日本で毎年開催される「フジロックフェスティバル」は、1997年に開始された国内最大級の野外音楽イベントです。毎年夏の3日間を会期に開催され、延べ動員数は10万人を超えます。
「富士」の名を冠していますが、初回開催会場は山梨県であったものの、それ以降の会場は新潟県湯沢町の苗場スキー場です。
2020年は8月下旬の開催を予定しており、チケットの第2次先行販売まで進められていましたが、「中止」とする誤報が大手メディアから流れたことで波紋を広げ、最終的には新聞社が謝罪コメントを掲載するに至りました。
Twitterのトレンドにも「フジロック」が見られるなど、同イベントに対する世の中の注目の大きさがうかがえます。中止や続行が伝えられているその他のメジャーな音楽イベントに対するファンの熱量の大きさも推察されるでしょう。
日本で開催される音楽イベントは複数あり、海外で知られた日本のアーティストや、世界で活躍する著名アーティストの出演もあるため世界でも知られた存在です。
フジロックフェスティバルは、「世界一クリーンなフェス」として海外メディアに紹介されたこともあります。実際に、年々インバウンドの参加者も増加しているため、運営側はインバウンド対策にも乗り出しています。
今回は、フジロックフェスティバルにおける多言語での注意喚起の工夫について紹介します。
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日本の祭りを英語で発信する「Japan Forward」でフジロックフェスティバルを紹介
日本のさまざまな祭りやイベントを世界に発信する、英語ニュース・オピニオンサイトの「JAPAN Forward」は、2019年にフジロックフェスティバルを取り上げています。
2019年7月26日から28日にかけて新潟県の苗場スキー場で開催された同フェスに記者を派遣し取材を行い、10本以上の動画や記事を配信しています。開催日ごとの出演アーティストの中から特に印象に残ったトップ3のステージについてレビューをしたほか、注目アーティストの特集記事を掲載しました。
「JAPAN Forward」によると、来場した外国人が特に驚いていたのが、ゴミの処理が適切になされていた点でした。
13万人もの参加者が集う大規模なフェスにも関わらず、ゴミが散乱することもなく、決められたゴミ捨て場に分別・回収されていたことが、大きなインパクトを与えたようです。
フジロックフェスティバルに出演した英国の有名ロックアーティストたちが「世界のどこにもない唯一無二の場所だ」と称賛の意を表明しており、参加者だけでなく海外からの出演者からも高い評価を受けているフェスといえるでしょう。
【海外の反応】世界がうらやむ日本の清潔さ:各国メディアが報じる新型コロナ感染者数から「見習うべき日本の姿」とは?
2019年10月7日、英・BBCが「What Japan can teach us about cleanliness(日本から学ぶ掃除の精神)」という記事を公開しました。記事では、「なぜ日本はこんなにも綺麗なのか」という事実を「学校教育・宗教感・実際に起こった日本人の驚くべき行動」などいくつかの切り口で読み解いています。2018年7月に開催されていたロシア・ワールドカップでも、敗戦した日本チームは更衣室を清掃していたこと、日本のサポーターがスタジアムのゴミ拾いをしている姿などが注目を浴び...
東アジアのインバウンド、音楽イベントへの参加が増加
近年のフジロックフェスティバルでは、台湾・韓国・中国といった東アジアの訪日観光客の参加者も増加しています。中国・内モンゴル出身のバンドも参加しており、当然の成り行きといえる面もあるでしょう。会場内での案内板などでは中国語の表記も見受けられるようになりました。
近年では、訪日外国人にとっての利便性向上を狙って、電子マネー決済が飲食ブースにも導入されています。キャッシュレスの取引に慣れている訪日外国人にとっては、慣れない外貨を扱うストレスを回避できるだけでなく、出店者側も釣り銭準備などの負担が軽減されるといった効果があります。
フジロックフェスティバルだけでなく他の音楽イベントでも、来場者の多様化が見られます。同じく日本を代表する一大音楽イベントであるサマーソニックでは、アジアのアーティストに特化したステージが設けられました。
サマーソニックは2020年は東京オリンピック開催を考慮して開催を中止し、代替イベントの「スーパーソニック」を9月に開催する予定です。
フジロックはマナー喚起を強化
ゴミの処理などマナーの良さが海外からも高い評価を受けており、外国人の参加者も増加しているフジロックフェスティバルですが、近年は会場内でのマナー低下やゴミ問題が浮き彫りとなっていました。
そこで運営側は、初心にかえり本来のフジロックを取り戻すべく、「自分のことは自分で」「助け合い・譲り合い」「自然を敬う」の3原則をベースに、さまざまなマナー喚起を行っています。
2018年のフジロックフェスティバルの公式サイトでは「OSAHO - Festival Etiquette -」という動画を公開しています。
音楽イベントらしく、リズムに乗せてメッセージを届けています。守るべき規範を日本語の「お作法」と呼ぶことで、日本らしさをアピールすることにも一役買っているといえるでしょう。
公式サイトの多言語対応も
フジロックフェスティバルの公式サイトは、英語・中国語(繁体字・簡体字)にも対応する多言語サイトとなっています。
ここでも、ゴミ捨てやシート・チェアの使用、喫煙マナーなどを各言語で伝えています。
インバウンドの増加を受け、マナー喚起を多言語で行う必要性があるという背景が見えます。大規模かつ文化的背景の異なる人々が集まるイベントであっても、衛生環境や秩序が保たれている理由にはこうした取り組みも影響していると考えられるでしょう。
まとめ:世界的に認知が拡大する日本のフェスでインバウンド誘客促進へ
言語が必ずしも必要ない音楽イベントで得られる一体感は、訪日外国人にとっても大きな魅力です。世界的にも評価が高く、認知拡大が進んでいるフジロックフェスティバルのように、日本の音楽イベントをフックにしたインバウンド市場の拡大がこれからも期待されます。
野外音楽イベントは、インバウンド市場でコト消費需要が高まる今、需要拡大への追い風が吹いているといえます。 またこうしたイベントの開催地周辺は、すでに海外で知られている東京や京都といった都市にはない新鮮さがあると感じられることも考えられます。人に先駆けて日本の良さを知りたいというタイプの観光客に対する訴求ポイントとなりうるでしょう。
フジロックフェスティバルでは動画と多言語対応により、文化的背景の異なる来場者へのメッセージ伝達に成功しています。多言語でのマナー喚起の一例として、参考にできる部分も大きいでしょう。
<参照>
・JAPAN Forward:[FUJI ROCK 2019]Reviewing the Best of Fuji Rock 2019
・産経新聞:【JAPAN Forward 日本を発信】世界が絶賛、特別な場所
・一般社団法人コンサートプロモーターズ協会:20周年を迎えたフジロックの進化、各地の新傾向フェス
・SPICE:『FUJIROCK FESTIVAL '18』を振り返る(1):長引く"フジロス"の理由、二つの軸で改めて感じたフジロックの未来
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