新型コロナウイルスの感染拡大とともに、世界各地に広がっているのがアジア人差別です。
意図的なものだけでなく、自覚のない差別的言動や行動、侮辱的なコメント、暴力など、さまざまな形でアジア人への差別が見受けられるようになりました。
今回は、世界各地における新型コロナウイルスに関連したアジア人差別の実態をふまえ、日本での中国人に対する対応について解説します。
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コロナウイルスでアジア人差別
中国の武漢で初めて感染が確認された新型コロナウイルスですが、現在は南極大陸を除く全ての大陸にまで拡大しています。
感染拡大とともに、アジア人への差別が世界各地で発生しているのも事実です。
アメリカのニューヨークでは、地下鉄の車内でアジア人が咳払いをしただけで視線を向け遠くの席へ移るといった事例や、駅で男がマスクをつけたアジア系の女性に暴行を加える事件などが発生しています。
カナダのオンタリオ州では、アジア系の同級生が新型コロナウイルスに感染していないか検査をするゲームを考える子どもたちがいたとしています。
オーストラリアのメルボルンでは、ある病院で一部の親がアジア系の医師に子どもの治療をさせることを拒否しました。
相次ぐアジア人差別の現状を受け、フランスでは「#JeNeSuisPasUnVirus」(わたしはウイルスではない)、スペインでも同様の意味の「#NoSoyUnVirus」というハッシュタグが生まれ、SNSに投稿されました。
「ハローコロナ」→「私は中国人じゃないです」→「いや、中国人もコロナじゃない」
世界各地に広がりを見せるアジア人差別ですが、差別の標的に含まれている日本人もまた、自身の苦い思いを相手に投影できず、中国人を差別するような行動も見られています。
Twitterでは、日本人と思わしき女性が、欧州で「ハローコロナ」と声をかけられたことについて憤りを表明し、「私は中国人ではない」との反論を展開しています。
「ハローコロナ」と声をかけた人物の、人種をウイルスとみなすかのような発言は差別的であり、非難されるべきでしょう。
しかしその発言を受けて「私は中国人でないから差別するな」という言い方は、「中国人であればコロナウイルスとみなされてもかまわない」という思考をベースにしており、これもまた差別的発言であると言わざるを得ないでしょう。
実際にSNS上では、日本国内での中国人を明らかに避けようとする行為や、電車内でじっとにらむといった行動が報告されています。
Twitter:中国人差別を見た人の投稿(https://twitter.com/takuichiroyama/status/1231296263523450880)
2月17日には香川県内の公立小学校に「中国人を親に持つ子どもを登校させるな」という内容のはがきが届きました。
これまで中国人を差別する内容のはがきが届いたことはなかったということで、新型コロナウイルスに関連した動きなのではないかと指摘されています。
海外に散らばる中国人
欧米だけでなく東南アジアでも、日本人を中国人とみなして話しかけてくる人は少なくありません。
「ニイハオ」と言われるのは、その地域にいる中国人の絶対数が影響しているのかもしれません。
2019年2月に中国の公的機関である文化旅行部が発表した中国人の海外旅行者数は、約1億5,000万人にものぼりました。
旅行者として訪れる中国人だけでなく、居住者の中国人コミュニティも世界各地にできあがっています。
より良い生活をするために中国人が海外へ出た後、家族や親戚、友人を呼び寄せて生活するといったケースは古くから顕著に見られます。
海外に散らばる中国人の絶対数が多いことから、「アジア人=中国人」という見方は、ある程度仕方がないことなのかもしれません。
【中国】年間1.5億人が海外旅行、最新トレンド「深度遊」とは?ニーズが「爆買い」→「体験・学び」に大変化
こんにちは、クロスシー編集部です。 中国での「海外旅行」ブームについてはこれまで何度か紹介してきましたが、今年も中国人が一年で最も日本に来る「夏」がやってきます。 昨年の中国人の海外旅行動向と、今年の夏の旅行傾向について、「
見た目ではなく「どこから来たのか」で判断するしかない
日本からの渡航者に入国制限を実施しているのは、3月12日午前7時の時点で、中国や韓国、インドなど29の国と地域です。
また、アメリカは11日、水際対策の強化として、ヨーロッパからの入国を30日間停止させることを明らかにしました。
今後も各国でさらに人の行き来に制限が出る可能性が予想されます。
訪日中国人観光客が激減した日本ですが、日本には観光客だけでなく定住する中国人も非常に多くなっています。
こうした人に対して、見た目や話す言語だけで「大陸から来た感染リスクの高い人」と判断するのは誤りでしょう。
国際化の進展により、国籍や見た目では疫学的リスクやアイデンティティを判断できない状況は今後もさらに広がっていくでしょう。
「中国人だから」「中国語を話しているから」という理由だけで、安易にその他の属性を断じるような姿勢はとるべきではありません。
また、どんな理由であっても、特定の集団や属性をもってウイルスの保菌者であるとするような扱いは、今回の新型コロナウイルスに限らず当然ゆるされるものではありません。
WHOによるウイルスに対する命名には、風評被害を避けるため、動物や特定の集団などと関連付けないような配慮がなされています。
こうした国際機構の指針の意味するところを、日常でもしっかりと意識するべきでしょう。
<参照資料>
・BUSINESS INSIDER:同僚も被害に......新型コロナウイルスの感染拡大とともに広まる"アジア系"に対する人種差別と外国人嫌悪
・HUFFPOST:「ニューヨークでは違法です」市長が、新型コロナウイルスによるアジア系アメリカ人への差別に反対を表明
・NHK NEWS WEB:香川県内の小学校 中国人を差別する内容のはがき届く
・NHK NEWS WEB:日本からの渡航者に入国制限 29の国と地域 行動制限は70
・NHK NEWS WEB:米大統領"入国停止や大規模支援策"も影響収まる気配なく
・Searchina:中国人が海外でチャイナタウンを作り、日本人が日本人街を作らない理由=中国メディア
・日本経済新聞:新型肺炎「複数国で日本から出張拒否」日本貿易会会長
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