日(金)倶知安町公民館

  • テーマ:持続可能な観光による地域創生
  • 招待講演者:UNWTO関係者を始め、国内外の有識者、地元関係者を招きシンポジウムを開催。各国政府代表団や周辺自治体、事業者、町民等約600名が参加
  • 倶知安農業高校の生徒10名が聴講

イベント事例2. 地元歓迎レセプション:2019年5月23日(木)

  • 知事、倶知安町長のほか、道内経済団体や倶知安町町民議会メンバーを含む、各国来賓を含む約100名が出席。
  • アトラクションとして、倶知安町内の小中学生の“鼓流ジュニア”による羊蹄太鼓を披露
  • 地元食材を使った料理や地酒をPR 
▲国際シンポジウム 出典:北海道公式HP
▲国際シンポジウム 出典:北海道公式HP

 ▲歓迎レセプション 出典:北海道公式HP
▲歓迎レセプションイメージ 出典:Pixta

地元、関係団体、企業との協働

  1. JETRO主催「関係国大使招聘ツアー」を実施。地元食材を使った料理とお酒で昼食会を開催、各国大使約40名が参加
  2. 広報誌「倶知安ダウンタウン 食べ飲みガイド」「くっちゃん笑い酒まつり」で開催告知を掲載、会場内で配布(倶知安町中心街活性化プロジェクト)
  3. 新千歳空港でのカウントダウンボード設置(サッポロビール(株))
  4. 千歳空港での「歓迎バナー」設置(新千歳空港ターミナルビルディング(株)
  5. 「関係国大使館招聘ツアー」の受け入れ、ツアー実施(ニッカウヰスキー余市蒸留所)
  6. 倶知安町・倶知安町G20町民会議主催事業として、倶知安町内宿泊事業者を対象とした「ホスピタリティ研修」を実施(オーストラリア領事館)
  7. 倶知安町G20町民会議事業
  8. 「国際シンポジウム」の会場前に歓迎雪だるま2体を設置(くっちゃん21雪だるまの会)
  9. 「参加者へのおもてなし」高級実務者会合、フォトセッションエリアで装花を設置(倶知安農業高校)他 


▲歓迎雪だるま 出典:北海道公式HP
▲歓迎雪だるま 出典:北海道公式HP

▲カウントダウンモニュメント除幕式 出典:倶知安町公式HP
▲カウントダウンモニュメント除幕式 出典:倶知安町公式HP

10月26日に開催されるG20観光大臣会合では、地元主催の歓迎レセプションに加え、参加者けの「ガストロミ―ツアー」や「観光×テック」をテーマにした“ビジネス界とのセッションイベント”が計画されています。

まとめ

首脳級の大型国際会合開催にあたっては、会議自体の華やかさや各種イベント等がメディアに大きく取り上げられます。尚、地元では警察、消防、医療機関の準備・受け入れ体制構築はもとより、大規模な交通規制が行われますので、周辺住民の生活には何かと影響を与える側面もあります。

ホテルを中心とした宿泊施設飲食店では「語学・言語」の対応が求められたり、文化・宗教の異なる顧客への配慮が必要だったりと、地元の市民・関係者には「事前に充分な理解と協力を得ること」が重要になります。

多くの開催地では、このように、対外的にもメディア露出が増える政府主導の国際会合の機会を自治体や地元企業のプロモーション・情報発信の機会として捉え、上手に活用しています。

今回取り上げた2つのG20関係閣僚会合では、訪日外国人や投資の呼び込み等のインバウンド需要を獲得するため、特色あるプログラムを企画・実施しているのが印象的でした。これらのサミットを通じて、多くの自治体地元文化の掘り起こしや市民の意識啓発、経済効果につなげるノウハウと知見を蓄積し、今後の地域活性化に大いに活用されることを期待しています。

本記事を執筆している日本コンベンションサービス株式会社(JCS)は、上記2つのG20関係閣僚会合を総合的に運営させていただいております。

多くの外国人参加者が集まる中、会議の設営・運営だけでなく通訳者を手配したり、専用資料を翻訳したりと、MICE(集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称)に関わる総合的な事業を50年以上取り組んでいます。そんなMICEの現場において、当社だから気づけたこと、街・自治体・企業の動き、MICEに関する最新トレンドを、この連載で積極的に紹介して参ります。今後ともよろしくお願いいたします。


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インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

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「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】

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この記事の筆者

日本コンベンションサービス株式会社(JCS)

日本コンベンションサービス株式会社(JCS)

MICE都市研究所メンバーによる執筆。JCSは、国際会議や企業ミーティングの企画・運営、通訳・翻訳サービス、大型カンファレンス施設の運営等を展開しています。いま注目されている「MICE」の最新トレンドや事例、ビジネスネタを幅広くご紹介します。

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