長野県は有数の温泉地であり、雪が多く降る地域であるため、冬季にはスキーなどのレジャーを楽しむ観光客が多い傾向にあります。
長野県は実際にどのようなインバウンド対策を行い、訪日外国人観光客を誘致しているのでしょうか。
この記事では、長野県におけるインバウンド事情およびその取り組みについて紹介します。
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2018年長野県のインバウンド需要
2018年における長野県の消費動向は、どのような動きだったのでしょうか。また、どの国からの訪日外国人観光客が多く、その理由としてはどういったことが挙げられるのでしょうか。ここでは、以上の2つの観点から長野県のインバウンド需要について紹介します。
消費動向
長野県に来ている訪日外国人観光客の割合は、台湾が最も多く39.06%、次いで中国が11.59%、3位にオーストラリアが10.13%、4位に香港が8.94%です。訪問率と訪日外客数を元に計算すると、長野県への訪問者数は83万5,911人で、全国第16位です。
長野県におけるインバウンド1人1回あたり旅行消費金額は4万1,332円で、全国第21位となっています。
訪問者数に比べ消費額の順位は低めであるものの、比較的インバウンドの誘致に成果を上げていると言えるでしょう。
長野県のインバウンド需要
長野県はスキーリゾートなどの観光資源が豊富なことから、全体的にインバウンド誘致は比較的進んでいる県だといえます。外国人観光案内所の整備や案内表示の英語対応などのインバウンド対策も進んでいます。
ウィンタースポーツが人気の理由?
観光庁から出されている「訪日外国人消費動向調査」の各種統計データを分析すると、近年の訪日目的としては、「日本でしかできない」「日本ならでは」の体験を重視しており、冬にスノーボードなどのウィンタースポーツをメインとした観光が多いことがわかります。
長野県において訪日オーストラリア人観光客が比較的多い理由としては、オーストラリアは南半球にあるため季節が逆になり、真夏でもスキーが楽しめる地として長野に訪れているということが考えられます。
日本国内で最多となる80箇所以上ものスキー場が密集している長野県は、JR長野駅から各スキー場直行のシャトルバスが運行されています。
日本の雪の特徴であるパウダースノーも訪日外国人の人気を集める理由と言えるでしょう。
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訪日外国人に人気の長野県観光スポット
長野県において野沢温泉村、松本城および軽井沢が訪日外国人に人気の観光地として注目されています。これらの観光地は、どのような特徴があり、また訪日外国人に人気となっているのでしょうか。ここでは、口コミを交えながらそれぞれの観光地の特徴などについて紹介します。
野沢温泉村
日本で唯一、村の名前に「温泉」がついている野沢温泉村は、古くから湯治場として知られており、かけ流しの外湯は天然温泉100%となっています。外湯は13か所あり、食べ歩きをしながら湯めぐりを楽しむこともできます。野沢温泉スキー場は日本屈指のゲレンデと呼ばれ、スキーやスノーボードなどのウィンタースポーツを、36のコースおよびゲレンデで満喫できます。
パウダー質の柔らかい雪が潤沢で人気があります。
下記に、トリップアドバイザーに寄せられた訪日外国人からの口コミを紹介します。
We spent a night here, had a traditional dinner and then a private onsen. I would like to note that IF you have TATOOS please advise when booking as they will arrange a private onsen experience as we had, as in some places tattoos are still not viewed well, so it’s best to check, we did and that’s why we had the private one so not to offend. The beds were traditional style but raised for westerners.The dinner traditional and very satisfying dressing for dinner the staff were helpful and I rate it a full 5/5 so glad we experienced it. Took a brisk walk in the snow at 6 am before breakfast amazing experience私たちはここで夜を過ごし、伝統的な夕食を食べ、それから私的な温泉に行きました。タトゥーが許可されていない場所もあるので、そのときは他の人の気分を害さないようプライベート温泉を予約することをおすすめします。寝具は布団でしたが、我々西洋人のために、ベッドへと変更していただきました。伝統的な夕食は非常に満足のいくものでした。スタッフは親切でした。朝食前の午前6時に雪の中を散歩しました。
松本城
松本城は、1504年の戦国時代に建てられました。当時は深志城と呼ばれていましたが、徳川家康の配下であった小笠原貞慶が松本城へと改名しました。複数回にわたる修復を施され、現在は国宝となっています。
松本城は壁面の上部が白漆喰となっており、また下部が黒漆塗りの下見板となっているのが特徴です。
この白と黒の色の対比がより一層美しさを際立たせています。
下記に、トリップアドバイザーに寄せられた訪日外国人からの口コミを紹介します。
