【中国】もう終息?新型コロナで停滞した経済活動の活性化急ぐ:中国政府指導の取り組みとは?

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WHO(世界保健機関)は、3月12日に会見で新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を「パンデミック」に該当すると宣言しました。

それを受け、アメリカのトランプ大統領はイギリスを除くヨーロッパからの入国を禁止するなど緊張状態が続いています。

一方で中国では新型コロナウイルスの感染増加の勢いがおさまり始めています。それに伴い、中国の経済活動も徐々に活性化の動きを見せ始めました。

今回は、中国の経済活動の回復の兆しと、それを支える中国政府の対策、中国国内の外資系企業の回復状況についてお伝えします。

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新型コロナウイルス感染が終息の兆し、徐々に経済活動が活性化

世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大し、イタリアの医療体制が崩壊するなど一部報道がされ、アメリカはイギリス以外のヨーロッパからの入国を全面禁止しました。

そんな中、新型コロナウイルスの感染源地と考えられている中国では、これまでの感染拡大防止策が効果を示し2月にはいると新規の感染者や既存の感染者数が減少しています。

中国「予防と抑制の状況は持続的によくなっている」

中国には今回の新型コロナウイルスのように、突発的緊急事態に対応するための「国家公共突発事態総合緊急対応策(マニュアル)」があります。

このマニュアルは、さまざまな緊急事態発生が発生した際に活用され、事態の緊急度のレベル分け、対応策の枠組み、体系を明確にし、国務院の組織体系、活動体制などの内容が規定され、各種の突発的事態の予防と処置を指導する規範的文書です。

マニュアルでは新型コロナウイルスの感染のような疫病などの公共衛生に関する突発事件を、「1級(特に重大)」、「2級(重大)」、「3級(比較的重大)」、「4級(一般)」の4段階に分類しています。

1月29日以降、中国全土で1級の緊急対応が取られていましたが、2月21日以降、2月28日時点までに甘粛省、広東省、江蘇省、四川省など17の省・自治区において緊急対応レベルを1級から2級か3級に引き下げることが発表されました。

3月4日、習近平国家主席は新型コロナウイルスの感染拡大について

予防と抑制の状況は持続的に良くなっている

と表明しました。湖北省武漢市では厳しい状況が続いているものの、同省以外ではほぼ終息してきていると強調しています。

3月9日に開いた会見で世界保健機関(WHO)は、中国で報告された80,000件の症例のうち、70%以上が回復していると発表しました。

習近平国家主席は

良好な状況を拡大させ、経済、社会の発展を早期に正常な軌道に戻さなければならない

と述べ、経済活動再開を加速させる姿勢を示しました。

経済活動活発化の動き

新型コロナウイルス感染拡大の鎮静化に伴い、大規模な移動制限が緩和されつつあります。交通運輸部は2月27日、国務院が定めたリスク分類に基づき、道路旅客輸送、公共交通機関、タクシーによる人の移動に関して、高リスク地域を除く地域間の移動を妨げることを禁止しています。

さらに中国国内の企業では操業再開の動きが出ており、四川省では2月18日までに、省内企業の操業再開率が国有企業で85.8%に達しました。

一方で民間企業の操業再開率は2月19日時点で20.1%にとどまっており、再開に必要な防疫物資の不足や、従業員の移動制限などによる人員不足、物流制限による原材料の調達難、需要の減退などが理由として考えられています。

製造を再開した中国の航空機メーカー大手である中国商用飛機(COMAC)上海飛機製造の工場には熱気があふれ、感染対策を講じながらモデル機の研究開発と製造を進めています。

経済活性化対策

2月23日、習近平国家主席は、新型コロナウイルス関する重要会議で

感染防止の非重点地域では企業の稼働再開を後押しする

と語り、新型コロナウイルス感染の状況下でも、経済成長などの目標を実現する姿勢を強調しました。

中国の生産拠点の多くは出稼ぎ労働者に労働力を依存しており、春節休暇で故郷の農村などに帰っていた出稼ぎ労働者のうち、3月7日までに都市部の仕事場に復帰したのは全体の60%とされています。

中国証券大手である華泰証券の推計データでも、2月10日時点の23.9%よりも上昇しているものの、3月8日時点で63.8%となっています。各省は、奨励金の積み増しや交通費の肩代わりなどの対策を打ち出して、早期復帰を促しています。

移動サポート

中国でもっとも経済規模が大きく、労働者不足が深刻な広東省は、地方から同一地域に戻る労働者を記録管理し、チャーターバスや電車で一括輸送する移送サービス「一車一方案」を推進しました。

