ダークツーリズムとは?悲劇の記憶を追体験する新たな観光 | 国内外の事例と注意点も紹介

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旅行といえば、新しい場所を訪れる新鮮さ、同行者と過ごす時間を共有する楽しさといったポジティブなイメージがあります。

一方で、戦争や災害といったネガティブな感情をもつ場所を訪れ、悲劇の記憶を体感する「ダークツーリズムが提唱されはじめています。

ネガティブな記憶は風化しやすい特性があるものの、観光客に訪れてもらい悲しみを追体験してもらうことで、同じ悲劇を二度と繰り返さないことにつながります。

この記事では、ダークツーリズムの概念や実際の国内外の事例、役割や観光時の注意点について解説します。

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ダークツーリズムとは

ダークツーリズムという言葉は聞き慣れない言葉かもしれませんが、国内にもダークツーリズムの事例が存在します。まずはダークツーリズムの概要や、国内・海外それぞれの事例について解説します。

ダークツーリズムの概要

ダークツーリズム(Dark tourism)は、1990年代にスコットランド内の大学で教授を務めていたジョン=レノンとマルコム=フォーリーによって提唱された、新しい観光のカテゴリーです。

ダークツーリズムは、観光を「楽しいもの」として考えるのではなく、学びの手段として捉えます。そして災害や戦争、死といった悲劇のテーマをあえて観光対象とします。

この新しい旅の考え方は、現在使われていない産業施設や、かつて隔離施設として使われていた病院や監獄などの場所にも広がっています。

日本国内でも、戦争のようすを現世に伝える広島の原爆ドームなどは観光に使われており、日本人にも馴染みの深い観光カテゴリーだといえます。

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国内・海外でのダークツーリズム事例

かつて戦争や災害の拠点として使われ、現在はダークツーリズムで観光客が訪れている場所が世界中に存在します。

世界で最も有名な「負の遺産」の1つとして、ドイツのアウシュヴィッツ=ビルケナウ=ナチスドイツ強制収容所が挙げられます。ナチス・ドイツの強制収容所のうち最大級の施設です。

ユダヤ人はこの施設内のガス室で大量虐殺されたといわれており、観光客は実際の部屋内部も見学することができます。

日本国内で戦争に関連する「負の遺産」としては、広島県の原爆ドームが挙げられます。

第二次世界大戦時の1945年8月6日、広島に原爆が落とされました。原爆ドーム内部では、原爆で犠牲となった被爆者の遺品や、戦争時の写真、資料などを展示しており、原爆の悲惨さや平和の大切さを現在に伝えています。

また、現代日本の新たな「負の遺産」としては、東日本大震災や福島第一原発事故で被災した福島県が挙げられます。

福島県は、2011年3月11日に発生した東日本大震災による地震や津波に加え、原子力発電所による災害という世界的にも類を見ない被害を受けました。震災から9年経った今でも、帰還困難区域に指定されている大熊町では、側道がバリケードで封鎖され、建物は震災当時のままの状態で残っています。

福島を訪れた人々は、震災や原子力災害の影響を目にすることができます。

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ダークツーリズムの意義

戦争や災害に関係する場所を訪れるダークツーリズムにより、人々はその土地の悲しい記憶をリアルに想像することができます。このことは、悲しい記憶を風化させず、同じ悲劇を繰り返さないことにもつながります。

以下では、ダークツーリズムの役割や、ダークツーリズムのもたらすメリットについて解説します。

歴史の風化を防ぎ、地域の多角的な理解を促す

ダークツーリズムは、悲劇の風化を防ぐ前向きな役割があります。

戦争の舞台になった場所などは、教訓として重要な意味を持ちます。しかし、生活や経済といった人の流れから外れてしまうと、まず「物的な風化」が始まります。それに伴い、人々にその場所で起こった災害や戦争、事故といった悲劇が忘れられてしまう「記憶の風化」が始まってしまいます。

