客室稼働率ほぼ100%+外国人率80%!年末年始が休業でも、山奥の宿にインバウンドがあふれる「山城屋」3つの工夫とは?

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今、日本は訪日外国人観光客の増加によって、宿泊施設が不足しています。都市部ではホテルの建設ラッシュが相次いでいますが、地方では昔ながらの情緒あふれる旅館が経営難に陥り、廃業を余儀なくされています。

そんな中で、大分県には市場を世界に広げることで成功している旅館があります。



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会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。

ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。

大分の山奥の宿「山城屋」


「おんせん県」として知られる大分県。特に「湯布院」は全国的に有名です。湯布院の中心部から15キロほどの山中にある湯平(ゆのひら)温泉には、外国人観光客が多く訪れる旅館「山城屋」があります。

山城屋は創業50年を超える家族経営の小さな旅館です。10年ほど前から外国人観光客への対応を開始し、今では宿泊客の8割を外国人が占めています。2017年にはトリップアドバイザー宿泊施設満足度ランキング「日本の旅館部門」で全国第3位に輝くなど、世界的に人気を集める旅館です。

なぜこのような人気を得られるまでに成長したのでしょうか?山城屋は訪日外国人観光客をターゲットにインバウンド対策を進めた結果、実は旅館業とは思えない働き方を実現するにいたりました。

週休二日制、年末年始は休業…だからこそ客人の立場に立てる

外国人観光客の多くは、遠路はるばる海を渡って来日します。時間とお金をかけてやってきており、もちろん計画は念入りです。

旅館の予約は半年前が当たり前です。海外の祝祭日は日本と異なるため、繁忙期にも変化が生じます。山城屋では1年先の予約までインターネットで受け付けています。宿泊予定日までの期間が短い場合、空きがないという場合もあります。

2016年4月の熊本地震により宿泊客の減少もあったものの、こうした影響からも4か月程度で回復しています。2017年度の客室稼働率はほぼ100%だそうです。一般的な宿泊業では土日・祝日が忙しく、平日は閑古鳥が鳴くケースが少なくないことを考えると、かなり成功していることがわかります。

山城屋は現在、従業員に対して完全週休二日制を導入しています。水曜日と木曜日を定休日にして、従業員には家族全員がそろって休める日を作っています。それだけでなく、日本の観光業では繁忙期にあたる盆・暮れ・正月も営業を休止します。こうすることで、従業員は長期休暇を利用した海外旅行も可能となります。おもてなしする側が海外旅行を経験することで、来日する外国人観光客の心理も研究できます。 

山城屋の3つの工夫



外国人観光客の受け入れに際し、山城屋ではさまざまな対策を行っています。注目すべきは宿泊客が来日する前から「おもてなし」が始まっている点です。

1. 4ヵ国語の公式サイトを作成、予約を受付&必要な情報を公開

山城屋で最初に取り組んだインバウンド対策は、公式サイトの多言語化です。現在は日本語に加えて英語・韓国語・中国語に対応しています。また港や空港から旅館までのアクセスを案内するルートマップや動画を作成し、同サイトで公開しています。

英語によるメール問い合わせには、あらかじめ問い合わせ内容を想定して英語の返答文例集を作成し、これを利用しているそうです。道順の問い合わせにはルートマップのURLをお知らせするなど、海外からのお客様が安心して来館できるような心配りが随所に感じられます。

多言語化に際しては県内の留学生と企業・団体をマッチングさせる「アクティブネット」を活用し、地元の留学生3人を起用しているそうです。実際に旅館に宿泊してもらい、その体験を自分の言葉で紹介してもらうという取り組みをしています。

さらに、地元の日本人学生にも「おもてなし」について一緒に考えてもらう機会も設けていると言います。実はルートマップのアイデアはここから生まれており、実際にマップの制作も学生たちに任せたそうです。 

2. チェックインの時に翌日の予定を確認、語学堪能な女将がコミュニケーション

山城屋には客室が7部屋しかないため、きめ細やかなサービスが可能です。女将はお客様のチェックイン時に翌日のスケジュールを確認し、目的地にあわせて乗るべき電車を決めたり、チェックアウトの時間などの細かい日程を組みます。

旅館から最寄り駅までの距離感や、発着する電車の本数などについて正確に把握している旅行者はほとんどいません。このタイミングで丁寧にコミュニケーションを取ることは、お互いの信頼関係の醸成にも一役買っています。

3. 宿のルールはVTRで説明

日本人にとって当たり前のことが外国人には知られていないために、トラブルに発展するケースは少なくありません。

山城屋では「お風呂の入り方」や「バスタオルの使い方」などの説明動画を作成し、客室のテレビで見られるようにしています。こうすることで外国人客へ「マナーの安心感」を提供しています。

外国人観光客にうんざりする日本人

外国人観光客数の増加にともない、京都やその他有名観光地では彼らのマナーを欠いた行動にうんざりしている日本人も多いようです。しかし、中には日本人の案内不足が要因となっている問題もあります。訪日外国人観光客による迷惑行為の実情や事例を知らずに偏見の目を向けることは避けるべきでしょう。訪日外国人観光客増加によって引き起こされている観光公害と向き合い解消のすべを見出すことは、観光大国を目指していく日本にとって重要な課題の1つです。この記事では、外国人観光客による迷惑行為や、それらに対する日本人の反...

まとめ

山城屋はターゲットを海外に広げることで、田舎の不便さや文化の違いによるハードルを克服する必要に迫られました。しかしその一方で、まとまった休みが取りにくい旅館業の働き方を変えることにも成功し、十分な休息と心のゆとりがお客様に還元されるような好循環を作り出しています。

今までとは違う手法を取り入れたり、良く知らない方向に舵を切るのは勇気が必要ですが、実際に一歩踏み出し、成功を収めた山城屋の事例に学べるところはたくさんあるでしょう。


【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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