「日本の職場では、女性がメガネをかけることが禁止されているらしい」
2019年11月、あるネットニュースの記事に端を発した「#メガネ禁止」問題は、国内メディアのみならず海外メディアでも取り上げられるほど物議を醸しました。
この記事では職場でのメガネ禁止問題を掘り下げ、性別による服装規定や日本がジェンダー・ギャップを乗り越えるにはどう考えていくべきかについて論じます。
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「職場でメガネ禁止」報道
報道によれば、百貨店など商業施設の受付や、ホテルの宴会場、ショールームなどの接客業や美容クリニックの看護師に対し、職場でのメガネ着用の禁止があったことが伝えられました。
また商業施設だけでなく、企業やイベントの受付業務や、和装でのサービス業に従事する場合にも、メガネを禁止しているところが多いようです。
Twitterでは「(自分も)メガネではなくコンタクトに変えるように面接で言われたことがある」「おかしいと思ったがそのときは言えなかった」などの体験談や、「メガネは医療器具なのに」といった疑問の声が多く挙がっています。
禁止の理由は?「華やかな雰囲気」おしつけ
上記の職場でメガネの着用を禁止する理由としては、
- メガネは華やかさに欠ける
- 見栄えが悪くなる
など、見た目に言及するものが多数でした。
なかには「男性はメガネをかけていいのに、女性は禁止されていた」と女性差別につながるような体験談も挙げられています。公的な場で、華やかな雰囲気を醸し出すための一助になるよう女性に求める旧式な社会規範がいまだ残っていることを示しているようにも聞こえる理由やエピソードです。
何が「華やか」であるかは組織により規定することはできるかもしれませんが、その演出に人間である女性を利用するような規則は差し控えるべきでしょう。
見た目以外の理由には以下のようなものがありました。
- お客様をメガネ越しに見るのは失礼にあたる
- メガネを上げる仕草が不衛生だから
こうした価値規範や職場の衛生保持を根拠に、規定というよりは当然従うべき「慣習」として「メガネ禁止」がまかり通ってきていたことが、SNS上の発言から浮かび上がってきます。
職場の責任者や上司といった、立場が上の人から言いつけられたという人も多いようです。
ほかにメガネの着用が禁止されているのは、航空会社の客室乗務員です。航空会社でも、場合によってはメガネ着用OKのところもあるものの、基本的には「安全上の理由」で禁止されているようです。
客室乗務員の場合、緊急避難時の脱出時には外れやすいメガネよりもコンタクトの方が望ましいと考えられます。先に見てきたような、見た目や主観的に決められたルールとは異なり、一定の合理性があると言えるでしょう。
「職場でメガネ禁止」に海外メディア・ネットが反応
海外のメディアやSNSでも、日本の職場での「メガネ禁止」問題に反響がありました。とくに女性差別ともとれる内実に、各国の男女平等を訴える人々から否定的な声が挙がっています。
中国のネットユーザーからは「男性はメガネをかけていても衛生的とされるし冷たい印象も与えないとのに、女性はダメってどんなロジック?」「男性のメガネ姿はクールで、女性の場合は冷酷ってどういうこと?」など、論理的でないという指摘が相次いでいます。中国と日本のジェンダー事情を比べると、中国の方が進んでいるという意見もありました。
さらに、アメリカの歌手であり親日家としても知られるシンディ・ローパーも、BBCが報道したこのニュース受け「メガネのおかげで効率的に働けている」「この靴だから快適」とTwitterに投稿しました。自身のメガネ姿とヒールのない靴を履いた足元の写真もアップしています。

Twitter:シンディ・ローパー氏による「メガネ禁止」問題に関連した投稿(https://twitter.com/cyndilauper/status/1192813099771924480)
男女平等ランキングでG7最下位…日本は男尊女卑がいまだに横行?
