実際、訪日外国人は「どこ」で多言語対応の不足を感じるのか?インバウンド対策で「絶対に」翻訳が必要な理由

公開日:2020年01月15日

いよいよ2020年が始まりました。今年は言うまでもなく「オリンピックイヤー」です。

インバウンド訪日外国人の増加が期待されます。日本政府が当初掲げた2020年までの訪日客誘致目標数は、年間4,000万人でした。昨年は度重なる自然災害や、隣国との関係悪化などが影響して訪日客が伸び悩みましたので、この目標数値達成とはいかないようです。

それでもJTBが発表した2020年のインバウンド訪日客の予測は、前年比7.9%増の3,430万人です。オリンピックが終わる夏以降の景気の冷え込みを心配する識者の声も聞かれますが、ことインバウンドに関しては、例えば今年の夏以降に羽田空港国際線の発着枠を合計1日50便増便させるなど、さまざまな景気下支えの施策が計画されています。

観光立国日本の実現に向け、2020年はエポックメイキングな年になることでしょう。 訪日客の増加と共に、訪日体験の質を向上させることが今後ますます問われます。

日本滞在中の外国人が不便に感じる要素をできるだけ排除し、訪日満足度を高めるように努力する必要があります。あまたある対策の中でも、もっとも必要とされているのが「多言語対応の強化」です。

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インバウンドに翻訳が必要な理由

観光庁が2019年に実施した「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」という調査資料があります。インバウンドに関する文脈でよく引用されますので、読者の皆様もご存じかもしれません。

このアンケートで、日本滞在中の外国人がもっとも困ったことの最上位は「多言語対応」に関する事柄です。

例えば、下の図は「旅行中にもっとも困ったこと」に関する回答ですが、「施設などのスタッフとのコミュニケーションが取れないこと」と「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」の2点が、それぞれ1位と2位を占めています。

▲[旅行中に最も困ったこと]:2019年「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」観光庁資料より
▲[旅行中に最も困ったこと]:2019年「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」観光庁資料より

以下の図は、「多言語表示やコミュニケーションに関して困った場面」に関する回答を施設ごとに整理したものです。その施設によって困った場面は異なりますが、商品やサービスの内容を理解し、良い判断を下したいと感じるさまざまな局面で、不便さを感じていることが分かります。

▲[多言語表示・コミュニケーションで困った場面]:2019年「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」観光庁資料より
▲[多言語表示・コミュニケーションで困った場面]:2019年「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」観光庁資料より


ちなみに、上記の5種類の施設のうち、訪日外国人がもっとも不便さを感じた場所が「飲食店」で、全体の28.5%を占めました。

後半では、「飲食店」に的を絞り、どのような多言語対応が有効なのかを具体的に考察したいと思います。 

シーン別に整理!インバウンドで有効な多言語対応

上記の図2によると、飲食店を訪問する際に訪日外国人が不便さを感じる場面は、大別すると次のように整理できそうです。

  1. 席に案内されたり、会計をしたりする際に、基本的な仕組みが分からなかったり、店員さんとコミュニケーションができなかったりするため、困る。
  2. 料理を選択する際に、日本語の情報しかないため、そもそもどのような料理かが分からない。写真が付いていても、材料や味付け、ボリューム感が分からないため、困る。
  3. トイレや禁煙・喫煙席など、店内の設備を探す際に困る。

では、それぞれどのような多言語対応が助けになるでしょうか。シーンごとに整理しながらご提案したいと思います。 

シーン1. お客様の入店から退店までの間に案内が必要なとき

日本の飲食店で食事をする場合、システムがよく分からず困惑する外国人は少なくありません。店員さんが座席まで案内してくれるのでしょうか、それとも自分で席を探すのでしょうか。会計は前払いなのでしょうか、後払いなのでしょうか。クレジットカードは使えるのでしょうか、現金払いのみでしょうか。

このような場合は、「指差し会話シート」が役に立ちます。

交通機関を利用するとき、宿泊の時、などさまざまな場面で使用できる「指差し会話シート」が市販されていますが、飲食店向けのシートは、「入店のとき」「席に着いたとき」「注文のとき」など、シーン別によく使う表現が日本語と外国語で並記されているため、該当する文章を指で指して見せるだけで、必要事項を伝えることができます。

Webサイトから無料でダウンロードできるものもあります。例えば、神奈川県が準備している「飲食店向け指差し会話シート」は、デザインもきれいで非常に使いやすそうです。対応言語も、英語はもちろんのこと、アジアやヨーロッパの主要言語10ヶ国語版が用意されており、幅広い外国人のニーズに対応可能です。

ただし「指差し会話シート」は便利ですが、双方向の対話には向いていません。

お店側がお客様に用件を伝えるためには使えますが、お客様の疑問を理解し、それに答えるために使うことはできません。

その場合は、やはり「他言語音声翻訳システム」を活用するのがよいでしょう。

手頃な価格帯の多言語翻訳機が市販されていますが、お勧めは「多言語音声翻訳アプリVoiceTra(ボイストラ)」です。スマートフォンなどにインストールしておき、話しかけると外国語に翻訳してくれる音声翻訳アプリで、翻訳できる言語は31言語、ダウンロードも利用もすべて無料です。

