五輪マラソン札幌案につのる3つの困惑と期待:北海道にインバウンドのチャンス

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※新型コロナウイルスのパンデミックを受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。詳細な日程、選考基準などは、公式情報が発表され次第、順次更新します。

国際オリンピック委員会IOC)は、猛暑による影響を懸念し、マラソン・競歩の開催を札幌に移すことを検討していると発表しました。

開催を目前に控え、多くの企業や組織が動き経済的効果も期待されている東京五輪での問題の発生に対し、不安視する声やどのような影響が出るかなど多数の意見が出されています。

この記事では、IOCの見解や、札幌に開催地を移設した場合に考えられる3つの影響について解説していきます。

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突如IOCが東京五輪マラソン・競歩、札幌開催検討

10月16日、国際オリンピック委員会IOC)が東京五輪マラソン・競歩の開催地を札幌に移すことを検討していると発表しました。

日本オリンピック委員会(JOC)のみならず、国際陸上競技連盟や選手、ボランティアなど複数の組織や立場の異なる人が多くかかわることもあり、困惑する声が広がっています。

なぜ札幌に:猛暑考慮「札幌は5〜6℃低い」

IOCが東京での五輪開催について特に懸念しているのは、猛暑による選手への影響です。トーマス・バッハ会長は「オリンピックは、選手たちの一生に一度のパフォーマンスを出す舞台であり、今回の提案は、選手が最高の結果を出せることを可能にする」と話しています。札幌を選んだ理由としては、東京に比べ平均気温が5~6度低いことが挙げられています。

これまでにも、猛暑対策として招致段階の計画からスタート時間の前倒しが行われ、男女マラソンと男女20kmは午前6時から、競歩男子50kmは午前5時30分から予定されていました。しかし、IOCの方針を受けて、今月30日に東京五輪の準備状況を監督する調整委員会は東京都や国際陸上競技連盟と具体的な話し合いをするとしています。

なぜこのタイミング:酷暑のドーハ世界陸上をうけて

会場変更が開催を目前に控えた今となってしまったのは、10月6日に閉幕したカタールのドーハにて高温多湿の環境下で行われた世界選手権を受け、五輪が行われる8月の東京の猛暑が問題視されたためです。

ドーハの世界選手権のマラソンと競歩は、気温が40度を超える日中を避けスタートを午後11時半すぎに設定して行われましたが、それでも棄権者が多発し、非難の声が挙げられていました。

特に問題視されたのが9月27日に行われた女子マラソンで、4割を超える途中棄権者が出ました。当初から予想されていたとはいえ、スタート時のコンディションが気温32.7度、湿度は73.3%でした。早朝を予定している東京五輪の場合、ドーハの世界選手権と同レベルの過酷さは十分に予想できるうえに、日射の影響もあります。

それに比べ、毎年8月に開かれている北海道マラソンは最高気温が28~30度になることもありますが、湿度が低いことから体感で感じる暑さはだいぶ緩和されると考えられます。選手以外にもボランティアや観客などたくさんの人が会場に集まることを考えれば、東京ではなく、札幌で開催する方が現場の過酷さは軽減されるでしょう。

3つの困惑と期待

しかし、日本のマラソン代表内定選手の関係者からは東京開催をシュミレーションした対策を行ってきたことなどから、困惑した反応も少なくありません。

五輪開催という国を挙げた大イベントにおける急な変更が実行されるた場合どのような状況が起こりうるのか、3つの視点から解説していきます。

1. 「コンパクトな五輪」どこへ

開催地の札幌への変更によってまず問題になるのが「コンパクト五輪」という東京五輪招致段階のコンセプトです。

具体的な内容として、競技会場の85%のあたる28会場や選手村などの施設を半径8km圏内に集中させることや大会と街を一体化させた祝祭的空間を創出すること、また、それらを公共交通網でつなぐことで安心・安全かつ効率的な交通運営を確保するなどがあり、東京で行うからこそ成り立つコンセプトだと言えます。

さらに言えば、東京の現在と将来のニーズに合致する恒久的な施設を建設し、スポーツやコミュニティのために持続可能なレガシーを残すとしているなど、東京五輪を過去と未来が結びつける媒体にすることで、東京という都市の成長戦略にしているという側面もあります。しかし、核となるべきであるコンセプトは招致決定後になって崩れ始めており、予算が急激に膨れ上がっただけでなく、半径8km圏内の会場は60%ほどにとどまっています。

ただでさえ散り散りになりかけている「コンパクト五輪」というコンセプトを、さらに壊しかねないマラソン・競歩の開催地変更について、前向きに受け取られるるかどうかは意見が分かれています。

2. 急ピッチでの各所調整

札幌への開催地への変更は現実的に可能ではないとの見方もあります。日本陸連は「雲をつかむような話」と難色を示しており、小池知事も「このような進め方は多くの課題を残す。」と発言しています。

人気のある競技であるマラソンのチケットはすでに売り出されており、その影響も懸念されます。また、東京開催を予測して、マラソンは新国立競技場から浅草寺、銀座、皇居などを巡るコース設計などの準備が進められており、開催地が札幌に変更になるとなると、コース設計だけでなく、道路使用許可などの申請、関係各所への調整、各種資材の調達などの諸手続きや検討をやり直す必要が出てきます。

大会組織の幹部のなかには、「この先、どうなるか、全く読めない」など、調整面で不安視する意見もあり、混乱が予想されます。

3. 北海道・札幌にとっては大きなチャンス

一方で、札幌陸連や札幌市長は好意的な反応を見せています。

札幌陸上競技協会の志田幸雄会長は、北海道マラソンなどを開催してきた実績もあり、非常に喜ばしいことなので全面的に協力したいといったことを話しています。また札幌市の秋元克広市長は、大変ありがたい話で、選手ファーストで検討したいという内容の発言をしています。

その背景として、北海道は訪日外国人の訪問率は全国第7位、インバウンド消費金額は全国第2位と、訪日外国人の恩恵を大きく受けている一大観光地であることが挙げられるでしょう。

中でも中国人観光客が大きな消費額をたたき出しています。また、スキーや雪などのアクテビティを楽しめることから、台湾人やタイ人などの観光客が雪を見に訪れることが多いという特徴もあります。

このように東アジアからの訪問外国人が多い北海道で、世界各国の人と注目が集まるオリンピックのイベントを行うことは、北海道の観光地としての魅力を世界各国にアピールする絶好の機会です。すでにインバウンド需要のある地域として注目されていながらも伸びしろのある北海道で東京五輪のマラソン・競歩が開催されれば、インバウンド消費の幅を広げるチャンスになると考えられます。

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札幌のインバウンド需要に大きく影響か

ドーハでの世界選手権を受け東京の猛暑による悪影響が心配され、開催地の札幌移転が現実味を帯びてきました。

札幌で開催されることで東京五輪の核であるはずの「コンパクトな五輪」というコンセプトの崩壊がすすみ、販売済みのチケットやコース設定をどうするかなど、多方面でマイナスな影響が出てしまうことは致し方ないと思われます。

ただし今回紹介した札幌、そして北海道という土地は中国を中心とした東アジアの訪日外国人によって潤いを見せている地域です。マラソン・競歩の開催が行われることで、さらなる需要と消費の拡大を期待したいところです。

<参照>

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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