東京オリンピックに山積する課題:交通、治安、環境、経済...開催期間中から終了後まで予想

公開日:2020年03月23日

東京オリンピック・パラリンピックを目前にして、オリンピック特需による経済効果を期待する声や、スポーツによる国民の一体感の高まりなど、ポジティブな影響がたくさん表れています。

しかし一方で、首都東京で開催されることによる様々な社会問題が指摘されているのも事実です。ボランティア問題、交通への影響、会場周辺の治安、環境配慮、競技時期の暑さなど、多方面においてクリアすべき問題が山積みです。

今回の記事では、2012年ロンドンオリンピックや2016年リオオリンピックでの例についても触れながら、東京2020オリンピックが現在抱えている問題について、一つ一つ触れていきます。


東京オリンピック期間前から期間後までに考えられる社会問題

オリンピック・パラリンピックを東京で開催するにあたり懸念されている社会問題の中で、大会期間中の交通混雑、猛暑、治安の悪化がよく話題として挙がります。

この項目では、いくつかの問題について詳しく解説します。

交通混雑(大会期間中)

東京は、世界的な大都市であり、平日休日問わず多くの人が行き交います。平日朝の通勤ラッシュ時の満員電車はすでに社会問題として取り上げられることが多いにも関わらず、オリンピック・パラリンピック時には現状からさらに乗車人数が増えるという予想がされています。

大会開催期間中には海外選手・スタッフ・ボランティアや観光客などを含め、延べ一千万人が東京を訪れることが見込まれているためです。

具体的に電車においては、新宿駅は通常の2倍・四ツ谷や新木場は3倍もの乗客に溢れ、多くの路線で混雑率が200%になるとの予想がなされています。テレワークなど、通勤せずに働くよう各企業に働きかけてはいますが、簡単に勤務形態を変更できない業界もあります。

政府としては、このオリンピック・パラリンピックの機会に「働き方改革」をレガシーにつなげたいと考えています。

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猛暑下での競技運営(大会期間中)

東京で夏を過ごしたことがある人なら、その暑さがかなりきついものであることは自明です。暑さが原因となり、アスリートのパフォーマンスが落ちる可能性も考えられ、心配の声が上がっています。

また、オリンピック・パラリンピックの運営スタッフはボランティアでまかなわれる部分が大きく、「酷暑の中でただ働き」という点において、倫理的な批判も集まっています。天候は無理に変えられないとしても、暑さに対する対策が十分に行われているとはいえない状況にあります。

治安の悪化(大会期間中)

昨今の世界的なイベントや要人をターゲットにしたテロの多発により、東京オリンピック・パラリンピック開催期間中にもテロへの対策が必要とされています。オリンピック・パラリンピックの機会を通して、政治的イデオロギーの主張を行おうとする人々や、それに関連した暴力行為、もしくはテロなどの危険性も高まります。

また、テロへの警戒のみではなく、お祭り騒ぎのようになってしまい繁華街などの治安が悪化することも懸念されています。実際、2019年に開催されたラグビーワールドカップでも酒に酔った人による暴行騒ぎもあったことが報告されています。

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環境への配慮(大会前~後)

近年の五輪において、「環境配慮」と「持続可能性」は重要なテーマとして扱われてきました。東京オリンピック・パラリンピックでは、「環境を優先する2020年東京大会」を理念として掲げ、大会前、期間中、大会後の環境配慮を表明していました。

特に、会場の建設に関しては、1964年に開催された東京五輪の会場を含む既存施設を活用しています。さらに、選手村から半径8キロメートルと、近距離にオリンピック競技会場の85%、パラリンピック競技会場の95%を設置することで、「かつてないほどコンパクトな大会」を目指しています。他にも、再生可能エネルギーの導入、低公害、低燃費車の利用なども行われています。

しかし一方で、施設デザインの景観不調和、会場建設による生態系の破壊など、環境配慮を巡る問題はまだまだ残されています。

オリンピック不況(大会終了後~)

オリンピック・パラリンピック開催に際して、大きな経済効果が生まれると同時に、大会終了後の不況について懸念する声も多くあります。オリンピック・パラリンピックのために莫大な費用を投入した自治体が赤字を抱えてしまうことや、大会後には個人の消費活動の減速も考えられます。

実際、東京23区では、オリンピック・パラリンピック後に需要が下落し、オフィスが大量に余る「2020問題」がささやかれています。大会期間中だけでなく、終了後の日本経済までを視野に入れた大会運営が求められています。

過去のオリンピックの状況

このように、多くの問題や不安を抱えながら準備が進められている東京オリンピック・パラリンピックですが、過去に開催された大会はどのような状況だったのかを学ぶことで今大会に活かせると考えます。

