インバウンドのナイトタイムコンテンツ需要の拡大や、訪日外国人の宿泊客数を増やし地域活性化を目指す取り組みなどを受け、訪日外国人観光客と受け入れ側の自治体、双方でナイトタイムエコノミーへの注目が高まっています。
今回は昨年から始動している福島市の新しい観光資源を作るプロジェクト「夜の果樹園実行委員会」における取り組みを、ナイトタイムエコノミーの取り組み例として見ていきましょう。
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インバウンド誘客の地域間格差が顕著に
2020年までに4,000万人のインバウンド誘客を目指している日本では、2019年上半期のみで消費額が過去最高額の2兆4,326億円を記録するなど、観光業が基幹産業となりつつあります。
インバウンドが盛り上がりを見せる中、訪日外国人観光客の誘客では地域間格差が顕著となっています。
京都や、北海道・美瑛などの人気観光地ではオーバーツーリズムによる観光公害が表面化している一方で、まだまだ訪日外国人観光客の誘客が進んでいない地域もあります。インバウンド客の急増に悩む地域と、インバウンド客の誘客が進まず悩む地域との間では、観光の地域間格差がますます広がるばかりです。
福島県福島市は東京から1時間半と交通の利便性が良い一方で、観光コンテンツのPRに課題を感じています。地元民の「あたりまえの日常の中から、観光客に紹介したい場所が思いつかない」といった状況もふまえ、福島市の新しい観光資源を作るプロジェクト「夜の果樹園実行委員会」が発足しました。
福島市を訪れたくなる理由を自ら作り出すことで、福島市のPRならびにインバウンド誘客の促進を目指します。
「夜の果樹園」実現までの困難と工夫
福島市は「果物王国」の名を掲げています。桃の生産量で全国2位を誇るなど、生産地としての大きな強みを活かし、インバウンド誘客に繋げることを考えました。
「夜の果樹園」とは、果樹園が全く使われない夜の時間帯を活用して桃畑をライトアップするなど、ナイトタイム観光コンテンツを提供するプロジェクトです。
昨年、木幡福島市長がアーティスト「やなぎみわ」さんの夜の桃の写真を見たことがきっかけとなり、福島の桃園が生み出す幻想的な世界こそ市の観光コンテンツにならないかと着想しました。
「夜の果樹園」の実現に向けて最も注力したのは、参加費に納得してもらえる「価値」の提供でした。ライトアップに想定以上の電球が必要となったことや、虫対策、天候面のリスクへの備えなど、さまざまな問題への対応が重なり、参加費が高くなってしまったためです。
非日常空間や特別感を演出したり、レベルの高いフードやドリンクを提供したりと、「夜の果樹園実行委員会」は市と協力することで資金面でのバックアップを受けながら、持続可能な観光コンテンツ作りを目指しました。
「夜の果樹園」でインバウンドのコト消費拡大へ
2020年の正式スタートに向けたプレオープンイベントとして、2019年7月28日に初めて「夜の果樹園」を実施しました。
市内の洋食店のシェフが福島の食材を使用した料理をふるまったほか、畑の中に設置した「果樹園バー」では、入賞経験豊富なバーテンダーがつくる採れたての桃を使用したカクテルや、G20に採用された金山町の天然炭酸水、市内の地酒「金水晶」を提供しました。
ヴァイオリンの生演奏も取り入れるなど、幻想的な雰囲気が非常に好評だったとのことです。飲食や音楽だけでなく、桃狩りを体験するアクティビティも用意しました。
まとめ:ユニークなナイトタイム体験プランでインバウンドの地方誘客促進へ
福島市の桃園で実施される「夜の果樹園」は、インバウンドのコト消費需要の高まりを背景に、大人から子どもまで楽しめるイベントとして訪日外国人観光客の誘客も期待されます。
地元民が気づいていない地域ならではの魅力を観光資源として発掘し、磨き上げること、そしてインバウンド向けの新たな観光コンテンツにまで高めることは、今後様々な地域で求められる姿勢でしょう。
「夜の果樹園」は、地域ならではの魅力を自ら発掘して観光コンテンツ化する取り組みのモデルケースとしてとらえることができるでしょう。福島市が東京からのアクセスの良さや「夜の果樹園」のユニークさを効果的にプロモーションすることで、インバウンドのナイトタイム観光に対する満足度向上ならびに地方誘客促進が見込まれます。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて訪日外国人観光客はますます増加してくと考えられます。「夜の果樹園」がどのように訪日外国人観光客を魅了し誘客に繋げていくのか、今後の展開を注視し成功のエッセンスを取り入れていく必要があるでしょう。
<参考>
・YAHOO! JAPANニュース:訪日客が来ない地方の観光アイデア「夜の果樹園」は成功するのか
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