【ポストコロナのインバウンド戦略】訪日需要回復局面におけるリーディングセグメントとその旅行志向:Amobee Japan 齊藤飛鳥

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緊急企画『ポストコロナインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。
今回は、データ分析と事業開発の知見から、インバウンド戦略に有効なインサイトを提供するAmobee Japanの齊藤飛鳥氏に寄稿いただきました。


2020年7月時点、日本政府は入国制限緩和を調整し始めるなど訪日需要回復シナリオへの意識が高まってきていると感じています。

回復シナリオでは距離的要素が重視され東アジア、東南アジア、欧米豪の順に回復が進むと聞きますが、考慮すべきは地域だけでしょうか。

今回はオーストラリアとイギリス市場のデータ分析結果から、セグメンテーションの重要性について触れたいと思います。

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COVID後の回復シナリオ

2019年5月の訪日外客数は1,700人と昨年同月比で99.9%と非常に厳しいものとなってます。

この状況下で多くの有識者の方、団体がインバウンド回復のシナリオ、対策を掲げていますが、もっとも多く聞くシナリオは地域に基づくものではないでしょうか。

つまり、観光は距離が近い国から順に回復するというものです。

まず国内、ついで東アジア、東南アジア、最後に欧米豪。個人的感覚に照らし合わせてもこのシナリオは妥当と感じますが、インバウンド回復の戦略を立てるにあたって地域という単一要素のみを考慮することで十分か、という点は疑問に感じます。

マーケティングに携わったことがある人はご存知の通りSTPという考え方があり、このSはセグメンテーションを指します。

地域という市場を決めることは非常に重要ですが、その市場における消費者をセグメンテーションし、その上でターゲティングをすることも重要です。

それでは、COVID影響下における重要なセグメンテーションの要素とはどのようなものでしょうか。

セグメンテーションの仮説

セグメンテーションについてはいろいろな切り口があるかと思いますが、わかりやすい要素としては、性別、年代、子供有無、年収、ではないでしょうか。

ここでは年代と子供有無の2つの要素を分析したいと思います。ご存知の通り、年齢が高いほど症状が悪化しやすい傾向がありますので、若い世代ほど感染のリスクを取りやすくトラベルマインドの回復も早いと思います。

子供への影響も気になるでしょうから、子供のいない人のほうが旅行しやすいという考え方も成り立つのではないでしょうか。

上記2つの要素についてオーストラリア市場を対象に仮説検証を行いました。日本政府は入国規制緩和の第一弾対象にオーストラリアを含んでおり、実際に訪日渡航が再開される可能性が高いためです。また比較対象としてイギリスを選びます。

欧州の中でもイギリスにおけるCOIVD影響は大きく、オーストラリアと異なり、まだまだ影響が収束しきっているとは言えず違った傾向が見られることが期待できるためです。

仮説検証のアプローチ:データ紹介

仮説検証には弊社Amobeeが保有する海外消費者デジタルデータを使用しました。

これは海外消費者5,000万人のデジタル行動データをAIで解析することで、任意のテーマに対する消費者の関心やイメージなどが分析できるものです。例えば、イギリス富裕層はどのようなトラベル関心を持っているのか。

例えば、東京、大阪、ニューヨーク、パリ、ローマの各都市への関心とイメージはどう異なるのか。例えば、アドベンチャーツーリズムに関心のある消費者属性はどういったものなのか。上記のようなテーマに対して効率よくレポートができるソリューションになります。

大阪観光局様とは欧米豪対策のための共同研究を行っており、また他インバウンド関連の団体様にもデータを提供させて頂いております。

Amobeeデータ紹介フロー図

▲Amobee分析ソリューション

仮説検証結果

以下、さっそく仮説の検証結果について見ていきましょう。

COVIDの影響にてトラベル関心が急降下

図1はオーストラリアとイギリス消費者のトラベル関心の時系列推移になります。

期間は2020年1月1日から7月5日まで。縦軸は関心度インデックスで、旅行に対する関心を指数化したものです。

3月22日はニューヨークでステイホーム宣言が出された日で欧米圏においてCOVIDの影響が顕著になったタイミングですが、同タイミングでオーストラリア、イギリスともに関心度が急激に低下していることがわかります。

その後の推移をみますと、イギリスはほぼ横ばいの動きをしているのに対し、オーストラリアは緩やかな回復傾向を継続的に見せています。COVIDの影響がまだまだ強いイギリスと一定の回復を見せたオーストラリアの特徴がよく出ているかと思います。