2018年、世界経済フォーラム(WEF)が発表した各国のジェンダー不平等状況を示す「ジェンダー・ギャップ指数」において、日本はG7最下位の110位でした。本日2019年12月17日に発表された、『Global Gender Gap Report 2020』では、なんとさらに後退する121位という結果が発表されています。
GDP世界第3位の先進国であるにも関わらず、世界153カ国を対象とした調査で121位という結果は、経済ばかりが発展し人権に対する価値観がアップデートされていない悲惨な現状を物語っています。
※2019年12月18日 追加情報
男女平等指数を表す『Global Gender Gap Report 2020』で日本の順位が前年に比べ大幅にランクダウンしたことが話題となっていました。
しかし順位の下落は、中等教育就学率の集計ミスではないかと話題になっています。
昔からメガネを禁止されてきた女性たち
女性のメガネ禁止について話題を戻すと、そもそもこのルールは「旧時代の職場結婚や縁談」の慣習にルーツがあるともいえます。出会い方の選択肢が少なく、社内結婚が今より盛んだったひと昔前は「花嫁候補」として雇われる女性が多くいました。彼女たちは性的に良いとされる見た目や、一般に「女性らしい」と括られるような振る舞いを要求されていたであろうことは想像に難くありません。
メガネをかけていないことを勤務に必要な容姿端麗の必要条件とし、雇用に際して「メガネ禁止」を公然と言い渡す企業もあったそうです。1970年代の新聞の投書には「メガネをかけていたのを理由に縁談を断られた」というものもあり、女性の美醜をもとに男性が結婚相手を判断していたこと、またその判断にはメガネの有無があったことがうかがえるエピソードです。
女性の身なりを制限する理由として「男性のために女性は美しくあるべき」という女性を客体化した発想に端を発するものは、今の時代において到底、合理的とはいえません。
業務には関係のない理由で女性のみに課される「メガネ禁止」のみならず、化粧やハイヒール着用の強要は、前時代の価値観に縛られたルールであり時代の変化にともなって再検討されるべきものでしょう。
ジェンダー後進国の日本がギャップ是正のためにすべきこと
国際的に、ジェンダー・ギャップを是正する動きが進んでいるのは昨今の報道からも明らかです。ここからは「ジェンダー後進国」の日本が、この先ジェンダー・ギャップを埋めていくために取り組むべきことについて考えます。
合理性の判断基準をどこにおくか?
まずは身なりに関する規則を作るにあたり、経済的合理性の判断基準をどこに置くかという点です。画一的な線引きを合理的に設定するのは多くの場合難しいと言えるでしょう。一概に基準を定めるのはあまり現実的とはいえません。
たとえば、接客業やサービス業について女性が化粧をすること、男性がネクタイをすることは「身だしなみの範囲」と捉えられます。さらに服装規定や身だしなみの規定は、ターゲット層に合わせたブランディングの観点から合理的と見なされる場合もあるでしょう。
人によっては身体的な理由で、ドレスコードに適合できないことも想定できます。考えられる範囲で例を挙げれば、肌の弱い人が化粧がマストな職場で働く場合です。企業側が、薄化粧でも雰囲気をくずさなければOKとする柔軟な対応をとるにしても、その程度については議論の余地がありそうです。
企業がとるべき態度は、一方的にルールを提示することではなく、新たにルールを策定する前向きな姿勢でしょう。ルールを更新する前提で、議論の場を設けることにも一定の意義があるでしょう。
「#KuToo運動」性別による社会的な制限を主体的に考えるきっかけに
最近では、SNSなどの手段を用いて、一個人が旧態依然のルールに「No」を訴える動きも増えてきています。「#KuToo」運動もその一つで、職場や就職活動の際、女性はハイヒールやパンプスなどヒールのある靴を履くべきといった風潮に抗議したものです。由来は「靴」と「苦痛」の音と、同じ経験をしたことがあるという意味で、性暴力に対する抗議活動の「#Me too」とかけています。
石川優実さんを発起人にして始まったこの運動は、彼女の意見に賛同する署名が約2万人分集まりました。さらに石川さんは2019年12月、性別によって特定の服装を指示することに対して規制を求める要望書を厚生労働省に提出し、記者会見を開いています。
これまで暗黙の了解で引き継がれてきたルールに、疑問の声をあげた点でこの運動は画期的です。同時に、自分の意思でヒールのある靴を履いている人に対する不要なネガティブキャンペーンとならないような姿勢が、この活動の参加者には求められていると言えるでしょう。
昨今日本国内で見られるあらゆる場での多様性を求める活動では、女性だけでなく男性特有の生きづらさに焦点を当てているものも増えています。日本のジェンダー・ギャップを埋めるためには、性別の隔たりなく、これまで是とされてきた不平等な慣習やルールを見直し、主体的な意見をもつ必要があるのかもしれません。
ジェンダーギャップ改善の糸口は?合理性と多様性の許容が必須
ある程度の「おしつけ」は男女問わず合理性が認められているのが資本主義社会です。その一方で、多様性を認めるよう働きかける動きは今後さらに広まっていくことが予想されます。社会の構成員は価値観のアップデートを求められていると言えるでしょう。
個人個人が都度、問題を真摯に捉え判断をし、より合理的と思われる方に意見を表明することは、多様性を受けいれる土壌の形成に役立つと考えられます。日本が多様な人にとって生きやすい国になれば、海外からの注目度も高まります。インバウンド経済の活性化など少なくない恩恵もこうした環境のもとに生まれるのではないでしょうか。
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