観光庁は、日本における「観光先進国」の実現に向け、訪日外国人が現在感じている問題点や訪日旅行に対する評価を明らかにするべく、アンケート調査を実施しています。
訪日ラボでは最新のアンケート結果をもとに、訪日外国人の日本滞在に対する評価と現状における課題を分析し、インバウンド調査報告書2020に掲載しています。
今回は、本書から読み取れる訪日外国人が日本滞在で感じている困りごとと各課題への対策について紹介します。
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まだ残る!キャッシュレス決済の課題
まず、注目すべき課題はキャッシュレス決済に関する部分です。
訪日外国人を対象とした調査では、クレジットカード・デビットカードの利用に困ったこと、またその場所についての結果が出ています。アンケート結果では、74%が観光地での決済、31%が公共交通機関での決済に不便を感じています。
日本は中国、韓国、米国などの諸外国と比較してキャッシュレス決済が普及しておらず、日常の決済をカードで済ませる文化圏からの観光客や、中国などQRコード決済が普及している地域からの観光客からすると、観光施設の入場券や公共交通機関の乗車券をキャッシュレスで購入したいという需要があるようです。
キャッシュレス決済に関する不満を持つ人の割合は年々減少していますが、これはキャッシュレス決済が整備されたという側面よりも日本では現金決済が主流という文化を受け入れた訪日外国人が増えた側面が多いとも推測できます。
今後、更に多くの訪日外国人にストレスの少ない日本滞在を提供するには、より多くの場所でキャッシュレス決済を整備するとともに、キャッシュレス決済に対応している旨を改めて告知していく必要がありそうです。
日本はいつ中国に追いつけるのか?キャッシュレス後進国、脱出の可能性をさぐる
今世界では、クレジットカード決済や電子マネー決済などのキャッシュレス決済の普及が進んでいます。QRコードでの決済が広がっている中国や、クレジットカード決済が普及する韓国や欧米諸国など、多くの国は2016年時点でキャッシュレス決済比率が40%を超えています。 一方、日本は2106年の時点で19.9%と他国に比べて大きく遅れをとっている状況です。訪日外国人観光客が増加の一途を辿る日本において、キャッシュレス決済に慣れたインバウンド客に対して多様な決済方法を整備することは喫緊の課題となっています...
コミュニケーション・多言語表示の不満:地方で遅れ?
次に、コミュニケーションや多言語表示が抱える課題について解説します。
上の図は、コミュニケーションや多言語表示に困った訪日外国人に、その困ったシーンについて回答を得た結果です。60.2%が公共交通機関、55.4%が観光地において困ったと回答しています。なんと半数以上の訪日外国人が、日本滞在中にコミュニケーションや多言語表示において不便を感じたことがわかります。
都市部においては、街中や公共交通機関の案内表示の多言語化が進んでおり、近頃は英語、中国語、韓国語などで会話ができる訪日外国人向け観光案内所なども整備されています。
それでもなお、少なくない割合の訪日外国人に不便を感じさせている原因に、地方の環境整備の遅れが考えられます。
インバウンド需要は都市部から地方へと拡大しており、東京、名古屋、大阪などの都市部を観光した訪日外国人が近郊の県へ赴くパターンや、日本の農村を味わうために田舎に滞在するパターンなど、観光の種類も多様化しています。
これらの需要にしっかりと対応できるよう、地方でも地域一丸となって多言語化をはじめとする受け入れ体制の整備が急務となっているといえるでしょう。
最新の多言語接客支援ツール5選!外国人との会話・接客にお困りの飲食店・小売店の方を支援する心強いツールまとめ
今年2019年はいよいよラグビーW杯が開催され、また来年の2020東京オリンピック・パラリンピックに向けてインバウンドが急加速する年になります。そのため、日本各地で急ピッチで多言語化が進んでいます。その理由は、訪日外国人の障壁となりうる問題だからです。実際に、平成28年度に観光庁が実施した訪日外国人観光客に対するアンケート調査を見てみると、日本に来る外国人観光客が旅行中に困っていることの上位にいつも挙げられるのは、コミュニケーションの問題(第1位:32.9%)と多言語表示の問題(第3位:2...
公共交通機関に関する不満
最後に、公共交通機関が抱える課題について解説します。
交通機関について、訪日外国人が利用したものに対して困ったと回答した割合を確認してみると、在来線22.7%、バス20.7%、新幹線16.6%の順に高くなっています。
在来線とバスは特に利用に不都合を感じられる場合が多いようです。こうした交通機関では多言語表示こそ整備が進んでいるものの、乗り換えや運賃の計算について複雑だととらえられているのかもしれません。
乗り換えや運賃の計算に関しては、多言語対応の交通案内アプリがすでに数多く登場しており、多くは無料で利用できます。そのため、これらのアプリの存在を周知していくことが解決策となるでしょう。
また、バスの乗り方など日本独特のルールの存在も、訪日外国人の戸惑いの原因となっているかもしれません。
電車やバスの乗り方についても多言語対応したガイドを整備したり、記憶に残る動画コンテンツなどで分かりやすく周知することが重要です。
訪日客の5人に1人が鉄道の乗換にうんざり?インバウンド向け乗換アプリの利用促進はこれから必須に:担当者なら知っておきたい代表的な乗換アプリま
以前の訪日ラボでも取り上げたように、「訪日外国人が困っていること」として筆頭に挙げられていたのが「無料Wi-Fiの少なさ」でしたが、近年では国際ローミングやSIMカードを利用してインターネットネットに接続する訪日外国人観光客数が増加していることや、観光施設や飲食店・宿泊施設にて無料Wi-Fiの増設が進んでいることを背景に、この問題は解決に向かっているという見方ができるでしょう。では、近年の訪日外国人観光客は日本滞在中に他にどのようなことに困っているのでしょうか。インバウンド対策にお困りです...