国別トラベル関心推移のグラフ
▲図1:国別 トラベル関心推移 (週次移動平均)

年代別では若年層の回復が早い

図2はそれぞれの地域の傾向を年代別で示したものです。

色が濃い線が年齢が高く45〜64才、色が薄いのが18〜34才のセグメントになります。

イギリスにおいてはどちらの年代も低くとどまっていますが、オーストラリアでは若いセグメントのほうが回復傾向が明確に強く出ていることがわかります。

アメリカ市場でも同様の分析を行ったことがありますが、その際も同様の傾向が確認できており、若年層の旅行関心の回復の早さはいずれの国でも当てはまる傾向かもしれません。

国別かつ年代別のトラベル関心推移のグラフ
▲図2:国別かつ年代別のトラベル関心推移 (週次移動平均)

"子供ありなし"の影響は目的地によって異なる傾向に

オーストラリア市場は動きがありそうなのでさらに分析を進めます。

図3はオーストラリア消費者の日本旅行とアメリカ旅行に対する関心で、その関心を子供ありなしで示したグラフになります。

アメリカ旅行は子供のいないセグメントが、日本旅行は子供のいるセグメントが比較して高い傾向が出ています。

COVIDの前からの傾向もあるかもしれませんが、COVID影響が強いアメリカに対しては子供を連れて行きにくく、安全と見られている日本に対しては子供を連れていける、というマインドの結果かもしれません。

子供がいないためトラベル関心の回復が早いとは一概にいえないようで、この傾向の差についてはさらなる検証が必要そうです。

オーストラリア市場における消費者属性別かつ旅行先別のトラベル関心推移のグラフ
▲図3:オーストラリア市場における消費者属性別かつ旅行先別のトラベル関心推移 (週次移動平均)

彼らへの効果的なアプローチ

先程のデータ検証の結果、トラベル関心の回復に年代要素は重要ということがわかりました。

一方、子供のありなしの影響はまだ明確には分かっていません。そのため今回は、18〜34才のセグメントを重点セグメントと考え、彼らは今どのような関心があるかを最後に紹介します。

観光全体に対する関心はまだ国内がメイン

5月1日から6月末までの期間におけるトラベル関心を昨年と今年で比較しました(図4)。

比較して特徴的だった点をあげますと、まずエアトラベル(飛行機を伴う旅行)への関心は昨年と比較して限定的です。

国内旅行は回復してきているのか、『シドニーからのベスト日帰り旅行』や『子供と行くクイーンズランドのおすすめ観光』などへの関心が伺えます。

海外に関係ある部分ではベストプレイスを複数載せたまとめ記事などの閲覧が多い傾向があります。旅行検討の時間が多くあるためか幅広く、また次の旅行をより良いものにするためにベストな旅行先を探しています。

今後コンテンツを拡充する際にはエリアやテーマを絞ったBest PlacesやThings to DOといった内容が有効と考えられます。

アメリカ市場を分析した際には高関心として確認できた、バーチャルトラベルへの関心は高くなく一定量にとどまっていました。COVIDだけではなくトレンドの影響もありそうですがカヤックに対する関心は昨年より高まっている点は興味深いです。

秋以降の大阪と北海道に注目か

日本旅行への関心に目を向けると、Go To Travelキャンペーンはかなり関心を高めたようで、Go To Travelはオージーにも適用されるかもしれない、といった賑わいが確認されました。

地域では大阪、北海道への高い関心、また紅葉への関心の高まりが確認されました。規制緩和された際には秋以降、北海道ならびに大阪を中心とした日帰り旅行圏内は注目を浴びそうです。

オーストラリア消費者18-34才の2020年5月-6月と2019年5月-6月のトラベル関心比較結果の表
▲図4:オーストラリア消費者18-34才の2020年5月-6月と2019年5月-6月のトラベル関心比較結果(抜粋)

著者プロフィール

齊藤飛鳥
▲齊藤 飛鳥氏 Sr. Manager, Business Development and Data analytics, Amobee Japan

齊藤 飛鳥(さいとうあすか)

Sr. Manager, Business Development and Data analytics, Amobee Japan

データ整備からデータ分析、またデータを活用した事業開発などデータ活用を軸として10年以上活動。

Amobeeでは特にデータ分析と事業開発の知見を活かし、インバウンド戦略に有効なインサイトを提供中。

筑波大学第一学群卒業。英国にてMBA(経営学修士)を取得

趣味は少し前に始めた日本舞踊(若柳流)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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