2018年10月に牛丼チェーン「すき家」は、中国の内陸の都市、貴州省に進出を果たしました。2020年6月の報道によれば、すき家を展開するゼンショーホールディングスは、追加で1,000万元(約1億5,300万円)を投資するとしています。
新型コロナウイルスの影響を受けながらも、さらなる店舗展開を目指す姿勢に、中国における牛丼チェーン店の展開に注目が集まります。
今回は、すき家や吉野家といった日本の牛丼チェーンの進出状況をはじめ、現地でのメニュー展開や評価について解説します。
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中国に出ている牛丼チェーン店
中国には、日本の牛丼チェーンが3つ進出しています。最も店舗数が多いのが吉野家で、北京を中心に中国本土に539店舗を構えます。次いですき家は、上海を中心に296店舗を展開しています。
松屋は上海に5店舗出店しています。中国全体の数に関する公式データはありませんが、口コミや日本での店舗数を考慮すると、前述の2社より少ないことが想像できるでしょう。
一方で同社が展開するとんかつ専門店「松のや」は、上海にすでに11店舗進出していることから、牛丼ではなくとんかつ業態の出店を積極的に推し進めている可能性も考えられます。
今では複数のチェーンが出店するほど中国に浸透した牛丼ですが、2002年に吉野家が上海に1号店を出店した際は、一般市民には割高な商品に映り、苦戦を強いられました。その後は上海の著しい物価上昇が進み割安感が増したため、一般市民にも牛丼が受け入れられるようになり、市民の生活に溶け込んできたといえます。
すき家が中国・貴州省に進出
日本の牛丼チェーン店「すき家」は2018年10月、貴州省初の日本の飲食店として進出しました。牛丼を中心に提供しながら、地元民の好みに合った食材を使用した「三椒牛丼」といったご当地メニューも展開しています。
出店した2018年時点で、今後3年以内に少なくとも19店舗を貴州省に開く予定としました。ビッグデータを活用したビジネスで有名な同省では、すき家をはじめ日本の飲食店の誘致は、日本企業の誘致や外資導入に関する重要事業の1つとなっています。
現地メニューと価格
中国に進出した日本のコンビニチェーンでは、地元の食材を使用した商品を開発し地元民に評価されました。牛丼もローカライズしたメニューの開発が進んでいます。
中国の吉野家には日本と同じ牛丼に加え、日本にはないメニューとして、キノコ牛丼やキムチ牛丼・照り焼きチキン丼などを提供しています。さらに中国ならではのルーロー飯やおでん(串点)もあり、現地在住者の舌に合わせたメニューが印象的です。
すき家は、日本のメニューにもある牛丼・キムチ牛丼・チーズ牛丼・オクラ牛丼などがあります。日本にないメニューとしては、イタリア風トマト牛丼・キノコ牛丼・酸豆角(さやいんげん)牛丼・麻婆豆腐牛丼・インゲン豆牛丼など、ローカライズされたさまざまなメニューが並びます。
価格は?一杯20~30元(約300円~460円)
中国に出店した日本の牛丼チェーンの価格帯は、一杯20~30元(約300円~460円)が相場です。吉野家の牛丼(並)は23元(約350円)、ルーロー飯は16元(約245円)となっています。
ローカルの飲食店では、地域にもよりますが麺一杯を10~15元程度(約150円~230円)で提供する店もあります。
ファストフード感覚で食べられる肉まん「包子」はさまざまな具材があり1つ2元(約30円)程度であり、非常に安価かつバリエーション豊富なのが特徴です。
一方で、都市部の洗練された雰囲気の飲食店であれば、一人当たり50元(約770円)以上支払うことも珍しくはありません。
こうした現地の金銭感覚と、最近の物価上昇から牛丼を割安に感じる人も少なくありません。また味と店の雰囲気に魅力を感じ、それへの対価として理にかなった値段と受け止める人もいるでしょう。
大衆点評のコメント
中国人がどのような観点から日本の牛丼に注目しているのかについて、大衆点評の口コミから分析していきます。
大衆点評は中国最大の口コミサイトとして、特にグルメ情報が充実していることから、日本の食べログに近い存在として知られています。ここでは、日本の牛丼に対する中国人のリアルな反応が確認できます。
吉野家に関する口コミでは、味噌汁や茶碗蒸し・お好み焼き・唐揚げが美味しいという声が挙がったほか、てりやきチキン丼が人気のようです。中国では鶏肉は馴染みのある食材であること、日本のイメージの強い食品を求めて来店する人が多いことがうかがえます。
「味良し・サービス良し・値段良し」の3つが揃い、総合的な評価も高くなっていますす。
すき家はチーズ牛丼が珍しく注目されているほか、照り焼きチキンも人気です。いずれも「高くない」というコメントが散見され、ちょうど良い価格帯で日本食を気軽に食べられるお店として地位を確立しつつある様子がうかがえます。一方「吉野屋だと思って入った」「ファストフードって感じ。席の間隔が狭い」といった意見も見受けられました。
しかし全体的には、日本の牛丼チェーンに関して、投稿の星評価の高さやポジティブなコメントが目立ちました。
【事例アリ】大衆点評とは
2018年、訪日外国人観光客が史上初の3,000万人を突破しました。そのうち約3割が中国からの観光客です。 2019年1月には訪日中国人に対するビザ発給要件の緩和が行われ、今年はさらに加速して中国人観光客が増加するとも見られています。 中国では年初の新EC法の施行や、「理性的な消費」といったスローガンの広まり、富裕層におけるオリジナルな旅行体験への需要の高まりなど、様々な環境とトレンドの変化が現れています。特に新EC法による転売目的の商品購入が減少することも考えられ、今後ますます「コト...
