2017年に「世界で一番幸福」のデンマークが、こんな宣言を出しました。
”THE KING IS DEAD! WONDERFUL COPENHAGEN CONCLUDES THE END OF THE ARE OF TOURISM, AS WE KNOW IT.”
「王は死んだ!ワンダフルコペンハーゲンは観光都市の終わりを宣言する。ご存じのとおりにね」
これは、2017年にコペンハーゲンから公布された観光戦略に関する白書に書かれてあります。
「世界で一番幸福な国」として名高い北欧の国、デンマークで発表されたこんな大胆な観光戦略は、日本も真似できる「ツーリズムイノベーション」となるのでしょうか。
これからの日本の観光業の未来を考えるための事例としてご紹介します。
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「観光の終わり」を宣言した、デンマークの首都コペンハーゲン
デンマークの人口は日本と比べ20分の1ほどで、首都コペンハーゲン地域の居住者も63万人(2018年・東京、約1,383万人)と、コンパクトな国です。
北欧雑貨や北欧デザインに魅了されている層には認知度の高い国ですが、多くの人にとって「ここ!」と国の位置を地図で指し示せるかというとそんなことはないでしょう。
デンマークは、ドイツの北側に位置し、スウェーデンとノルウェーの南に位置しています。首都コペンハーゲンからは、橋でスウェーデンに渡ることもできます。
Twitter:デンマークの位置を説明する投稿(https://twitter.com/anderspreben/status/1210564273660928000)
国連統計による外国人旅行客数(受入数)は、2018年時点で1,200万人となっています。
同年3,119万人の日本には及ばないものの、国の大きさを考えれば、インバウンド観光業界における取組は比較的成功していると考えられます。
キーワード・LOCALHOOD FOR EVERYONE
そんなデンマークの首都コペンハーゲン は、「共創・共栄」ならぬ「LOCALHOOD」というキーワードと、新たな観光戦略を打ち出しました。
それも「観光地から脱却する」と宣言をしているのです。
同サイトには、「LOCALHOOD」についての思いが書かれています。
以下2点が特に大切なポイントです。
- 現地住民と旅行者は単なる「共存者」としてではなく、「共栄者」として経験をシェアしていくことを目指す
- これからの新しい観光業の始まりとして「LOCALHOOD」の精神をもち、市場や地域の「現在・未来のステークホルダー」たちが責任をもち、業界を成長させていく
今までの観光業に敬意を称しながらも、新たなカタチの観光業を「旅行者」と共に作ろうとしていることがわかります。
今までとは「ひと味違う」これからの5つの観光テーマ
コペンハーゲン観光組織は、新戦略にあわせて「5つのテーマ」も発表しました。
1. Shareability is king(共有こそすべて)
Shareableの造語でもある「Shareability」は、「共有できる状態になっていること」の意味です。共有先は、インターネットを利用したサービスが想定されています。
いまだかつてないほどにSNSはじめとしたソーシャルメディアの活用が進み、その重要性が増してきています。
コペンハーゲンも一つの都市として、多くのインバウンドがSNS等で情報を共有しやすいよう努力すると宣言しました。
2. Once attracted, twice valued(一度のみならず二度目も)
観光資源の限られているコペンハーゲンが目指す、効率化の形です。
もっと旅を楽しんでもらい、長く滞在してもらいたい、そんな目標のもとコペンハーゲンはインバウンドのインサイトを分析し、観光におけるウィークポイントをあぶり出す努力を惜しまない姿勢を打ち出しています。
旅行者の満足度を高めるだけでなく、再度訪れたくなる気持ちにさせないといけません。そんな「Re-visit(再訪)」を重視するとしています。
3. Tomorrow’s business today(成長市場からの誘引)
世界中で「海外旅行」が促進されている中、コペンハーゲンも魅力のある訪問都市として位置付いていなければならないと考え、特に経済成長目まぐるしい国からのインバウンド誘致を目指すとしています。
4. Co-innovation at heart(共創も忘れずに)
共有されたアイディアや、共存・共栄の時間の中から「WIN-WIN」のビジネスのチャンスが訪れることもあります。
新しい企業やスタートアップの誘致も積極的に行い、デンマークのビジネス目標も効率よく達成させられるようにと考えています。
5. People-based growth(皆がハッピーになる繁栄を)
観光は、デンマークを訪れるインバウンドの数が増えれば「成功」という訳ではありません。
インバウンドを含む旅行者が体験するその「場・雰囲気」を作っているのは居住者です。
こうした人々が幸せでいなければ、観光業の発展はその意義を半分失っているといえるでしょう。
コペンハーゲンの観光目標は、片一方に寄らない「WIN-WIN」のカタチを目指しています。
まとめ
「LOCALHOOD」というキーワードに基づくコペンハーゲンの観光戦略は、観光地を作り出すのではなく「現地の生活者も含むそのままの姿」を観光資源と捉えたものです。
さらに、その魅力を向上させるこんなニュースも先日流れてきました。
Twitter:コペンハーゲンで無料の果物狩りが楽しめるようになることを伝える投稿(https://twitter.com/DenmarkinCanada/status/1225505013545492481)
このニュースでは、コペンハーゲンの公共の場でのフルーツ狩りを「合法化」する意向であることが伝えられています。
自身で摘んだものに限りますが、もちろん無料です。
この計画が実行された暁には、旅行者も「コペンハーゲンらしさ」をより体験できる様になり、「LOCALHOOD」のコンセプトに基づいた観光環境が作られていくはずです。
このような大きな流れは往々にして個人や一企業の力で作り出すことは難しい場合も多いですが、今回ご紹介の内容は、公的機関の協力があればより魅力的なコンテンツやブランディングができるという好例ともいえます。
新たに観光地を「作る」のではなくそのままの自分を売りにしたコペンハーゲンの独自の視点を学び、今後のインバウンド戦略に役立てていくべきでしょう。
<参照資料>
Wonderful Copenhagen:The End Of Tourism
ECOZZERIA:【Inside/Outside】観光の終焉を宣言したコペンハーゲンの歩き方
The Local:Why you'll soon be able to pick fruit for free in Copenhagen
東京都:「東京都の人口(推計)」の概要(平成30年8月1日現在)
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