栃木県では、那須塩原市や益子町などでホストタウンとして、ハンガリーとオーストラリアを受け入れています。
会場の多くが設置される首都圏に近い栃木県では6つの自治体がホストタウンに登録されています。
各ホストタウンでは、事前キャンプの受け入れのほか、地域住民とオリンピアン・パラリンピアンとの交流事業などが計画されています。
この記事では、栃木県でのホストタウン事業について解説します。
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栃木県でホストタウンとなる自治体と受入国
栃木県ではハンガリーとオーストリアの2か国を受け入れます。両国とも栃木県との間には芸術や経済の面で長く交流が結ばれています。
スポーツを通じた交流はもちろんのこと、文化や芸術を通じた市民レベルのふれあいが企画されています。
ハンガリー
ハンガリー出身の彫刻家ワグナー・ナンドールは日本人の妻と栃木県益子町に移住し、そこで制作した数多くの作品を遺しました。
栃木県には、県にゆかりあるワグナーの祖国・ハンガリーを相手国として最優先し誘致に取組みました。
栃木県においてはハンガリーのホストタウンとして、2020年1月現在で栃木県・栃木市・小山市・さくら市・矢板市の5つの自治体が登録されています。
栃木県では2015年世界陸上北京大会での事前合宿を受け入れた実績があり、陸上競技の事前キャンプ受入れが決定しており、マウンテンバイク競技選手団は矢板市で実施する意向を表明しています。
このほか、栃木市で近代五種、小山市で水球、さくら市でトライアスロンの事前キャンプ実現に向け誘致活動が進められています。
大会関連の事業としては各種競技の事前キャンプ受入れ、HOC役員や選手団関係者を迎え大会報告会等の関連イベントの開催などを計画しています。また事前期間には各ホストタウンでスポーツ教室や公開練習、講演会等の人的・文化的交流を実施し、大会終了後にも交流の継続が予定されています。
2022年には栃木県で開催される国体へホストタウン事業での取り組みを活かしたい考えです。
オーストリア
オーストリアを受け入れるのは長年にわたり友好関係を深める那須塩原市です。
中世の街並みや音楽で有名なオーストリアの文化都市・リンツと那須塩原市は、2005年から中学生や経済団体の交流を継続しており、2016年6月には姉妹都市協定を締結しました。
また、同市は2000年より市内において関東学生トライアスロン選手権大会を開催していることから、トライアスロンの事前合宿を中心に誘致を展開しています。2019年夏にはトライアスロン競技選手団と市民との交流会が開催されました。
そのほか、音楽等の文化交流や中学生の交流が計画されています。
ホストタウンとしての取り組みと課題
ホストタウンの事業を通じ、住民の国際交流や外国人受け入れ体制の向上が進められています。五輪終了後にもレガシー効果が期待されます。
一方、栃木県のホストタウン登録数は関東の中で特に少なく、全国と比べても少数であるのが現状です。 少数ですが、ホストタウンとなった自治体の取り組みを紹介します。
スポーツ交流イベントで地域活性化
栃木県ではハンガリーの近代五種選手団を招いたスポーツ交流イベントを開催し、住民とのふれあいを通じハンガリーを身近に感じられる機会の創出をはかりました。
栃木県内のフェンシングを学ぶ小中学生との交流会では、基礎トレーニングや実践試合の後、サイン会で交流を深め和やかな雰囲気で交流を深めました。
また、栃木県内の高校フェンシング部所属の選手らを対象としたスポーツ教室も開かれ、高校生とハンガリーチームの選抜選手が実戦形式の練習で剣を交えました。
参加した高校生の選手からは、世界レベルの選手に接した経験を活かしたい等の感想が聞かれました。
キャンプ観覧のインバウンド対策
取り組みにより活性化する一方で、地方での事前キャンプ受入れに際して予想される問題があります。
例として、キャンプの観覧に訪れる観光客対応が挙げられます。世界から多くのスポーツファンがキャンプの観覧に訪れることが予想され、これまで以上に外国人対応を意識した受入れ環境の見直しが求められます。
栃木県ではユニバーサルツーリズムへの対応や案内標識等の多言語化、通信環境の向上、キャッシュレス決済のさらなる普及などが課題であると認識し、改善に努めています。