ダークツーリズムの意義のひとつとして、このような「記憶の風化」を防ぎ、悲しい出来事の教訓を受け継いでいくことがあります。

しかしダークツーリズム観光資源となる悲しい思い出のつまった場所だけでは、旅の思い出までも重く悲しいものになってしまいます。

そのため、他の愉快で楽しい観光資源と組み合わせたルートを提示することが重要になります。

またダークツーリズムとして使われる観光施設は、場所も悲劇の内容もそれぞれ異なっています。「ダークツーリズム」という概念こそが、さまざまな種類の悲劇をひとくくりにしたといえます。

従来の観光に変化を与える

これまでの観光は、楽しさや愉快さといったポジティブな感覚を味わえるものであり、観光客は地域の素晴らしい側面を見ることができました。

一方でダークツーリズムは、その場所の持つネガティブな記憶を感じ取り、地域の人々の悲しみや怒りに思いを馳せる観光といえます。

その土地の「光」ではなく「闇」に焦点をあてるダークツーリズムは、他とは一線を画す観光スタイルだといえます。

学びの機会を提供する

ダークツーリズムは、その土地のネガティブな記憶だけでなく、戦争や災害、強制労働や社会差別、環境破壊など、人々が直面してきた悲しい歴史についても学ぶことができます

過去の歴史がはっきりと残された場所をめぐることで、人間の行なってきた営みを振り返り、反省し「忘れずにいよう」と感じることができます。

現在、戦争などの歴史を振り返る書籍や映画も数多くありますが、実際にその場所を訪れたからこそ分かることや、感じる衝撃は大きいと考えられます。

ダークツーリズムの問題点と注意すべきこと

ダークツーリズムにより、観光客は多くの学びを得ることができます。しかし、悲しい記憶を持つ場所であるからこそ、観光客が訪れる際にはさまざまな配慮が必要です。

以下では、ダークツーリズムにおける注意点に関して解説します。

地域住民や関係者への配慮が必要

「ダークツーリズム」は、悲劇を風化させない、同じ悲劇を繰り返さないというプラスの働きがある一方、地元住民や関係者の気持ちに踏み込んでしまうことが問題視されています。

ダークツーリズムを行う際には、その土地の人々への心遣いが大切です。観光客の姿自体が関係者に辛い記憶を思い出させることもあるため、観光客は、態度や言動に配慮する必要があります。

歴史的建造物をはじめとした遺物にも敬意を持って接するように、観光客への注意喚起は欠かせません。

観光客の来訪のハードルを下げる工夫も

ダークツーリズムを推進する際、事前に書籍などでその場所の歴史や悲しい事実を予習してから訪れることは、観光客の理解を一層深めることにつながります。

しかし受け入れ側が「予習をしてから来てください」と言ってしまうと、それだけで尻込みしてしまう人が多くなってしまいます。訪問時のハードルはできるだけ下げ、観光客を集めた上で、本質的な記憶や教訓を伝えていくことが重要です。

例えば網走市の博物館網走監獄では、囚人服の試着や、刑務所の食事といった体験が行えます。見学の終盤には、網走刑務所ができた政治的・歴史的な意図や、北海道開拓史における当時の囚人労働が果たした役割について深く想いを巡らせることができるようなつくりとなっています。

ダークツーリズムによって新たな観光様式の模索を

ダークツーリズムは、災害や戦争、死といった悲しい記憶をもつ場所を観光地として選びます。

観光客は人々が歩んできた悲劇を追体験することで、歴史や関係者の気持ちを深く理解し、二度と繰り返さない姿勢を身につけることができます。従来の観光とはまた違う感情を観光客に植え付けるダークツーリズムは、まさに新しい形式の観光スタイルです。

従来の「楽しい」にとどまる観光スタイルだけでなく、もう一歩踏み込んだダークツーリズムを行うことで、従来の観光に深みも加わります。そして、インバウンドの発展に繋がると考えられます。また、ダークツーリズムを行う際には、被災者の気持ちに配慮する、観光客に事前自習を強制しないといった注意も必要です。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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