「タイ・ファースト」に努める佐賀県の悩みは、圧倒的な旅行消費金額の低さ:あの大ヒットミュージカル映画の便乗動画で、拓け新たな市場!

公開日:2020年01月16日

佐賀県はインバウンド誘致に成功し、2017年の外国人の延べ宿泊者数は385,250人泊となり2011年と比べると10倍以上増加しています。

急成長の背景には佐賀県の戦略的なインバウンド施策がありました。本記事では、ロケツーリズムや酒蔵ツーリズムを活用した佐賀県の観光戦略を紹介していきます。

佐賀県のインバウンド動向は?

佐賀県を訪れる外国人の国籍や消費動向の特徴や佐賀県が実施したインバウンド対策と併せて紹介します。

佐賀県のインバウンド需要は?

2018年の観光庁による調査結果によると、佐賀県のインバウンド需要は訪問率1.08%の24位でした。しかし、1人1回当たりのインバウンド消費額は18,466円の43位、宿泊日数平均は1.1日という結果で、訪問率の相対的な高さに比べて低さが目立ちます。

その理由には、佐賀県を訪れる外国人の90%以上が近隣のアジアや東アジア諸国であることの影響があります。こうした地域の旅行者の予算はインバウンド市場全体で見た場合決して高くはなく、結果として佐賀県のインバウンド消費額は全国43位にとどまっていると考えられます。

加えて佐賀県の「JAPAN Free Wi-Fi」登録施設が全国45位、外国人観光案内所の設置数は全国35位であり、これらは外国人が快適に長期滞在するために対応する課題と言えるでしょう。

佐賀県のインバウンド需要

国内向けの観光PRで度々話題を集める佐賀県ですが、インバウンドにおいては人気の観光地・博多が近いためか、日本人の観光地認識以上にインバウンド需要があることが伺えます。

2013年と2018年の外国人宿泊者の増加割合が1位

日本政府観光局の調べによると、2013年から2018年の外国人宿泊者の増加率が最も伸びた県は佐賀県でした。5万5,550人から37万4,840人に増加し、この数は6.75倍にも相当します。

佐賀県は東アジア地域と近いという地の利を活かし、2013年以前から映画ロケ地の誘致を行い、アジア圏での認知度を上げる施策を実施しました。

2011年には韓国映画の誘致に成功し、その経験を活かして2013年以降はタイ映画も誘致することができました。その結果、タイ人観光客が一気に増え、さらに2019年のタイ人の1人当たりの旅行支出額は前年比18.7%増、消費額全体は前年比22.4%増を記録しました。

今後も成長が見込まれるタイは佐賀県にとって重要な国として位置づけられるでしょう。

タイからの観光客急増の鍵は映画ロケ?ロケツーリズムの成功事例

ロケツーリズムとは、映画やドラマのロケ地を訪れてその土地の自然や文化、人に触れ、その地域のファンになること指します。

観光庁が取り組む「テーマ別観光による地方誘客事業」の選定テーマのひとつでもあります。ここでは、ロケツーリズムに成功した佐賀県の事例を詳しく解説します。

徹底したターゲット設定

佐賀フィルムコミッションは(以下、佐賀FC)「佐賀が元気にあるためには?」をテーマに映像作品のロケ誘致を通じて佐賀県のPRだけではなく地域活性化のために2005年に設立されました。

地元住民も作品づくりに巻き込み、佐賀の良さを改めて認識すると同時に新たな魅力を発見していくことを目的としている非営利団体です。

佐賀FCは2013年7月にタイ人の訪日観光ビザ制度が緩和され、タイ・バンコク空港から福岡空港へ直行便が就航されていることから、タイを韓国や中国に代わる新たなターゲットとして選定しました。

その過程では、

  1. 経済成長率
  2. テレビ業界の動向
  3. 日本への興味関心の高さ
  4. 佐賀への導線
  5. 日本の他地域でのロケ実績

の5項目について重点が置かれました。

映画の成功を佐賀のPRにつなげる戦略

佐賀県の認知度を上げ、さらに訪日観光客の数を増やすためには映画そのものヒットが必要でした。佐賀FCはタイ映画やドラマで実績のある有名プロデューサーや受賞歴のある監督や人気俳優についてインターネットなどでリサーチし、ジャパンフィルムコミッションの協力を得て、タイの映画やテレビ業界とのコネクションを築きました。

