2020年4月より改正健康増進法が全面施行され、喫煙ルールが変わります。
海外と日本では喫煙事情も異なるため、インバウンドの利用が見込まれる飲食店などでは、喫煙ルールの適切な周知が必要となると考えられます。
今回は、インバウンドへの影響やインバウンド対策として準備すべきことについて、解説していきます。
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2020年4月~「屋内は原則禁煙」吸える場所も明確に定義される
2020年4月以降は、屋内は原則禁煙とし、屋内で喫煙可能な場合は店舗の入り口の標識で判断できるようになります。決められた場所以外での喫煙は法律により禁止され、20歳未満の喫煙エリアへの立ち入りも禁止となります。たばこを吸う人も吸わない人も快適に飲食店が利用できるような空間づくりが目指されています。
施行に向けたスケジュール
改正健康増進法は、すでに2019年から、その一部施行が始まっています。2019年1月24日からの第一弾では喫煙する際の周囲への配慮が義務付けられ、7月1日からの第二弾では学校・病院・児童福祉施設等・行政機関で施行されました。
東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて2020年4月1日より全面施行される見通しです。
海外の喫煙事情
海外の喫煙事情を把握しておくことは、インバウンドへ喫煙ルールを周知する上で重要と言えるでしょう。今回は欧米圏での例を中心に紹介し、日本の喫煙事情と比較します。
欧米は日本よりも屋内禁煙が進んでいる
WHOの調査によると、49か国において職場や官公庁だけでなく、飲食店を含む公共の場所での完全禁煙を実施しているほか、アメリカでは全50州中37州で職場が全面禁煙、38州でレストランが禁煙となっています。それに比べてこれまでの日本の喫煙規制は、屋外でのポイ捨てややけど対策が先行し、屋内での喫煙対策は分煙程度しか整備されていなかったのが現状です。
屋内は厳しく制限あるも、実は路上喫煙には寛容な欧米諸国
屋内では禁煙が進んでいる欧米諸国ですが、実は路上を含む屋外では吸える国が多くなっています。イギリスでは路上に複数の灰皿が設置されており、喫煙者はストレスなく喫煙できる場所を見つけられるといった環境があります。
フランスでも、2008年より禁煙を定めた法律が全面施行され、ホテルやレストラン、カフェなどの屋内禁煙が徹底されていますが、一方で外のテラス席では喫煙できるケースが多いほか、路上喫煙にも寛容です。
欧米圏の先進国のほとんどが屋内禁煙を徹底し、屋外では基本的に喫煙を容認しているといった状況が見受けられます。まずは路上喫煙禁止を推進してきた日本とは、まさに真逆の喫煙事情と言えるでしょう。
飲食店への影響は?
日本の都市部では路上喫煙は禁止されており、屋内でも原則禁煙となる今日、飲食店への影響についてさまざまな議論がなされています。屋内禁煙化による懸念について解説します。屋内禁煙化によって、飲食店の売上はむしろ上がる?
屋内喫煙の制限により、飲食店経営者からは減収に繋がるのではないかといった不安の声があがっています。しかし見方によっては、禁煙が守られる環境は、これまで副流煙を敬遠して店舗に来なかった客層、例えば家族連れの来店の動機付けにもなります。禁煙環境の実現は、来店する客層の変化を促し、新たな集客チャンスを生むとも考えられるでしょう。居酒屋チェーンの「串カツ田中」は、2018年6月よりほぼ全店で全席禁煙に踏み切りました。2019年11月期第2四半期決算において、売上高は前年同期比39.8%増、経常利益は39.9%増となっています。前年同期比平均の既存店売上高は100.5%、客数は104.4%、客単価は96.2%でした。客単価は減少したものの、売上高と来店客数は増加しており、全体としてポジティブな効果を実現しています。
同チェーン店は、全席禁煙となってからはファミリー層獲得のために、営業時間の変更や小学生以下の子ども連れを対象にたこ焼きを無料で提供するなどの対策も実施しています。ターゲット顧客を明確にし、合わせて施策を打ち出すことが奏功したようです。
欧米からの訪日客には、喫煙ルールの適切なアナウンスが必要
日本と欧米諸国では喫煙ルールが異なるため、訪日観光客にはルールを適切に周知することが求められます。今後重要となる、喫煙に関するインバウンド対応について紹介します。
訪日外国人への対応
上述の通り、欧米諸国では日本とは真逆ともいえる喫煙ルールが存在しています。日本を訪れた際に、戸惑いを感じる訪日外国人も少なくないでしょう。実際にHISの調査によると、滞在中喫煙者の約6割は「行く場所・地域によって喫煙ルールが変わるので混乱する」「公での喫煙ルールに関して、日本は親切ではない」と回答しています。
飲食店においてはピクトグラムをはじめとした、ルールのアナウンスに関わる適切な多言語対応が求められるでしょう。2020年4月から全面施行と、スケジュールが明確になっているため、飲食店は早急な対策が必要と言えます。
実際、訪日外国人は「どこ」で多言語対応の不足を感じるのか?インバウンド対策で「絶対に」翻訳が必要な理由
いよいよ2020年が始まりました。今年は言うまでもなく「オリンピックイヤー」です。インバウンドの訪日外国人の増加が期待されます。日本政府が当初掲げた2020年までの訪日客誘致目標数は、年間4,000万人でした。昨年は度重なる自然災害や、隣国との関係悪化などが影響して訪日客が伸び悩みましたので、この目標数値達成とはいかないようです。それでもJTBが発表した2020年のインバウンド訪日客の予測は、前年比7.9%増の3,430万人です。オリンピックが終わる夏以降の景気の冷え込みを心配する識者の声...
欧米市場を重視すべき理由「滞在日数」「消費額」
インバウンドの欧米市場は拡大を続けており、欧米からのインバウンド誘客の促進は不可欠です。滞在日数はアジア圏からの訪日観光客に比べて長い傾向にあり、7〜13日間の滞在が一般的となっています。滞在日数の長さから、旅行者の一人当たり消費額も大きいのが特徴的です。イギリス・フランス・スペイン・オーストリアは旅行者の一人当たり消費額が20万円を超えており、誘客に成功すれば経済効果は大きいと言えるでしょう。
旅行費用の使い道はショッピングより体験型観光へのニーズが強く、近年は宿坊への滞在や熊野古道や四国巡礼も注目を集めており、今後はさらなる地方誘客も期待できます。
ターゲット層の明確化「新たな客層」「リピーター」の獲得へ
喫煙習慣は、ともすれば嫌煙家と愛煙家の間で対立構造が生まれやすいトピックです。両者の利害は通常合致しません。一般消費者向けの店舗経営の立場からは、どちらの利益を優先するかの決断を迫られる場合もあるでしょう。
喫煙習慣の健康への悪影響については科学的根拠もあり、日本国内では年収や学歴等との関連性の指摘もされてきています。旅行消費額の大きな層では健康意識の高まりも今後目立ってくることも考えられ、健康増進法の全面施行はこうした層の訪日旅行を後押しする要因となることも期待できると考えられます。
ターゲット層の趣味嗜好に影響を与える様々な要因に目を向け、プロモーションや滞在時の満足度向上に応用する姿勢は、新規顧客、またロイヤリティの高い顧客の獲得には欠かせません。外国人という異文化を背景に持つ客層を相手にするインバウンド市場では、こうした意識が特に強く求められているのかもしれません。
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「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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