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)という日本の研究機関が開発しただけに、日本語と多言語間の翻訳精度はGoogle翻訳をしのぐと評判です。

シーン2. 料理を選択するとき

多くの外国人が、日本でやってみたいことの上位に「和食を食べること」を挙げます。

とはいえ、メニュー表に写真が載っていないため、料理の内容がまったく分からず、せっかくの和食を堪能できずにがっかりする外国人が後を絶ちません。寿司や天ぷら、蕎麦やうどんのような定番メニューであれば別ですが、大部分の和食メニューは外国人にとって耳慣れない名称です。

それまで知らなかった、食べたことがなかったものでも食べてみたらおいしかったという体験は、訪日外国人にとっても忘れられない良い思い出になるでしょう。ぜひとも「写真付きのメニュー」を準備しておきたいところです

メニュー名の翻訳は独特ですので、多言語版の作成はインバウンド翻訳に慣れた翻訳会社に依頼しましょう。最初だけ少しコストがかかりますが、これがあるのとないのとでは大きな差が生じます。

また、「それぞれの料理に関する説明文」を多言語で準備してあげるとなお親切です。

日本人でも、旅行中にその土地の料理を食べてみたいと思ったとき、料理名や写真を見ても、どんな料理なのかよく分からないということがときおり生じるのではないでしょうか。外国人の場合はなおさらです。食材や味付けと共に、食べ方やその料理の背景についての簡単な説明文が添えられていると大変感謝されます。

また、最近はベジタリアンやビーガン、ハラール食を求める訪日外国人も大変増えています。一説によると、訪日ベジタリアンは100万人を超えると言われていますし、イスラム圏からも多くの観光客が訪れるようになりました。使っている食材をテキストだけでなく、イラストでも表示してあげると、さらに喜ばれることでしょう。 

シーン3. 店内の設備を探すとき

トイレや喫煙可能スペースなど、店内の施設が見つけられずに困ってしまう外国人も多いようです。

そんな場合は、「ピクトグラム」を表示しておくと良いでしょう。

ピクトグラム」とは、一般に「絵文字」や「絵単語」などと呼ばれ、ある情報や注意事項を示すために表示する視覚記号(サイン)のことです。

これはよく見かけますが、男性用トイレ、女性用トイレを表すピクトグラムです。

▲[トイレを表すピクトグラム]
▲[トイレを表すピクトグラム]

また、店内禁煙の場合や、喫煙スペースや喫煙席にはそれぞれ以下のようなピクトグラムを掲示しておけば分かりやすいでしょう。


▲[禁煙を表すピクトグラム]
▲[禁煙を表すピクトグラム]
▲[喫煙可能を表すピクトグラム]
▲[喫煙可能を表すピクトグラム]


さらに、各メニューで使われている食材をイラストでも表示してあげるとよいと述べましたが、このイラストにピクトグラムを使用してもよいでしょう。

ピクトグラムをどのように作成したらいいのかと悩む方もいらっしゃるかもしれません。実は東京都は「食品ピクトグラム(絵文字)」を開発しています。これは誰でもWebサイトから自由にダウンロードして利用することができます。

まとめ

冒頭でも述べましたが、訪日外国人の増加と共に、訪日体験の質を向上させてあげることがますます求められます。そして、その中でももっとも必要とされているのが、「多言語対応の強化」です。

うれしいことに、観光庁が毎年実施しているアンケート調査を時系列で比較してみると、「前回よりも改善された」と感じる訪日外国人が着実に増えていることが分かります。多くのインバウンド事業者が、多言語対応を課題と認識して真摯に取り組んできた成果の表れでしょう。

多言語対応がまだまだできていないと思われても、オリンピックまで時間は十分にあります。いまからでも遅くはありませんし、オリンピックが終わった後も、インバウンドのおもてなしは続いていきます。この記事を参考に、ぜひとも「多言語対応の強化」に取り組んでみてください。 

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<参照>

観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」結果

神奈川県:飲食店向け指差し会話シート

多言語音声翻訳アプリVoiceTra(ボイストラ)

東京都 多言語メニュー作成支援サイト:食品ピクトグラム(絵文字)


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この記事の筆者

株式会社アットグローバル

株式会社アットグローバル

株式会社アットグローバル 代表取締役 小田島耕治。1994年から約7年間、IBM系の会社で翻訳業務を担当した後、独立してアットグローバルを設立。25年間の翻訳業界での経験と、10万件以上の多言語翻訳の実績を活かし、世界の40以上の言語での翻訳サービスと、多言語化のコンサルサービスを提供中。インバウンドの多言語対応に役立つ情報を発信いたします。