インバウンドのナイトタイムコンテンツ需要の拡大や、訪日外国人の宿泊客数を増やし地域活性化を目指す取り組みなどを受け、訪日外国人観光客と受け入れ側の自治体、双方でナイトタイムエコノミーへの注目が高まっています。
今回は昨年から始動している福島市の新しい観光資源を作るプロジェクト「夜の果樹園実行委員会」における取り組みを、ナイトタイムエコノミーの取り組み例として見ていきましょう。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
インバウンド誘客の地域間格差が顕著に
2020年までに4,000万人のインバウンド誘客を目指している日本では、2019年上半期のみで消費額が過去最高額の2兆4,326億円を記録するなど、観光業が基幹産業となりつつあります。
インバウンドが盛り上がりを見せる中、訪日外国人観光客の誘客では地域間格差が顕著となっています。
京都や、北海道・美瑛などの人気観光地ではオーバーツーリズムによる観光公害が表面化している一方で、まだまだ訪日外国人観光客の誘客が進んでいない地域もあります。インバウンド客の急増に悩む地域と、インバウンド客の誘客が進まず悩む地域との間では、観光の地域間格差がますます広がるばかりです。
福島県福島市は東京から1時間半と交通の利便性が良い一方で、観光コンテンツのPRに課題を感じています。地元民の「あたりまえの日常の中から、観光客に紹介したい場所が思いつかない」といった状況もふまえ、福島市の新しい観光資源を作るプロジェクト「夜の果樹園実行委員会」が発足しました。
福島市を訪れたくなる理由を自ら作り出すことで、福島市のPRならびにインバウンド誘客の促進を目指します。
「夜の果樹園」実現までの困難と工夫
福島市は「果物王国」の名を掲げています。桃の生産量で全国2位を誇るなど、生産地としての大きな強みを活かし、インバウンド誘客に繋げることを考えました。
「夜の果樹園」とは、果樹園が全く使われない夜の時間帯を活用して桃畑をライトアップするなど、ナイトタイム観光コンテンツを提供するプロジェクトです。
昨年、木幡福島市長がアーティスト「やなぎみわ」さんの夜の桃の写真を見たことがきっかけとなり、福島の桃園が生み出す幻想的な世界こそ市の観光コンテンツにならないかと着想しました。
「夜の果樹園」の実現に向けて最も注力したのは、参加費に納得してもらえる「価値」の提供でした。ライトアップに想定以上の電球が必要となったことや、虫対策、天候面のリスクへの備えなど、さまざまな問題への対応が重なり、参加費が高くなってしまったためです。
非日常空間や特別感を演出したり、レベルの高いフードやドリンクを提供したりと、「夜の果樹園実行委員会」は市と協力することで資金面でのバックアップを受けながら、持続可能な観光コンテンツ作りを目指しました。
「夜の果樹園」でインバウンドのコト消費拡大へ
2020年の正式スタートに向けたプレオープンイベントとして、2019年7月28日に初めて「夜の果樹園」を実施しました。
市内の洋食店のシェフが福島の食材を使用した料理をふるまったほか、畑の中に設置した「果樹園バー」では、入賞経験豊富なバーテンダーがつくる採れたての桃を使用したカクテルや、G20に採用された金山町の天然炭酸水、市内の地酒「金水晶」を提供しました。
ヴァイオリンの生演奏も取り入れるなど、幻想的な雰囲気が非常に好評だったとのことです。飲食や音楽だけでなく、桃狩りを体験するアクティビティも用意しました。
まとめ:ユニークなナイトタイム体験プランでインバウンドの地方誘客促進へ
福島市の桃園で実施される「夜の果樹園」は、インバウンドのコト消費需要の高まりを背景に、大人から子どもまで楽しめるイベントとして訪日外国人観光客の誘客も期待されます。
地元民が気づいていない地域ならではの魅力を観光資源として発掘し、磨き上げること、そしてインバウンド向けの新たな観光コンテンツにまで高めることは、今後様々な地域で求められる姿勢でしょう。
「夜の果樹園」は、地域ならではの魅力を自ら発掘して観光コンテンツ化する取り組みのモデルケースとしてとらえることができるでしょう。福島市が東京からのアクセスの良さや「夜の果樹園」のユニークさを効果的にプロモーションすることで、インバウンドのナイトタイム観光に対する満足度向上ならびに地方誘客促進が見込まれます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて訪日外国人観光客はますます増加してくと考えられます。「夜の果樹園」がどのように訪日外国人観光客を魅了し誘客に繋げていくのか、今後の展開を注視し成功のエッセンスを取り入れていく必要があるでしょう。
<参考>
・YAHOO! JAPANニュース:訪日客が来ない地方の観光アイデア「夜の果樹園」は成功するのか
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
<本セミナーのポイント>
- 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
- 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
- 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
- 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける
詳しくはこちらをご覧ください。
→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!