感染拡大防止を推進しつつ、出稼ぎ労働者の職場復帰を支援し、2月26日までに7万1,292人もの労働者が広東省へと戻りました。

奨励金アップや交通費の肩代わり

河南省トップの王国生・同省共産党委員会書記は、2月25日にiPhoneの組み立てを行う世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業の工場を視察し、工場の稼働再開を強く指示しました。同工場は10万人以上の出稼ぎ労働者を抱えるも、春節休暇から復帰したのは3万人以下にとどまっていました。

鴻海(ホンハイ)は、早期に復帰した従業員への奨励金を3,000元(約5万円)から5,250元へ約1.8倍に引き上げるほか、初めて就職する出稼ぎ労働者に7,000元を支払うなどの対策を打ち出しました。

さらに鄭州市政府は鴻海(ホンハイ)の工場再稼働を支援するため、市内の農村部から工場に1万2,000人の出稼ぎ労働者を送り込むこととしました。地元の公安当局でも、農村から工場までの移動バスや、宿舎から工場への通勤バスの優先通行を支援するなどの対策を打ち出しています。

中国国内の外資系企業の回復状況

中国に進出する外資系企業でも、感染対策を念頭に置きつつ、企業活動の再開が進められています。

外資系企業の稼働状況

2月21日、中国の商務部は山東省内の韓国系自動車部品企業32社が、15日前に全て再開したことを発表しました。一部の外資企業では中国製造の部品不足により、生産の継続が困難となっていたため、世界の自動車企業にとっては朗報といえるでしょう。

上海省、山東省、湖南省などの重点外資企業の再開率は80%を超えており、中でも米・電気自動車大手テスラは2月10日にいち早く経営を再開しました。約2,500人が働く工場では、マスクやゴーグルなどの防疫物資を十分に準備し、作業エリアは消毒を行うなど感染対策を徹底しています。

2月24日には、トヨタ自動車も中国にある4つの完成車工場のうち、稼働が見送られていた四川省の工場の稼働を再開しました。これでトヨタの中国国内にある完成車工場すべてで稼働が再開されたことになります。

フル稼働は1割以下

まだフル稼働に至らない外資系企業も多くあります。

公益社団法人 静岡国際経済振興会(SIBA・シーバ)と静岡県日中友好協議会は、静岡県内に企業拠点をおく事業者に対し、中国にある工場の稼働状況に関するアンケートを2月18~28日に行い、109社(製造業87社、非製造業22社)が返答しました。

アンケートによれば、8割以上の工場で操業が再開されるも、フル稼働はこのうち1割にも満たないことが分かりました。理由としては「従業員が戻らない」が最多の55.2%、「必要な部品・商品が入ってこない」「発注が減少している」が32.8%となっており、人の移動や物流、需要の問題が妨げになっていることがうかがえます。

正常稼働に向かうも、感染拡大の懸念は残る

政府の強力な支援もあり、3月中には出稼ぎ労働者の多くが都市部の職場に復帰し、自動車産業など多くの産業で稼働率が正常化されるとみられます。しかし新型コロナウイルスの終息宣言はいまだ出されておらず、人の移動により再び感染が広がるリスクもはらんでいます。

さらに新型コロナウイルスの感染拡大によって、中国に生産ラインを依存していた事実とそのリスクが浮き彫りとなりました。もともと中国人の人件費高騰や米中貿易戦争の激化などで工場や部材・商品の調達先を中国から他のアジア諸国へ移す傾向がありました。

新型コロナウイルスの感染が拡大が、製造拠点の変更を押し進める可能性があります。

また中国依存は製造業だけでなく観光業でも同様で、訪日中国人観光客の激減で多くの観光事業者が厳しい状況に立たされています。そのため、今後は欧米豪や東南アジアなどの市場へアプローチが増加すると予想されます。

中国政府は経済活性化を目指しつつも、経済の活発化によって再び感染が拡大するのではないかという懸念や、今まで中国が世界市場で築き上げてきた優位性が脅かされるなど、中国政府は難しいかじ取りを迫られています。

<参考>

JETRO:新型コロナウイルスは中国で感染終息の兆し、地域リスク分類で国内移動制限を緩和

JETRO:四川省、新型コロナウイルス流行下の企業の活動再開状況が明らかに

JETRO:17省・自治区が緊急対応レベルを引き下げ、学校再開時期は未定

AFP BB NEWS:国産旅客機 従業員の職場復帰で製造再開 中国

47news:中国は湖北省以外、ほぼ終息か 習主席「状況良い」と強調

日本経済新聞:中国官民、工場再開急ぐ 奨励金で労働者集め

静岡新聞: フル稼働「未定」過半数 中国拠点「従業員が戻らない」

東方新報:中国の外資企業、続々と経営再開 世界の供給連鎖の安定に貢献

読売新聞:中国の完成車工場、全て稼働再開…トヨタ

日本経済新聞:中国企業、生産回復なお途上 車の稼働率は3割どまり

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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