新型コロナ流行から考える、インバウンド業界の「非常時」との向き合い方

公開日:2020年03月23日

いよいよ東京オリンピックの開催が迫った今年は、日本政府にとっても、民間のインバウンド関連事業者にとっても大きな節目の年といえるでしょう。

そうした折に、新型コロナウイルス(COVID−19)が今年1月頃から突如として流行し、今も世界各国でその対応に追われています。例年、インバウンド関連事業者にとって新年最初の「書き入れ時」だった中国の春節は、去年までの盛り上がりを見せることはありませんでした。

インバウンド業界にとって「非常時」ともいえる今、インバウンド関連事業者はどのようにこの非常時と向き合えばよいのでしょうか。

新型コロナウイルスの流行でインバウンド業界が打撃を受けている今こそ、本質に立ち返る必要性があります。

今回は、各々が考えるべき「非常時」との向き合い方についてお話したいと思います。

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新型コロナウイルス流行による、企業対応の現場

新型コロナウイルスが流行している中、インバウンド市場と密接な繋がりを持つ大手企業の担当者は今なにを考え、どのように向き合っているのでしょうか。

今回は、日本のインバウンド業界において大きな影響力を持つ中国市場にフォーカスを当て、解説したいと思います。

大手ドラッグストア店のマーケティング担当者は、訪日中国人の客足が遠のいていることに対しては冷静に受け止めていました。

現状を把握した上で、今のタイミングで中国人に対して来店を促進させるような施策は効果が薄いと考え、「訪日中国人」だけでなく「在日中国人」へ目を向けた施策を考えています。また、事態が終息したあとを見越した受け入れ対策の整備やブランド認知に注力しています。

中国に限らず、欧米豪を含めた各国が渡航制限を敢行していますが、春節に旅行に行けなかった中国人は特に「行きたくてもいけない」状態が続いています。

この時中国人は、「事態が終息したらどこへ行こう」と情報収集をする心理が働くのではないでしょうか。そうした動きに合わせた、旅マエの情報発信が有効といえるでしょう。

また、弊社と取引のある大手小売店では、予定していたKOLのプロモーション施策を本来2月中に行う予定でしたが、時期を再検討する動きをとっています。

KOLのようなインフルエンサーを用いた施策は、訪日中国人の集客に主眼を置いた施策であるともいえます。そのため、先述したドラッグストアの例と同じく、中国人の渡航が制限されている今のタイミングでの実行は避けた格好といえます。

また、起用するインフルエンサー「日本在住のKOLに切り替える動きをとっています。これは、今海外渡航が制限されている中国で、中国現地のKOLをアサインすることはできないためです。

日本在住のKOLが日本の魅力を発信することは、「落ち着いたら日本へ行きたい」という気持ちを後押しするだけでなく、日本在住の目線から情報発信することで、「日本は安全」というメッセージを発信する効果も期待できます。日本在住のKOLを起用することはやむをえない事情もありますが、こうした効果が期待できることも認識しておくべきでしょう。

業界全体が苦しい局面。今持つべき長期的視点とは

新型コロナウイルスの流行だけでなく、昨年からの市場の動きを踏まえても、インバウンド業界は現在厳しい局面に立たされているといえます。

2019年7月頃から、日本による韓国への輸出厳格化措置に反発するため、韓国で日本製品不買運動が起きています。いわゆる「ボイコット・ジャパン」といわれる動きです。

また、今年は記録的な暖冬が続いており、百貨店などの商業施設における国内の冬物の売れ行きも低調気味でした。さらに、一部のスキー場は結果として満足のいく営業ができず、ウインタースポーツ目的の訪日外国人の取り込みができませんでした。

インバウンドにおける消費では、昨年7月からの韓国市場を皮切りに、新型コロナウイルスによって中国市場、欧米豪市場までが縮小しています。こうした市場の激動に直面し、年度の予算の再編を迫られているマーケティング担当者もいるかもしれません。

こうした状況を受けて、インバウンド対策予算を減らすという判断は得策ではないと考えています。インバウンド対策予算自体は減らさず、ターゲット市場の再設定と適切な予算配分を再検討すべきでしょう。

