新型コロナウイルスの流行により、日本そして海外で生活スタイルの変化が起きています。外出の制限を念頭に、保存のきく食品をたくさん買う消費者の姿も見られました。
日本と海外の小売店で売れた商品を見てみると、各国の文化的背景を象徴するような傾向が見られます。
新型コロナウイルス流行期間における日本の消費者動向の変化と、世界の様子を紹介します。
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新型コロナ流行、日本で売れた意外な物
今月4月、マーケティングリサーチ会社の株式会社アスマークが、生活者の意見・行動の変化を正確に伝えるべくレシート情報を用い、コロナショックの「直前(海外発生期)」と「国内流行早期」におけるリアルな消費行動・購買内容を分析し、レポートで公開しました。
その中には誰もが買い求めているマスクや衛生用品の他、意外なものが含まれていました。
日用品編
本リサーチは、首都圏在住の20~50代の女性を対象に、41名のレシートデータを元に分析されています。
日用品では、マスクや除菌消毒剤、ハンドソープ、ウェットティッシュなど急激に需要が伸びています。ハンドソープは1.8倍、消毒液は6.3倍、ウェットティッシュに至っては12倍もの需要が増加しています。
そして意外な消費の伸びといえば、「洗顔料」「衣料用合成洗剤」「シャンプー」です。これは身の回りを清潔に保つアイテムであり、さらに生活必需品で貯蓄に向いているものであるからと思われます。それぞれ、1.9倍、2倍、3.8倍の増加を見せています。
食料品編
食料品は、外出を避けるようにと案内されている中で家庭での食事が増えたため、主食の「米」の消費量が大きく増加しています。さらに5kgサイズを中心に複数個まとめ買いしているケースも見られ、需要が1.6倍伸びています。他には、保存食代わりにもなる「レトルト系食品」や「米飯加工品」の購入が伸び、それぞれ1.6倍、1.3倍と消費動向が変化していることがわかります。
その中でも、意外な食品が伸びています。それは、ドレッシングです。
なんとドレッシングの需要は2.5倍も増加しており、予想できなかった消費者の行動が見えてきました。同様に、きゅうりやレタスなど野菜類の購入も目立ち、人々が「サラダ」を食べようと買い物をしていると想定することができます。野菜からビタミンA、BやCを摂取し免疫力アップを試みているのかもしれません。業態別の消費動向を見てみると、レストランや衣料品、スーパーなどの業態で消費が減少しており、対してドラッグストアやディスカウントストア、ホームセンターの需要は増加していることがわかっています。これは外出自粛を余儀なくされる中で、自宅でできるDIYや、今まで時間がなくてできなかった自宅の大掃除をする人が増えたためだと予想することができます。
国内の感染が取り沙汰されるようになった2月には、1月に比べ全体消費金額が1.3割程度落ち込んだと確認されています。
新型コロナ流行、海外で「棚から消えている物」とは?
日本ではマスクなどの衛生品のほかに、ドレッシングや野菜、シャンプーなどの生活雑貨と宅飲み用の酒類の販売が伸びています。海外でお店の棚から消えている物たちは、それぞれの国らしさを表しているようです。
1. フランス
フランスのスーパーマーケットでは、フランスの食生活で欠かせないものが売り上げを伸ばしていました。
Nielsenのデータによると、フランスでは缶詰の魚とパスタが多く買われていました。これらの食品の土曜日の売り上げは通常の2倍にもなるといいます。
国際連合食糧農業機関統計によると、実はフランスはシーフードの消費量が多い国であり、世界平均である18.9kg(一人当たりの年間消費量)に対して34.8kgも消費するといわれています。これはG20の中で、TOP3に入る値です。フランス人にとってシーフードは食生活に欠かせないものであり、保存の効く缶詰の魚が売り上げを伸ばしているようです。
2020年4月、新型コロナ死者が2万人を突破したフランスでは、ロックダウンで自宅待機せざるを得ない世帯を対象に「Uber Eats」と協働し、スーパーの買い物も自宅に届けるサービスもはじめています。
Twitter:フランスのスーパーマーケットの品薄状態を紹介している投稿(https://twitter.com/USRealityCheck/status/1245253617059344384)
2. ポーランドとオランダ
Web新聞やSNSで交わされている情報を調査すると、ポーランドのワルシャワでは衛生品の欠品が目立つと言います。他の商品の在庫は、比較的通常通りに戻っていているようです。
オランダでも除菌ジェルとハンドソープの欠品が目立ち、オンラインで購入できる量も制限しているといいます。ほかにも料理に使うことが多い、小麦粉や卵、パスタなどの欠品も目立っているようです。