馬蜂窩では、「日本の吉野家の方が美味しい」という意見も
馬蜂窩では、日本を訪れた際に日本の吉野家と中国の吉野家のメニューの違いに驚いたといった投稿が見受けられました。味も中国と日本のものは全く違うとし、日本のほうが美味しいと評価する声もあります。
日本の牛丼チェーン店ではお馴染みのU字型のカウンターや、男性客の多さにも面白みを感じるようです。このような口コミから、本場である日本の店舗に足を運びたいと考え、訪日旅行の動機づけにつながることが期待できるでしょう。
马蜂窝(MaFengWo)とは
马蜂窝(MaFengWo)は、中国最大級の旅行サイトのひとつです。日本では「ヒトサラ」と马蜂窝(マーファンウォー)が提携し、両社のユーザーを連携するサービスの提供を開始しています。近年、訪日中国人の個人旅行化がすすみ、訪日旅行を計画するのに马蜂窝の口コミや旅行ブログを参考にする中国人が増加しています。このような傾向から、日本でも马蜂窝での集客やPRを行っている企業があります。今回の記事では、马蜂窝(MaFengWo)の特徴や、インバウンド集客に马蜂窝を活用した事例を紹介します。Google...
日本食チェーンの認知拡大で、訪日旅行の機運が高まる?
2018年時点では「中国にも吉野屋はあるけど偽物」といったコメントがSNSで確認でき、日本ブランドという認知がありながら、本物は食べられないとイメージしている人も多かった印象です。認知があり需要が発生している可能性もありますが、実際にその需要を消費にまで結び付けられていない可能性も考えられます。
中国では「偽物ではないか」という考えがまず働きますが、現地の吉野家やすき家は大衆点評にも登録したことで、現地消費者に「日本から来た牛丼チェーン」として認識されることに成功したといえるでしょう。
中国各地では、ごはんに炒め物をのせて食べる習慣もあり、どんぶり飯は受け入れやすいメニューだったと考えられます。中国は東西南北でさまざまな味付けが存在し、郷土料理以外への間口も広いと考えられます。
すでに日本の消費者がそうであるように、中国でも食事は空腹を満たすだけではなく、どこで食べるか、何を食べるかの選択を通じて消費者の心理的欲求を満たしています。こうした消費者心理をふまえれば、中国での牛丼チェーン需要は、本場の店舗を訪れたいというあこがれを形成することで、今後訪日旅行の動機付けにも活かせるかもしれません。
<参照>
新華網日本語:すき家、貴陽市でオープン 貴州省初の日本飲食企業に
ニュースイッチ:アリババもDC…“宝の山”ビッグデータ集中する「中国・貴州省」の全貌
YOSHINOYA HOLDINGS:Group Company
ZENSHO:门店分布
城市生活网:上海松屋网点分布
松屋フーズ:松屋フーズの取り組み
DIAMOND online:中国で日式「牛丼」「カレーライス」が“国民食”になりうる理由
吉野家:首页
ZENSHO:食其家品牌
訪日ラボ:中国・湖南省初のセブンイレブン、開業日の売上が世界記録に:日本式どこまで貫く?バランス感覚問われる
马蜂窝问答 :日本真的有 吉野家吗?好吃吗?是不是跟中国的完全不一样?
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