新型コロナ感染者数6万人超のスペイン「ロックダウン」の現状:日本が学ぶべき「引きこもり」を楽しみ・楽しませる国民性

公開日:2020年03月30日

3月13日、スペイン政府はコロナウイルスによる非常事態宣言(Estado de Alarma)を発令しました。これによりスペイン国内に住む人々には自由な外出が制限されると同時に、基本的に自宅待機が義務付けられることになりました。

29日の報道では、スペインでは新型コロナウイルスに感染して死亡した人が5,000人を超えており、イタリアに次いで多くなっています。28日夜、サンチェス首相はテレビ演説を行い、感染拡大を目的に、必要最低限の仕事以外での通勤の禁止と外出制限の厳格化について発表しています。

今回の記事ではスペインで現在発令されている外出制限の内容と、それに対する人々の対応を中心にレポートします。

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食料品の買い占め、マスクの需要が急拡大…

非常事態宣言が発令される直前のスペインでは、コロナウイルスの感染者の数が急速に増加し、学校の大半が閉鎖される事態となっていました。

こうした状況で長期間の自宅待機を強いられる可能性が高いことを知った人の多くは、買いだめするためにスーパーマーケットへ駆け込みます。

この時、トイレットペーパー・石鹸類・肉類・パスタ・米・卵・ピザなどの冷凍食品等を求める人の数が急増し、こうした商品は一時期スーパーの棚から姿を消しました。

また、同時にいままで一般の人には需要のなかったマスクを買うために、多くのスペイン人が薬局に並びました。スペイン政府は、マスクは病院関係者や闘病中で抵抗力が弱くなっている人に優先的に配布することを発表しましたが、その後コロナウイルスの感染者数や入院患者数が急増し、事態は悪化してしまいます。

マスクはもちろん、医療従事者用の防護服等がスペイン全土で不足する事態に陥りました。こうした状況に対応するため、ZARAなどの洋服を生産しているスペイン・ガリシアの企業グループは、マスクや医療用防護服を生産するために、通常の洋服の生産を一時的に停止する判断を下しました。

非常事態宣言、そして自宅待機の日々がスタート

こうした状況の中で、3月13日からスペインの人々の自宅待機の日々が始まります。

スペインの外出制限の詳細

現在、スペインで発令されている外出禁止令では「不要不急」の外出が禁じられており、これに違反すると罰金刑となります。例えば、屋外での運動や自転車に乗ること・散歩・友人宅を訪ねることなどは認められていません。

しかし、スーパー・薬局・銀行に行くことや通勤、そして犬の散歩に関しては、例外として外出が認められています。

この外出制限は少なくとも4月12日まで続き、その後延長される可能性もあります。

第7条 人々の移動の自由の制限

警戒期間中は、以下の行為を目的として公道を通行することができます

  1. 食品、医薬品、基本的必需品の取得
  2. 保健センター、サービスおよび施設への支援
  3. 仕事や専門的な活動、事業活動を遂行するために職場に出向くこと。
  4. 定住地に戻ること。
  5. 高齢者、未成年者、被扶養者、障害者または特に弱い立場にある者への援助および介護。
  6. 金融機関や保険会社への出張。
  7. 不可抗力または必要な状況によるもの。
  8. 障害者の同伴またはその他の正当な理由がある場合を除き、個別に行われる同様の性質の活動。

街の変化

また、こうした状況の中、街中のスーパーなどでもコロナウイルス感染を防ぐために具体的な対策が取られるようになりました。

例えばスーパーでは、買い物客は入り口でビニールの手袋を身に着け、同時に店内では他の人と1.5m 以上の距離を保つ必要があります。

また、小さなスペースの銀行や郵便局では、建物の中に入ることができる買い物客の人数が制限されており、そのほかの人は列を作って屋外で順番を待つことになります。

ちなみに現在、スーパーや市場などの品ぞろえは通常通りであり特に不足しているものはありません。しかし電気製品やおもちゃ等も販売している郊外の大型スーパーでは、購入できるのは食料品だけになっています。

また、バル・レストラン・劇場・映画館・スポーツ施設等は営業を見合わせているところがほとんどです。

一方、スペイン政府が非常事態宣言を出したため、街の中で警察官や軍隊の姿をいつもより頻繁に目にします。マドリードやバルセロナのような大都市では、買い物などに行くと警察官や軍隊が外出の理由を確認することもありますが、それ以外の小規模な都市部では特に質問されることもありません。しかし、日に日に街を歩く人の数は少なくなっているのが現状です。

公共サービスの状況

スペインの 公共交通機関(列車・バス・地下鉄等)は、間引き運転で運行されている場所がほとんどです。

郵便局や銀行は、当初は建物の中に入る人を制限することでコロナウイルス感染を防ぐ対応をしていました。しかし、3月25日からは各都市で最も大きな支店のみが営業するという方式に変更になりました。銀行のATMは問題なく利用できます。営業時間はいずれも、通常より短くなっています。