この項目では、2012年のロンドンオリンピック、2016年のリオデジャネイロオリンピックについて、紹介します。

2012年 ロンドン五輪

2012年に開催されたロンドンオリンピックでは、「オリンピック史上最も環境に配慮した大会」を目標に掲げ、環境負荷の軽減、生態系保護などに徹底して取り組みました。このロンドンオリンピックは持続可能性を考慮したイベントマネジメントの国際規格「ISO20121」が適応された初のオリンピックです。

競技会場を設置する場所の周囲の土地において、土壌の浄化や大会準備・撤去の過程においても、「廃棄物ゼロ」を目指して様々な工夫が行われました。具体的な工夫としては、既存の施設を活用することや、再生資源を利用し、新しい消費をなるべく抑えるなどです。

また、ロンドンでは大会後の施設の活用にも成功しています。 東京でも問題視されている大会期間中の交通混雑の緩和政策として、自転車専用道路の大幅な整備などもロンドンオリンピックでは取り組まれました。

2016年 リオデジャネイロ五輪

反対に、リオデジャネイロオリンピックでは、大会期間前後の経済効果はあったものの、一時的なものにすぎなかったとされています。

大会施設に関しても、新しく建設された会場の大半が大会後に活用できておらず、資金難と計画性のなさから、文字通り廃墟と化しつつあるという報道もあります。

オリンピックでのメインの競技会場となった「マラカナンスタジアム」に至っては、その電気代や会場運営費を巡り、運営会社、行政、オリンピック主催者の間で問題が発生したことから、現在では閉鎖されて使用できない状態にあります。

このように新設された会場が「負の遺産」となってしまった例は珍しくなく、2004年に開催されたアテネオリンピックがよく例としてあげられます。施設を有効に活用するための工夫、あるいは政策的な取り組みがなされていなかったため、現在は廃墟のようになってしまっているようです。

東京オリンピックの「レガシー」を負の遺産にしないためには

この二つの大会の例を見ても、大会準備期間から、大会後のビジョンを持って問題に取り組むことが重要であるといえます。では、東京大会において「レガシー(未来への遺産)」を引き継ぐためには、何が必要になるのでしょうか。

1964年 東京オリンピックの「レガシー」

1964年に開催された東京オリンピックでは、「東海道新幹線」、「首都高速道路」、「地下鉄日比谷線」など、インフラ整備に関する多くのレガシーが生まれました。また、「カラーTV」が民間に普及したのも、この大会がきっかけでした。このオリンピックをきっかけに「戦後復興」の時代から「高度成長期」への転換がなされ、現在の「経済大国」へ上り詰めるに至りました。

しかし、その裏側で、「公害と環境破壊」が問題になったことや、のちの「バブル崩壊」、「少子高齢化」などもありました。

持続可能なオリンピック・パラリンピックに

では、今大会を具体的に持続可能なオリンピック・パラリンピックにするためには、どのような取り組みが必要になるのかを考えます。

まず、大会に向けて用意された施設や設備への投資を回収するため、ロンドン大会の例のように、大会終了後の競技会場の活用方法を具体的に計画しておくことの必要性が挙げられます。

その他、開催にあたってゴミやCO2排出を抑えること、生態系の保護など、環境負荷を最小限にすることも重要だといえます。

そのためには、一人一人の意識を変える宣伝・啓発が必要となります。

大会中の対策は万全に、大会後のことも視野に

1964年の東京大会でもそうであったように、自転車道路整備やテレワークの普及など、オリンピック・パラリンピックをきっかけに引き継げる可能性のある、物以外の「レガシー」もあります。

大会後にも「レガシー」としてオリンピック・パラリンピックの効果を持続させていくためには、期間前からの綿密な計画と準備が必要といえます。大会開催中に想定される問題への対策はもちろんのこと、大会終了後に反動で経済不況に陥ることがないよう、具体的な想定をすることも重要です。

東京オリンピックのあらゆる社会問題には適切な対策が必要

東京オリンピック・パラリンピックに関連して、いまだに様々な問題があるのは事実です。しかし、大会が滞りなく開催されることは第一条件として、その後の日本経済へのプラスの影響が生まれるよう、広い視野を持った計画が求められています。

また、経済効果だけでなく環境配慮などの視点からも、持続可能な社会を目指すことがオリンピック・パラリンピック運営の重要事項です。

一過性の効果のみに期待するのではなく、このオリンピックが日本をより良い国に押し上げるためのきっかけになるような取り組みが期待されています。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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