オランダはチーズが有名な国ですが、チーズとも相性が良く主食でもあるパンやパスタがよく売れているのかもしれません。ナチュラルチーズの輸入額においてはオランダは欧州で1位となっており、約5倍ほどの人口を有する欧州2位のドイツに1.7倍も差をつけています。チーズと一緒に食べたり、調理したりする食品の売り切れも想定できます。
Twitter:オランダにおける日用品の品薄状態を紹介している投稿(https://twitter.com/manyapan/status/1242015369046437889)
3. アメリカ
最も新型コロナウイルスによる死者数の多いアメリカでは、トイレットペーパーや衛生品などのほか、手からの感染を防ぐためと思われるグローブや、免疫を改善させるビタミン剤、大掛かりな消毒ができる漂白剤などが売り切れています。
Twitter:アメリカの日用品販売店の品薄状態を紹介している投稿(https://twitter.com/StandUp2Fascism/status/1252341980790579200)
食料品については、アメリカでも人気のある小売店Costcoでは、生活雑貨ほかにボトルウォーターが品薄になっていました。ほかにも貯蔵が効いて料理に使いまわすことができるトマト缶も売り切れになっています。
Twitter:アメリカの日用品販売店の品薄状態を紹介している投稿(https://twitter.com/vickilaszlo/status/1234243383377321984)
アメリカで品薄になっているボトルウォーターは意外に思えますが、実はアメリカでは、水道インフラの老朽化で有害物質を除去しきれていない水が水道水として使われる社会問題が発生しています。安全基準に満たない水を飲んでいた国民は、1982年から2015年の間に毎年900万~4,500万人も居たと言われています。
その背景もあり、安全で保存も効くボトルウォーターを購入する人が相次いだと考えられます。
非常事態の消費者行動に未来のインバウンド市場攻略のヒントを見出す
除菌ジェルなど、衛生品はどの国も品薄が続いていますが、売り切れの品などから国の国民性を映し出す消費行動も垣間見えた結果となりました。
例えばヨーロッパでは、日本で品薄状態の米飯加工品に対して、主食として多く摂取されている原料の小麦粉やパスタ麺の品切れが見受けられました。2020年5月現在では、日本でも自粛期間中に自宅でパンやお菓子作りをする人が増え、欠品になっている小売店も散見されます。これは欧州での食文化が反映されている結果といえます。
このような調査から、国別の消費者の行動には国民性を反映させた「特徴」が見えてくることがわかりました。今回見えてきたヒントをインバウンド対策にも反映させることができるかもしれません。
例えば欧州からの訪日客が多いレストランや小売店では、主食のパスタと紐付くアイテムの購買意欲が高いと予想し、パスタメニューを強化したり、日本産の小麦を使ったパスタを販売・提供したりすると、インバウンド対策へとつなげられそうです。
ほか、SNSを使ってターゲットの消費活動をチェックすると、インバウンド対策のヒントが見えてくるかもしれません。テテマーチ株式会社が4月に発表した「“コロナ感染拡大前後”で比較した、SNSにおける生活者の行動変容」に関するプレスリリースによると、コロナ感染が拡大した後、SNSを利用する時間も頻度も高まっているといいます。
コロナ感染拡大後、Instagramのストーリーズ投稿の平均表示回数は31%増加し、ユーザーのストーリーズ投稿の閲覧時間や閲覧頻度が上昇していると考えられることが判明(プレスリリースより)
インバウンド市場のターゲットである海外の人々も、日常生活に制限を受ける中で、SNSの利用が増加していると考えられます。各地で起きている現象とターゲットユーザーの発言を考察し、潜在顧客のニーズを探り、コロナ収束後の消費取り込みにつなげられるよう準備をしておくべきでしょう。
<参照>
https://www.asmarq.co.jp/news/release-20200413/
https://honkawa2.sakura.ne.jp/0260.html
http://www.jic.gr.jp/data.html
https://www.gef.or.jp/globalnet201807/globalnet201807-7/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000044.000017171.html
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