2019年は【中国+台湾+香港】からすでに1,300万人が訪日!中国語表記でおもてなしに差をつけるコツ:「普通語」と「標準中国語」の違いは?

公開日:2019年11月21日

中国語翻訳のニーズがますます高まっています。同じ漢字を使っているため、日本人には身近に感じる中国語。しかし、日本語と中国語の差は想像以上に大きなものがあります。

例えば、日本語の「手紙」は中国語では「トイレットペーパー」のことです。この漢字を見ると中国人は「トイレ」を思い浮かべるかもしれません。また、中国旅行の経験がある日本人なら、空港などの公共施設で「工作人員」という標識をご覧になったかもしれません。この中国語は「職員」や「スタッフ」を表しますが、日本語漢字の語感から「スパイ」を思い浮かべた方は少なくないのではないでしょうか。

このコラムでは、中国語ニーズが今後も高まると予測できる理由、中国語の特徴、中国語に翻訳する場合の注意点について、具体的に解説します。

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2020年に向け、ますますニーズが高まる中国語翻訳

次の点を考えると、中国語翻訳のニーズは今後ますます高まるでしょう。

1. 在留中国人の増加が止まらない

一つ目は、日本に居住する中国人の数が年々増え続けているからです。

例えば、法務省が発表した「令和元年6月末における在留外国人数」の統計(※1)を見てみると、第1位は中国人で786,241人と、全外国人の27.8%を占めました。

この数字は大陸出身の中国人のみですが、香港・台湾といった中国語圏の人たちを含めると30%を上回り、前年比約3%増となります。日本に居住する外国人の実に3人に1人は中国語圏の人たちで、その数は年々増加しているのです。

2. 訪日中国人の増加が止まらない

日本政府観光局(JNTO)が発表した最新の数字(2019年9月末まで)(※2)によると、2019年の訪日中国人旅行者の累計は7,402,600人(前年比14.8%増)、台湾人は3,736,600人(前年比1.3%増)、香港人は1,660,900人(前年とほぼ同数)で、合計すると1,300万人に迫る勢いです。

全外国人のうち、50%以上が中国語圏からの訪日客で、その数はいまも増えています。 

3. 越境EC取引の増加が止まらない

中国には、年間100兆円以上の取引金額を誇る世界最大のECマーケットが存在します。そして、日本企業による中国向け越境ECでの販売は増え続けています。

2018年4月の経済産業省の報告(※3)によると、日本から中国向けの越境ECの販売額は1兆5,345億円で、2位のアメリカに大差を付けての第1位でした。しかし、2021年には約2兆8,500億円(つまり3年間で約2倍)まで増えると試算されており、この数字はまだまだ序の口のようです。

中国のインターネット利用者数は約8億3000万人(2018年12月時点)で、全人口に占めるインターネット普及率は60%しかありません。これからもインターネットの普及と共に、EC利用者は大幅に増加していく可能性があります。上記の予測は、むしろ控えめな数字なのかもしれません。

▲[2018年の越境EC市場規模]:経済産業省報告書より
▲[2018年の越境EC市場規模]:経済産業省報告書より

中国語の特徴を理解しよう!

上記の傾向を踏まえて、中国語での情報発信を増やしていくことが、大きなビジネスチャンスにつながるのは言うまでもありません。そのための第一歩は、中国語の特徴を正しく理解することです。では、日本語と似て非なる言語、「中国語」の特徴を整理してみしょう。

簡体字と繁体字の2種類の文字体系がある

中国語の文字は、「簡体字(Shimplified Chinese)」「繁体字(Traditional Chinese)」の2種類があります。

同じ漢字でも、次のように表記が異なります。 

▲[簡体字と繁体字で同じ単語を表記した場合の対比]:筆者作成
▲[簡体字と繁体字で同じ単語を表記した場合の対比]:筆者作成

かなり違うことがお分かりいただけるのではないでしょうか。

重要なのは、中国語圏の国によって、簡体字を使う地域と繁体字を使う地域とに分かれているということです。以下の図をご覧ください。

▲[簡体字を使う国や地域(黄色)と、繁体字を使う国や地域(水色)]:筆者作成
▲[簡体字を使う国や地域(黄色)と、繁体字を使う国や地域(水色)]:筆者作成

なぜ二つの形式が生まれたか?

元々は、中国語と言えばすべて「繁体字」で表記されていました。しかし、繁体字は画数が多く、昔はそれが原因で識字率が上がらないという問題がありました。

そこで第二次世界大戦の終結後、大陸に新たに設立された中国政府は、漢字を簡体字で表記することを打ち出し、学校教育で導入します。これにより、大陸の中国人の識字率は劇的に改善されました。しかし、香港や台湾は政治的に本国とは一線を画していたため、その後も繁体字を使用し続けます。これが、中国語に2種類の表記が存在する背景です。

また、同じ繁体字でも、香港と台湾では用法や字体、表現方法が異なります。これらの国は、戦後70年もの長い間、それぞれの政治体制のもと行政や教育制度が存在しています。言語は生き物ですので、年月が経つと変化します。それも、それぞれの政治、社会、文化の違いを反映しながら変化していきます。

こうした背景から、簡体字中国語、台湾繁体字中国語、香港繁体字中国語の3つは、それぞれ「別言語」と捉えて翻訳することが、中国語翻訳に通じた翻訳会社の間では常識となっています。 