そして佐賀県をロケ地としてオファーすることに成功し、2014年タイ映画年間興行収入5位のヒット映画「タイムライン」の一部シーンが佐賀で撮影されました。この映画をきっかけにタイのメディアで「SAGA」が紹介されることが急激に増えました。

佐賀県観光課はロケ後の誘致を最大限に活用するため、タイ映画の撮影が円滑に進むように制作者のリクエストに丁寧に対応し、監督や出演者と信頼関係を築くことを意識したそうです。

その結果、主演女優を佐賀の観光PR冊子「ADVENTURE SAGA」に起用に成功しました。また映画公開イベントでは、佐賀県のPRタイムが設けられるだけでなく監督が旅行イベントのゲストとして登壇し佐賀県の魅力を語るなど、タイ人へPRする機会を戦略的に増やしました。

継続的なPR

佐賀FCはその後も継続的にタイへの営業に力を入れ、テレビドラマ「きもの秘伝」やLINE TVドラマ「STAY saga〜私が恋した佐賀〜」など新しい映像作品を毎年誘致することに成功します。

新規観光客やリピーター獲得のため佐賀県観光課はロケ地誘致のたびにPR冊子「ADVENTURE SAGA」を制作し、ロケ地以外の観光地の露出や公開のタイミングに合わせて旅行イベントの開催を行い集中的かつ効率的にPRを展開しています。

訪日タイ人の増加に伴い観光地や地元住民もインバウンド対策に乗り出し、タイ語のあいさつを覚える人やタイ語の案内板が町中や商店街に設置されました。

佐賀県全体が「タイ・ファースト」に取り組むことがタイ人観光客の数が急激に伸びた理由であると言えるでしょう。

なぜ佐賀にタイ人が?3年で15倍に爆増した背景にあった「ロケツーリズム」とは

2016年から観光庁が取り組んでいる「テーマ別観光による地方誘客事業」のテーマの1つに「ロケツーリズム」があります。中でも佐賀県は、訪日タイ人観光客をターゲットに「ロケツーリズム」に積極的に取り組んだ結果、3年間で約15倍のタイ人宿泊観光客の誘致に成功しました。今回は「ロケツーリズム」という観点から、インバウンド誘客を促進した佐賀県の取り組みを紹介し、ロケツーリズムが持つ地方誘客への可能性と成功の鍵について見ていきましょう。目次ビザ緩和と直行便の就航がタイ人の訪日旅行を後押し映画公開後の観...

その他のインバウンド成功事例

佐賀県では各市町村が積極的にインバウンド対策に取り組んでいます。

嬉野市のインバウンド施策

嬉野市は外国人観光客のニーズに合ったPRや受け入れ体制を整える施策を進めています。

例えばスナックをジャパニーズパブとして分かりやすく説明、外国人向けまちなかガイドの発行、うれしの茶を海外でPR、外国人向けの忍者・芸妓イベントの開催などが挙げられます。

インフラ面ではWi-Fiの設置強化や商店街や飲食店でのクレジット決済対応などの整備に努め、受け入れ体制の強化を図っています。

さらに外国メディアの取材を積極的に受け、観光資源である温泉、お茶、陶器、忍者、芸妓の発信に努めています。

また、外国人向けに温泉などを解説した動画をureshinospaというYouTubeチャンネル上で公開しています。

動画は英語音声で制作されていますが、韓国語や中国の字幕が用意されています。

インパクト抜群!「SA GA LAND」

2017年にヒットした映画「ラ・ラ・ランド」のパロディー動画「SA GA LAND」が話題を呼んでいます。

50名以上の市民ボランティアの協力の下制作され、佐賀の魅力を英語字幕付きで楽しく紹介しています。

佐賀県非公式のPR動画でありながら、YouTubeでの再生回数は4万回以上を突破しました。

佐賀県のインバウンド成功事例を参考にインバウンド対策を

佐賀県で県全体で取り組んでいる施策や地域ベースで取り組んでいる施策とさまざまですが、いずれもターゲットとPR内容をしっかりと策定し、徹底的にプロモーション活動に取り組んでいます。

ターゲットとPR内容を明確にすることで、より伝わりやすく「行ってみたい」「体験してみたい」という消費行動に結びつけることができることを示した好例でしょう。

<参照>

JTB総合研究所×ナビタイムジャパン:観光活性化のための課題とソリューションを導くためのマーケティング活動

JNTO:訪日外客統計の集計・発表

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!