また、隣県の埼玉県さいたま市でも事前キャンプ受入れが予定されており、外部機関によるコンサルティングを受けながら多言語通話や医療通話といったサービス導入、標識等の見直しに取組んでいます。
栃木県のインバウンド需要
栃木県の訪日外国人訪問率や訪問数、インバウンド宿泊人泊数などのインバウンド需要を示す数値、およびWi-Fi整備や外国人観光案内所などのインバウンド対応の進みぶりを示す数値ともに全国と比較して平均的な数値となっています。
ホストタウン事業は3種類
東京オリンピック・パラリンピックに向け多くの大会関係者や選手が来日を予定しています。
ホストタウンは、オリンピック・パラリンピックの参加国・地域との交流を担う地方自治体です。
スポーツ立国やグローバル化などにつながる取組みとして政府が推進しています。
ホストタウン
ホストタウンとは、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向け、参加国・地域と多方面の交流をはかる地方公共団体です。
2019年12月時点で378件が登録されています。
ホストタウンは参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流を目的としており、事前キャンプの受け入れだけでなく、大会後の継続的な交流も対象です。
登録にあたっては、それぞれの地方公共団体ごとに交流する相手国・地域を定め、交流計画を作成して申請します。
ホストタウンとして登録されれば、認められた交流事業について政府からの支援を受けられます。
また、「共生社会ホストタウン」や「復興ありがとうホストタウン」といった、ホストタウンの中でも特定の目的をもった取り組みもあります。
ホストタウンって何する?東京オリンピック・パラリンピックに向けた各自治体の取り組みとは
ホストタウンとは、東京オリンピック・パラリンピック通じてスポーツ立国、グローバル化の推進、地域の活性化、観光振興などに資する観点から、参加国・地域との人的・経済的・文化的な相互交流をはかる地方公共団体のことを指します。オリンピックはスポーツ競技が大きな目玉となっていますが、本来は「平和の祭典」といわれ、スポーツを通じて国を超え平和を体現するお祭りです。それを成功させるために一役買っているのがホストタウンであり、地域の活性化やグローバル化の推進のため、ホストタウンの全国的な広がりを目指してい...
共生社会ホストタウン
ホストタウンの中でも、パラリンピック出場選手との交流を通じてユニバーサルデザインの街づくりや心のバリアフリーの取り組みを実施する地方公共団体は「共生社会ホストタウン」に指定されています。
具体的には、施設のバリアフリー化や住民への受け入れ研修、障害のある人の就労推進、パラリンピアンとの講演会や学校訪問などの交流事業などが計画されています。
ホストタウンの取り組みをレガシーとして、2020年以降のバリアフリー社会発展に活かす取組みを展開します。
復興ありがとうホストタウン
復興ありがとうホストタウンは東日本大震災で被災した東北3県の自治体を対象として設定された形態です。
これまで支援を受けた海外の国・地域と住民との交流を実施し、復興した姿を発信する事業を展開します。
「交流」が柱となっており、被災地の復興に貢献した人びとを招いた交流や、復興プロセスを紹介する事業が企画され、大会終了後にも関係者との交流継続を重視します。
2019年11月現在で27件が登録されています。
栃木県でホストタウン事業の活用を
地方自治体がオリンピック・パラリンピック参加国を受け入れ、政府の支援を受けながら多方面からの交流を担うのが「ホストタウン」です。栃木県では6つの自治体がホストタウンに登録され、ハンガリーとオーストリアの2か国を受け入れます。
他の都道府県に比べ登録自治体数は少ない栃木県ですが、行政は2020年を見据えたインバウンド対策を講じており、外国人対応をはじめとした受け入れ環境整備が進むことによる、レガシー(社会的遺産)が残る効果が期待されています。
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