公用語と方言が存在する

中国語の理解をさらに複雑にしているのが、公用語と方言の存在です。

中国の歴史をひもとくと、昔は別の国だったものが、ある時点で統一され、それを繰り返して現代中国を構成するようになったことが分かります。そのため、七大方言とも十大方言とも呼ばれる「方言」が存在し、それぞれが全く別言語と言ってよいほど異なります。

これでは国としての一体感を保てないため、方言の中でももっとも話者が多い「北京語」をベースとした公用語「普通話(ぷーとんふぁ)」を制定します。普通話の中華人民共和国における普及は、1982年に憲法に規定されました。また、「普通話」を含む各中国語圏で定められている標準語は「標準中国語」と総称します。

一口に中国語といっても、話者によって馴染みのある表現にはかなりの幅があり、中国の特定地域を対象とした文章の場合は、その地域の方言の存在も意識した翻訳が必要になります。

▲[中国語方言の分布 (日本語)]:Wikipediaより
▲[中国語方言の分布 (日本語)]:Wikipediaより

まだまだある中国語の特徴~上級編~

ここまでは、中国語の基礎的な特徴について紹介しました。続いて、少し応用編ともいえる一歩踏み込んだ特徴を解説します。

中国語への翻訳では、こうした点を正確に理解している翻訳者が担当するかどうかが、アウトプットの質を左右すると言えるでしょう。

1. 声調言語

中国語には4種類の「声調」(声の高低)があります。発音は同じでも、声調が異なると意味が変わるため注意が必要です。

例えば、「妈妈骂马(お母さんが馬を叱る)」を「ピンイン表記」(中国語のローマ字による表記)すると「mā mā mà mǎ」となり、発音はすべて「ma」(マ)なのですが、声調を間違えると全く意味が変わってしまいます。

実際は、翻訳の際に問題になることはありませんが、中国語の特徴として理解しておくとよいでしょう。

2. 孤立語

語幹に語尾を付けて様々に変化する日本語とは異なり、中国語の単語は変化しません。例えば、「吃(食べる)」は文章の位置、時制や話者の違いを問わず常に「吃」です。これに「了/过/者」などを付けて、完了や経験を表します。

3. 「表意文字がない」ため、外来語の表記に工夫が必要

日本語は外来語を「カタカナ」(表音文字)で表記できますが、中国語には「表意文字」がなく、漢字で外来語を表現するため少し工夫が必要です。外来語を中国語に翻訳する場合は、「音訳」と「意訳」という2つの方法があります。

音訳の名訳といえば「Coca-Cola」(コカ・コーラ)でしょう。中国語訳は「可口可乐」(ke kou ke le)ですが、音がCoca-Colaに似ている上に、美味しくて楽しいという意味にもなり、商品名としては最高と言われています。

「意訳」の例としては、パソコンの「マウス」(mouse)は「鼠标」(「ネズミ」+「印」)で、直訳すると「マウスポインタ」、「ホットドッグ」は、「热狗」(「熱い」+「犬」)直訳すると「熱い犬」、「ドラえもん」は「机器猫」(ロボット猫)や「哆啦a梦」(ドラえもんの音訳)と表記します。

外来語をどんな中国語に訳すかは、翻訳者の腕の見せ所なのです。

4. 動詞の表現が豊富

日本語では、「ウェブサイトを見る」「資料を見る」「テレビドラマを見る」「桜を見る」など、すべて同じ「見る」という動詞を使うことがほとんどです。中国語は動詞表現が豊富で、「見る」に相当する動詞がたくさんあり、適切に使い分けた方がより中国語らしくなります。

例えば、「ウェブサイトを見る」は「浏览网站」、「資料を見る」は「查看资料」、「テレビドラマを見る」は「观看电视」、「桜を見る」は「观赏樱花」といった具合です。動詞を適切に訳し分けることが、中国語翻訳の重要なスキルの一つです。

中国語に翻訳する場合は、どの国や地域が対象かに気をつけて!

これまでにご説明したとおり、中国語圏の国によって、または地方によって、使用する文字や表現が異なります。それで、翻訳会社に依頼する場合は、どの国や地域を対象とした資料かを明確に伝えてください。

大陸の中国人を対象とする場合は大陸の中国人に簡体字で、香港や台湾の人たちを対象とする場合は、香港/台湾人に繁体字でそれぞれ翻訳を依頼する必要があるからです。

また、中国大陸の特定地域のみを対象とする場合は、そのことも含めて相談するとよいでしょう。特に、くだけた口語表現を多く含む場合は、上海の人には上海語で、広州や深圳の人には広東語で訳した方がよいかもしれません。依頼時にこの種の情報があると、上海人や広東人の翻訳者を起用することが可能です。

また、インバウンドのお客様向けに、Webサイトやパンフレット、メニューなどの外国語版を準備する際、簡体字中国語のみ準備されているケースをよく見かけます。予算や時間が許すなら、台湾や香港の繁体字も準備してあげると、おもてなしの気持ちがさらに伝わるでしょう。

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<参照>

※1 http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00083.html
※2 https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_visitor_arrivals.pdf
※3 https://www.meti.go.jp/press/2019/05/20190516002/20190516002-1.pdf

<画像>

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Map_of_sinitic_languages-ja.svg


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この記事の筆者

株式会社アットグローバル

株式会社アットグローバル

株式会社アットグローバル 代表取締役 小田島耕治。1994年から約7年間、IBM系の会社で翻訳業務を担当した後、独立してアットグローバルを設立。25年間の翻訳業界での経験と、10万件以上の多言語翻訳の実績を活かし、世界の40以上の言語での翻訳サービスと、多言語化のコンサルサービスを提供中。インバウンドの多言語対応に役立つ情報を発信いたします。