I wasn't sure if we wanted to include Matsumoto Castle in our itinerary as the town was a bit out of our way. But I wanted to see the black castle ('Crow Castle') as was planning to visit the white castle ('White Egret Castle') in Himeji. I'm glad we did.It really is a spectacular site and we're so grateful for a volunteer guide who brought us through it and explained features about and history around it. If a volunteer guide is available, I highly recommend you taking up this wonderful offer they've set up. Great experience and hope you get to enjoy as well.今回の旅程に松本城を入れるかは悩んでいました。しかし、姫路の白い城を訪れたため、松本城の黒い城を見たいと思いました。実際に訪れられて嬉しく思います。大変壮観であり、案内や歴史などを説明してくれたボランティアガイドにはとても感謝しています。ボランティアガイドを利用できるなら、この素晴らしいガイドを利用することを強くお勧めします。素晴らしい経験だったので、これを見ているあなたも楽しんでいただけることを願っています。
インバウンド人気観光スポットランキング19位「松本城」の人気の理由・インバウンド対策とは
松本城は、長野県松本市にある日本の城です。国内のみならず海外からも多くの観光客が訪れる人気スポットです。
軽井沢
2018年における軽井沢を訪れた外国人は20万4,940人であり、長野県を訪れた外国人のうち17%もの人が訪れています。これは長野県で市町村別にみた場合の順位として1位であり、長野県の中で最も多くの外国人が訪れていることがわかります。軽井沢は別荘地として有名な山間の町で、白糸の滝や雲場池などの自然豊かな観光スポットが多くあります。
軽井沢駅から伸びる軽井沢本通りや旧軽井沢銀座通りには、おしゃれなレストランやカフェ、評判が高いベーカリーもあり、食事の面でも充実しています。
軽井沢駅から徒歩3分の距離には、軽井沢・プリンスショッピングプラザもあり、買い物にも最適です。
インバウンド取り組み事例を紹介
上記から、長野県では自然を生かした観光スポットが人気であることがわかりました。では、長野県では訪日外国人観光客を誘致するために、どのような取り組みをしているのでしょうか。この項では、長野県におけるインバウンド取り組み事例について紹介します。
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山岳リゾートブランド構築事業
長野県観光機構は長野県の強みを活かして、東京オリンピック・パラリンピックに向けて訪日外国人旅行者を長野県へ取り込むためのプロモーションを実施しています。
2018年のプロモーションの内容としては、1. ブランド構築事業、2. 誘客事業、3. 国際観光大使連携事業、4. 多言語パンフレット作成事業、5. インバウンド商談会の開催があります。
1. ブランド構築事業では欧米向けに「中山道」ブランドを構築するため、旅行会社・メディア等の招請事業の実施と、メディアを活用した情報発信を行っています。
2. 誘客事業では、「アウトドア」コンテンツを活かし、
- 欧州にはサイクルツーリズムの推進
- 中国にはウィンタースポーツによる誘客
- 台湾にはグランピングキャンプによる誘客
- 韓国には登山、トレッキング等による誘客
- 東南アジアには旅行会社・メディア招請
- 現地コーディネーター配置
- 旅行博出展
- その他宿泊助成、パンフレット制作
などの国ごとの様々な施策を行っています。
3. 国際観光大使連携事業では香港の大使を委嘱している袁社長のEGLToursと連携した観光・県産品PRイベントを実施しました。
4. 多言語パンフレット作成事業では仏語・独語・インドネシア語・ベトナム語での地図パンフレットや、翻訳デザイン電子データの作成を行っています。
5. インバウンド商談会については、県内市町村・事業者とインバウンド旅行会社との商談会を実施しました。
阿智村の「日本一の星空」を核としたブランド戦略
阿智村では、観光局を主体として多様な関係者との連携のもと、官民一体でブランド戦略に取り組んでいます。その中の一つに、「日本一の星空ナイトツアー」があります。このコンテンツは、利用者が年間11万人を超え、ブランド戦略の中でも象徴的であると考えられます。
旅行業者を活用し、主催農家による朝市やスターコインを導入することで、年間の利用者が15,000人を超える着地型旅行商品を展開しています。
これにより、宿泊施設だけでなく他業種への効果を広げています。
官民一体となってインバウンド対策の推進
長野県では自然を生かした観光地が多く存在しています。
それに付随するように、長野県へ観光に来る訪日外国人は、近隣のアジアの国だけでなく、自然や日本の伝統を楽しみにするオーストラリア人が多いようです。スキーや温泉をより有効的に活用しているからこそ、長野県は観光地として根強い人気があるのかもしれません。
また、官庁と民間企業が連携および協力してインバウンド対策を進めることで、より効率的な集客が行えているのではないかと考えられます。
インバウンド対策を講じる際には、他県の成功事例なども参考にすると、新たな方法や知識が得られるかもしれません。
<参照>
長野県観光部:平成30年 外国人延宿泊者数調査結果
(一社)長野県観光機構:平成30年度事業計画