インバウンド業界が抱える課題に対するソリューションを紹介
ここまで、キャッシュレス決済、コミュニケーション・多言語表示、公共交通機関がそれぞれ抱えている課題について解説しました。ここからは、それぞれの課題を解決できるソリューションについて、カテゴリごとにピックアップして紹介します。
1. 決済手段に関するソリューション
キャッシュレス決済は、QRコード決済とクレジットカード・デビットカード決済の2種類に大きく分けられます。
QRコード決済は中国で最も普及しており、中国ではAlipayとWeChat Payという二大QRコード決済サービスが多くの人々に利用されています。これらのQRコード決済サービスは日本でも導入できるため、訪日中国人へのインバウンド対策としてQRコード決済を導入することで利便性の向上が狙えます。株式会社SGIのSGpaymentsなど、いくつかの企業がQRコード決済に関するソリューションを提供しています。
クレジットカード・デビットカード決済は世界各国で普及しており、最も普及率の高い韓国では自動販売機や売店など、非常に多くの場所でカード決済が利用できます。日本では、NECプラットフォームズ株式会社のJ-Mupsなど、いくつかの企業がカード決済に関するソリューションを提供しています。
キャッシュレス決済なくしてインバウンド集客なし!広がる中国市場「海外旅行保険」利用者を取り込むには?
近年、インバウンド需要の取り込みが期待されるとして、現金を使わないキャッシュレス決済導入の動きが活発になっています。キャッシュレス化が進むことにより、訪日外国人観光客はもちろん、日本に暮らす在留外国人の利便性向上にもつながり、結果として利用者も増加することが予想されます。中でも、スマホ決済サービスは急速な広まりを見せており、飲食や買い物時の支払いに使えるのはもちろん、現在は保険料の支払いまで対応しはじめている状況です。目次キャッシュレス化を進める日本の保険業界ムダがない!QRコード読み取り...
2. コミュニケーション・多言語対応のソリューション
コミュニケーションの多言語対応は、接客業における喫緊の課題です。株式会社ログバーのiliインバウンドや、株式会社H2のsmaoなど、いくつかの企業が多言語接客に関するソリューションを提供しています。
また、カスタマーサポートの多言語対応を支援する株式会社Voyaginの多言語カスタマーサポートサービスや、Webサイトの多言語化を支援するワールドインテリジェンスパートナーズジャパン株式会社の多言語Webサイト構築サービスなど、包括的な多言語環境を構築するためのソリューションも多くの企業から提供されています。
電車・鉄道の多言語化・コミュニケーションに関するインバウンド対策事例集
電車・鉄道はどうやってインバウンドにおいて多言語化・コミュニケーション対応に取り組むべきなのでしょうか?「京浜急行電鉄株式会社:翻訳システムを導入し多言語案内をサポート」など、各社・各団体の先行事例を集めてみました。
ソリューションの活用が、インバウンドの課題解決のカギ
訪日外国人が感じている日本滞在における不便には、上記のほかに公衆無線LAN(フリーWi-Fi)に関するものがあります。適切な対策を
インバウンド調査報告書2020ではこれらの課題について一つずつ解説を加えており、各種課題を解決できるソリューション提供事業者も一覧で紹介しています。インバウンド戦略の策定には、最新のインバウンド事情を網羅したインバウンド調査報告書2020をご活用ください。
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本調査報告書について
本調査報告書は「訪日ラボ」が、2018年上期から2019年上期にかけてのインバウンド市場を徹底的に分析することで、2020年上期のインバウンド市場を展望する内容となっております。
本報告書の制作にあたり、観光庁やJNTOなどが提供する公的なデータ、株式会社ナビタイムジャパンからのデータ協力、そして自社メディアにて集積した膨大なデータを基に分析しており、変化の激しいインバウンド業界の方にとって価値のある情報を提供することを目的としています。
構成・各章の概要は以下の通り。
- 第1章「市場全体データから分析するインバウンドの現在」
- 訪日者数や消費金額総額等のマクロデータに加え、業界を支える事業者へのアンケートも交え、インバウンドの現在の趨勢についてまとめています。
- 第2章「都道府県別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
- 全国47都道府県を9エリアに分け、県別に各種の公的データを集計。また、NAVITIME提供のインバウンドGPSデータによる宿泊者数や移動データも収録し、外国人訪問者の動向と消費の詳細が分かるデータとしてまとめています。
- 第3章「国・地域別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
- 政府の指定する重点市場20か国について各種データを集計し、各国の訪問動向と消費内訳をまとめています。どの月にどの県へ訪問、宿泊がなされ、なにを期待して訪日したのか。またどの品目により多くの消費がなされたのか。次にインバウンド対策として打つべき手についてデータを分析しています。
- 第4章「業界別インバウンド市場ニュースと事例」
- 2019年1月-6月期において訪日ラボの人気記事を業界ごとにリストアップし、それらをPVの大きかった順に並べ、キーワードを抽出しています。メーカー、交通、宿泊、小売、そして地方自治体のニュースの記事が注目を集め、話題となったのか。業界ごとに分析・解説しています。
- 第5章「インバウンド対策ソリューション企業一覧」
- インバウンド向けに受け入れ対応したい・プロモーションしたい事業者をサポートする、インバウンド対策サービスをまとめ、リストアップしています。
書籍情報
書名:インバウンド調査報告書2020[2019年上期のデータから2020年上期を展望する]
著者:訪日ラボ
発行所:株式会社インプレス
発売日:2019年12月24日(火)
価格:CD(PDF)版、ダウンロード版90,000円(税別)CD(PDF)+冊子版100,000円(税別)
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短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
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【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか
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