いまだ終息の目処は経っていないとはいえ、新型コロナウイルスの流行は、インバウンド業界全体の展望とは切り分けて考えるべきです。

なぜなら、長期的な視点で考えれば、今後国内の人口が減少していく日本経済にとって、インバウンド需要の取り込みは重要な課題であることにはかわらないためです。

そうであるならば、インバウンド対策への予算を減らし、国内の施策に回したところで、レッドオーシャンに予算をつぎ込んでしまうようなものです。

したがって、予算の執行のタイミングや想定するターゲットを再考する必要はあれど、インバウンド対策への手を緩めることは賢明ではないでしょう。

韓国が「ボイコット・ジャパン」しきれない4つの事情:浸透する日本製品、あらがえない日本旅行の魅力

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「正しく理解」し、「正しく恐れる」こと

最近、毎日のように新型コロナウイルスの最新情報が更新され、各国・各地域の対応をめぐる会見の様子がセンセーショナルに報道されているのをよく目にします。そして、新型コロナウイルスの感染者数や死者数は目まぐるしく変化しており、恐怖を感じることもあるでしょう。

一方で、人間はストーリーや印象に流されやすい生き物であることも認識しておくべきです。客観的なデータを基に、状況を「正しく理解し、正しく恐れる」ことが大切だと思うと同時に、その難しさも感じています。

現代では、情報はその真偽に関わらず瞬時に拡散されます。その結果、信頼できる情報が見つけにくくなってしまう現象を「インフォデミック」といいます。

新型コロナウイルスに関する日本政府の発表は、厚生労働省のWEBサイトから常に最新かつ正しい情報を確認することができます。

また、観光庁では訪日外国人旅行者の健康確保や感染拡大への対策として、訪日外国人旅行者向けのコールセンターを設置しています。

各国の感染状況や日本政府の対応には引き続き注視すべきですが、必要以上に恐れる必要はありません。

【新型コロナ】デマに振り回される人そうでない人の違い:過剰反応や過剰萎縮はデメリットだらけ

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認知拡大の一手では限界も。本当のファンをつくる必要性

インバウンド対策のあり方を見直す中で、本質的に考えるべきことの一つが「日本のファンを増やすこと」です。

施策は様々ありますが、インフルエンサーマーケティングのようなスポット的な集客ではなく、「蓄積型」の施策...つまり、自社の(ひいては日本全体の)固定ファンを増やす施策こそが重要なのです。

「双方向型のコミュニケーション」の充実が本当のファンづくりにつながる

新型コロナウイルスの現状を踏まえて、もし、FacebookやWeibo等のSNS運用を既に行っているのであれば、今こそフォロワー(ファン)の方とのコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。

単に広告を活用したファンの増加ではなく、今いるフォロワーの方との「双方向型のコミュニケーション」を充実させることが重要だと考えています。

つまり、施策の自粛という選択を取るのではなく、積極的なコミュニケーションにより今のフォロワーの方に会社、ブランド、商品に対してロイヤリティーを高めていくべきだと考えます。

このとき、一度サービスを利用した人だけでなく、まだ利用したことがない潜在的な顧客層に対しても「こんな対応をしてくれるところにいきたい」と思わせるようなコミュニケーションを意識したいところです。これは、一度の配信に巨額の予算がかかるインフルエンサーを通じた情報発信だけでは難しいことでもあります。

企業が直接消費者のあらゆる質問や要望、時にはお叱りに対してもきめ細やかに対応する姿勢は、そのやりとりを見た他の大勢の潜在顧客にもポジティブな影響をもたらします。

こうした真心を持った対応は、特に新型コロナウイルスの流行で緊張感が漂う昨今には、一層人々の心を打つ出来事として広く影響を与えるのではないでしょうか。

とはいえ、企業によってそれぞれ置かれている状況が異なるため、具体的な施策に落としていくことは容易ではありません。

ターゲット市場の再選定や、新型コロナウイルス影響下でのインバウンド対策でもしわからないことあれば、訪日ラボまでお問合せください。

まとめ

新型コロナウイルスの流行によって、今年の日本のインバウンド業界は、順調と思われた成長にくさびを打ち込まれたようにもみえるかもしれません。

インバウンド業界は、外部的な要因の変化にしばしば影響を受けやすい業界です。その変化といかにうまく付き合っていくかが、インバウンド市場で持続的な発展を遂げるための重要な要素の一つです。

だからこそ、インバウンド対策もその本質を見誤らないことが肝要です。

今回はインバウンド担当者が新型コロナウイルスの影響にどう向き合っていくべきかについてお話ししました。次回は、インバウンド業界をマクロで分析することの重要性についてお話します。

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訪日ラボ編集部

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