日本のサービス収支「初の黒字」インバウンド市場がけん引、「旅行収支」黒字額も9.1%拡大:国際的イベントで勢い増すか

公開日:2020年02月18日

2月10日、財務省は2019年の国際収支統計(速報)を発表しました。2019年は、現行の統計になった1996年以降初めて、サービス収支が黒字になるという大きな転換点を迎えました。

その背景にはインバウンド市場の盛り上がりがあります。最新のサービス収支のデータと共に、インバウンド市場との関連についてご紹介します。


サービス収支が初の黒字に

2019年の「サービス収支」は1,758億円の黒字となり、今の統計になった1996年以降で初めて黒字となりました。訪日外国人旅行客が増えたことなどが寄与しています。

さらに全体の経常収支も、2019年は20兆597億円の黒字となりました。黒字の幅は前年より4.4%増加しています。

サービス収支とは?

サービス収支とは、外国と日本のサービスに関するお金の出入りを示すものです。

国の国際収支を表す「経常収支」「貿易収支」、「所得収支」、「経常移転収支」、そして「サービス収支」の4項目から構成されます。

そのうち、サービス収支の内訳は下記の4項目から構成されています。

輸送:国際貨物、旅客運賃の受取・支払
旅行:訪日外国人旅行者・日本人海外旅行者の宿泊費、飲食費等の受取・支払
金融:証券売買等に係る手数料等の受取・支払
知的財産権等使用料:特許権、著作権等の使用料の受取・支払

産業構造の変換

日本では長年、サービス収支が赤字の状態が続いていました。サービス分野の競争力が比較的弱いことや、日本に来る外国人と比べて、海外旅行へ行く日本人が多いことなどが要因としてあります。

そのためモノの輸出で貿易収支の黒字を稼いでいる状態となっていました。2019年の貿易収支は、米中貿易戦争や世界経済減速の影響などにより前年比53.8%と大幅に減少しましたが、それでも5,536億円の黒字となっています。

サービス収支の赤字は96年に6兆7千億円超まで膨らんで以降、訪日外国人旅行客の増加などを背景に減少傾向となり、今回、2019年についに黒字となりました。

インバウンドに関連した市場の成長

サービス収支を構成する4項目のうち、最もインバウンドと関係が深いのが「旅行収支」です。その主な項目は、訪日外国人旅行者、日本人海外旅行者による宿泊費、飲食費等の受取りと支払いです。

例えば、日本国内での高級ホテルでの宿泊や単価の高い飲食店の利用が増えれば、旅行収支の収入は増えることになります。こうしたサービスが、訪日外国人により多く利用されていることが示唆されています。

また、訪日外国人を含めた旅行者の旅行運賃は「輸送収支」に分類されます。「輸送収支」もインバウンド市場の成長の影響を受けるといえるでしょう。

例えば日本国内での周遊観光がより広く楽しまれるようになれば、移動時に利用される特急や航空便に対する運賃支払いにより、輸送収支の収入も計上されていきます。

日本の国際的イベントが、インバウンド市場の成長を後押し

旅行収支の黒字額は2兆6,350億円と過去最高を記録し、前年より9.1%も拡大しています。また、この黒字額の拡大は「輸送収支」と「その他サービス収支」の赤字を補っています。

背景にあるのは訪日外国人の増加です。観光庁の発表によれば、2019年の訪日外国人の消費額は4兆8,113億円と前年より6.5%増えています。また、7年連続で過去最高を更新しました。

また、日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2019年の訪日外国人の数は2.2%増えて3,188万人となり、こちらも過去最高を更新しています。

日韓関係の悪化により韓国人観光客は減ったものの、ラグビーワールドカップの開催などにより、全体の訪日外国人の数は増えたことで市場の成長を維持できたといえるでしょう。

【観光庁】2019年の訪日外国人消費動向調査・6.5%プラスで7年連続の過去最高更新:総計4兆8,113億円、中国市場は1.7兆円規模に

目次消費額は7年連続過去最高暦年の消費額は4兆8,113億円大きな割合を占める欧米豪、中国の消費消費額は7年連続過去最高観光庁は1月17日、訪日外国人消費動向調査2019年の年間値と、10-12月期の調査結果を発表しました。2019年暦年の訪日外国人の消費額は、7年連続過去最高を記録しています。訪日外国人消費動向調査2019年暦年の消費額は4兆8,113億円2019年暦年の訪日外国人旅行消費額は、4兆8,113億円、前年比6.5%増加と推計。国籍・地域別では中国が1兆7,718億円で割合は...


麻生太郎財務相は、2月10日の閣議後記者会見で、国民総所得(GNI)の観点から「サービス収支は非常に重要な要素」と指摘したうえで、サービス収支の初の黒字転換について旅行収支の存在感が増したこと、インバウンド市場が日本経済にとって欠かせない要素になっていることを述べています。

足元では新型コロナウイルス(COVID-19)の影響による訪日外国人の減少が懸念されるものの、2020年の東京オリンピック開催、2025年の大阪万博を控え、今後もインバウンド需要がサービス収支を下支えする可能性は高いといえるでしょう。

まとめ

訪日外国人観光客の増加に伴い、長い間赤字が続いていた日本のサービス収支はついに黒字に転じました。

2020年以降、オリンピックでこの傾向に勢いがつくことも期待されますが、現在世界中に広まる新型コロナウイルス(COVID-19)が市場に与えるネガティブな影響も避けられないでしょう。

自然災害を想定した対策と同じく、こうしたマイナスの出来事をいかに最小限のダメージにとどめるかのサービス設計が、インバウンド業界でも今後は必要になってくるのかもしれません。

<参照>

・日本経済新聞:常黒字2年ぶり増加 19年、サービス収支が初の黒字

・livedoorNews:サービス収支が初の黒字に 2019年、訪日外国人増え

・Bloomberg:サービス収支が初の黒字に、インバウンド貢献-19年の経常収支

・財務省:国際状況 用語の解説

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!