仙台七夕まつりは、商店街を中心に七夕飾りで街中が彩られるお祭りです。和紙や竹を素材とした七夕飾りはとても豪華であり、他地域からも多くの観光客が一目見ようと訪れます。ロサンゼルスやサンパウロでも仙台七夕まつりが開催されるほど、海外からも人気を集めています。
そのため、仙台七夕まつりをインバウンド対策に活かせないかと考える人も少なくありません。
この記事では、仙台七夕まつりの概要と海外に広がる七夕まつり文化について、そして仙台七夕まつりが実際に行ったインバウンド施策とその結果についても紹介します。
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仙台七夕まつりとは
ここでは、仙台七夕まつりの概要や見どころ、どのくらいの来場者が訪れるのかについて紹介します。
概要
仙台七夕まつりは、藩祖伊達政宗公の時代から続いている伝統的な「紙と竹」の祭典です。
今日における七夕の日は7月7日ですが、本来は旧暦の7月7日に催されていました。仙台七夕まつりはその古来からの季節感に合わせるため中暦(新暦に1か月を足した暦)を採用しており、現在の8月6日から8日にかけて開催されています。
お祭りが開催されている間は、仙台市内中心部や周辺の商店街をはじめとした街中が色彩豊かな七夕の飾りで彩られます。
見どころ
仙台七夕まつりの見どころは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、お祭りの中で最も目立つ存在である七夕飾りです。この飾りは「7つ飾り」と呼ばれており、異なる意味を持った7つの飾りが必ず使用されています。飾りの種類と、意味合いは以下の表の通りとなっています。
飾りの種類 | 意味 |
短冊 | 学問や習い事の上達 |
紙衣 | 病気や災難の身代わり、裁縫の上達 |
折鶴 | 家内安全、健康長寿 |
巾着 | 商売繁盛、富貴と貯蓄 |
投網 | 豊漁、豊作 |
屑篭 | 飾りの裁ち屑や紙屑を入れ、清潔と倹約 |
吹き流し | 織姫の織糸を象徴 |
2つ目の見どころは、七夕や地域に関連したイベントが豊富にあるところです。花火祭、瑞鳳殿七夕ナイト、および仙台城跡ナイトイベントなどが開催され、地域の歴史やグルメも楽しめます。
2019年度は前年度比11%アップの人出
2019年に開催された仙台七夕まつりにおける人出は、3日間で224万9,000人と、2018年と比較して22万3,000人以上を上回る盛況ぶりとなりました。例年、台風や降雨が多い季節であるため、これらによって人出に変動は生じますが、徐々に人数は伸びてきています。
2019年の開催された日は好天にも恵まれたため、夕涼みに来る地元の親子連れも多く訪れ、1日中見物客が絶えなかったそうです。
海外に広がる仙台七夕まつり
「七夕まつり」というと、日本でしか行われていないイメージが強いかもしれません。しかし、実際には海外にも七夕まつりの風習が広がりつつあります。
海外ではどのような七夕まつりが開催されているのか、いくつか例を紹介します。
1979年からブラジル、2009年からロサンゼルスでも開催
ブラジルでは、サンパウロ市中心部に位置するリベルダーデ地区を中心に、「サンパウロ仙台七夕祭り」が開催されています。1979年から開催されており、現在ではブラジル各地にも広がりを見せています。2009年からはアメリカのロサンゼルスでも、「ロサンゼルス七夕祭り」が開催されています。
現地に在住している宮城県人会を中心に始まったお祭りですが、日本人だけではなく、様々な国籍の人が集まります。
2019年、シンガポールでPRを実施
2019年3月にシンガポールの観光施設である「Gardens by the Bay」で、日本の文化を紹介するイベントが開催されました。イベント内では七夕飾りや仙台七夕まつりを紹介するパネルの展示などを通して、PRが行われました。
世界各国からシンガポールへ来た観光客が多く訪れ、盛り上がりをみせました。短冊を作るワークショップも開催され、イベント内で作成された約350枚の短冊が同年に開催された仙台七夕まつりで展示されました。
仙台七夕まつりのインバウンド獲得に向けた取り組み
このように、仙台七夕まつりは海外にもその魅力を届けていることがわかります。
では、仙台七夕まつりを用いたインバウンド対策にはどのような方法があるのかについて、いくつかの例を紹介します。
まつり関係者が協力し、インバウンド受入環境整備事業を実施
2018年8月5日から8日にかけて、株式会社オマツリジャパンと地域の関係者が協力して、「訪日外国人の受入れ・消費促進環境整備事業」が行われました。この事業の目的は、多言語対応等の受け入れ環境を整備することや、お祭りに関連したコンテンツを作成することで、集客や消費の促進効果を検証することです。
集客を促進する方法として、公式HPを多言語対応にしたほか、問い合わせ窓口の英語での対応を始めました。
また、消費促進の方法としては、訪日外国人旅行者へ向けたレンタル浴衣の着付け体験や、ボランティアによるおもてなし部隊を結成し、市内コンテンツへの誘導を行いました。
外国人観光客の約4割がWebを通してまつりを認知
多言語対応可能なガイドである「おもてなし部隊」がお祭りに来場した訪日外国人観光客に対してアンケート調査を行ったところ、約4割の人が仙台七夕まつりをWebで認知していることが明らかになりました。
また、来場の検討を開始する時期はお祭りが開催される1か月前から半年前から行うといった回答が最も多く、訪日前にWebを通して情報収集をしていることが明らかになりました。
これらの結果から、インバウンドに向けた情報発信ではWebでの情報発信の内容が重要であることがわかります。
「情報の充実化」「多言語対応」「官民一体」が課題
アンケートの結果から、観光、体験型コンテンツおよび日本食などを体験したい方が多いこともわかりました。そこで、事前にこれらに関する情報を発信し、また当日にも宣伝することで、集客および消費の促進につながると考えられます。
改善点としては、タイムスケジュール等の情報を充実させることや、開催地における情報媒体の拡張、および多言語対応をさらに増やすことが挙げられました。
実際に、アンケートで得られた回答の中には「当日のタイムスケジュールが分からない」「ローカルな情報がほしい」といった情報不足に関する指摘や、「開催地のパンフレットや案内は設置数・設置個所を増やしてほしい」「開催地の地図が少ない」といった意見がありました。
また、「パンフレット等の紙媒体が日本語しかない」「外国語の地図や案内を様々な場所に設置してほしい」「繁体字の地図がほしい」といった多言語対応の不足に関する不満の意見も見られています。
ボランティアガイドや多言語対応が可能な人材の確保には、地域住民の積極的な参加も必要であるため、官民一体となって長期的に取り組む必要があるでしょう。
海外でも認知度を上げる「仙台七夕まつり」、課題に適切に対応してインバウンド誘客
「仙台七夕まつり」は、日本国内だけではなく、海外にもその文化を広め、国内外を問わずたくさんの観光客から親しまれているお祭りです。日本独自の文化であり、また華やかなお祭りでもあることから、ますます集客が増加することが期待されます。
しかし、訪日外国人観光客へ向けた施策の中には課題も見つかっています。アンケートで得られた訪日外国人観光客の意見として挙がった、多言語対応と情報発信の充実化など、ターゲットが求めているものに対しては適切に対応していくことが重要であると考えられます。
こうした一つひとつの課題を丁寧に対処していくことで、訪日外国人観光客のさらなる集客効果が得られるでしょう。
<参考>
・訪日外国人の受入れ・消費促進環境整備事業(仙台七夕まつり)「全体概要」
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