また、スペイン全土の幼稚園・小学校・中学校・高校・大学はすべて閉鎖されています。

マドリードにある在スペイン日本大使館も開館時間が10:30 ~12:30に変更されており、各種手続きは事前に日本大使館に電話して予約を取る必要があります。

市民の反応

前述のとおり、スペインに住む人の中には外出禁止令が発令される直前に、多量の物資を買いだめした人もいました。しかし、外出禁止発令後のスーパーの品ぞろえがいつもと変りないことが分かったため、今は買いだめする人の数も少なくなっています。

スペイン人もウイルスに感染することを非常に恐れているため、政府が発表した外出禁止令を守って必要最小限の外出にするように心がけています。

また、今まで使用に積極的でなかったマスクをして街を歩くスペイン人の姿も、珍しいものではなくなりつつあります。

一方で、不要不急の外出をしたために警察に逮捕されたり、罰金を払う羽目になる人の話は後を絶ちません。状況把握の程度に差があるのか、経済的困窮などの抜き差しならない事情があるのかは伝えられていません。

スペイン=気晴らしの上手な国民性?発揮されたクリエイティビティ

すでに20日近くになる外出禁止令で、自宅待機中の人々のストレスが高まっているのも事実です。

とはいえ、大半の人々は、ウイルスの感染拡大を防ぐために必要な措置であることを十分理解しています。「感染者数が減少し、安全が確保されるまではなんとか我慢しよう」と、大勢の人が家の中で、不安と共存しながら過ごしていると考えられます。

このように非常なストレスの下でこの数日を暮らしているスペイン人ですが、その一方で様々な気晴らしを考え付くクリエイティブな一面が発揮されています。

例えば、自転車選手たちはZWIFTという自転車とインターネットをつないだシステムをフルに活用し、世界中のサイクリストとバーチャルな世界で自転車レースを楽しんでいます。

また、現在スペインで流行しているのが、エル・レト・デル・パぺル(#ElRetoDelPapel)というハッシュタグをつけた、トイレットペーパー・リフティング・チャレンジです。

SNSを通じてチャレンジの指名を受けた人は、自分がトイレットペーパーをサッカーボールのようにリフティングしている動画をツイッターやインスタグラムに上げたうえで、次のチャレンジャーを指名します。

また、自宅待機になっている人が多数住む地区に警察官が駆け付け、住民のために1曲披露するということも頻繁に行われています。

そして、ここ数日、毎晩夜8時に多くのスペイン人が自宅の窓やベランダから拍手をしています 。この拍手は医師や看護師等コロナウイルス対応のために病院で働く人を応援するための拍手です。

感染者数・死亡者数が増加するスペイン、厳格化は「経済対策」もセットで

スペインでは、仕事を理由にした外出は認められていましたが、感染が広がり続ける中、28日の首相の発表により、経済活動を大きく制限する厳しい措置に踏み切りました。

ただし、スペインは17日、国内企業や雇用を守るため2,000億ユーロ(およそ24兆円)の大規模な経済対策についても発表しています。

この経済対策では、企業が金融機関から融資を受けやすいように政府が債務を保証することや、企業が従業員を一時的に解雇した場合に企業が支払う手当を政府が支払うことなどが計画されています。

人の移動を行わせないことが感染拡大の阻止に有効との情報が広く伝えられている今、人々が外出してしまうのは何も気晴らしだけのためではありません。生活のために、どうしても仕事に出かけるという場合は少なくないはずです。政府による経済的保障なしには、外出制限の実行可能性も低まってしまうでしょう。

3月28日午前4時時点のスペインの死者数は4,858人で、イタリアと同じく中国を超えています。また、スペインの感染者数は6万4,059人が報告されています。

日本で感染が確認された人は、空港の検疫で見つかった人やチャーター機で帰国した人なども含めて1,893人で、クルーズ船の乗客・乗員の712人と合わせて2,605人(3月29日時点)と、スペインの数字と比べると小さく見えてしまうかもしれません。

しかし、オーバーシュート(感染爆発、患者の爆発的増加)の危険性について、SNS上では専門家による指摘がたびたびなされています。感染予防は注意してもしすぎることはないでしょう。

政府からの強硬な指示が見られない日本ですが、政府の決定を待つだけでなく、組織や個人で自衛策をとっていくことも必要なのかもしれません。

<参照>

https://elpais.com/espana/2020-03-13/que-es-y-que-permite-el-estado-de-alarma.html

https://www.abc.es/espana/galicia/abci-coronavirus-galicia-inditex-y-textil-gallego-vuelcan-fabricacion-mascarillas-y-batas-202003232019_noticia.html

https://elpais.com/espana/2020-03-26/sanchez-logra-un-amplio-apoyo-para-prorrogar-el-estado-de-alarma-pese-a-los-duros-ataques-de-la-oposicion.html

https://www.boe.es/buscar/doc.php?id=BOE-A-2020-3692

NHK:スペイン 死者5000人超え 外出制限を厳格化 新型コロナ

NHK:スペイン フランス 大規模な経済対策 企業や雇用の維持へ

NHK:新型コロナウイルス 国内感染者1893人(クルーズ船除く)

AFP BB News:新型コロナウイルス、現在の感染者・死者数(28日午前4時時点)

在スペイン日本国大使館

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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