改めて振り返る、2019年訪日外客数データ/インバウンド市場を読み解く3つの指標

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現在、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、国内外で人の行き来が制限されています。

そのため、2020年6月の訪日外国人観光客は前年同月比99.9%減の2,600人となっており、インバウンドにも大きな影響を与えています。

一方、2019年までの訪日外国人観光客数は、毎年右肩上がりに増加していました。昨年はラグビーワールドカップが開催されたことも寄与し、訪日外国人観光客数が過去最多となりました。

この記事では、2019年の訪日外国人観光客数や国別ランキング、観光庁が行なった「訪日外国人消費動向調査」や「訪日外国人の消費動向」といった調査から読み解くインバウンド状況について解説します。

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2019年 国別の訪日外国人ランキングトップ20

2019年のインバウンド状況は順調で、多くの外国人観光客が日本を訪れていました。

以下では、2019年の訪日外国人観光客数や、国別の訪日外国人ランキングについて解説します。

毎月JNTOから発表される「訪日外客数」

日本政府観光局JNTO)は、訪日外国人観光客数を毎月公表しています。

2019年の訪日外客人の総数は31,882,049人と、前年比2.2%増で過去最高を記録しました。

2019年に入国者数が多かった上位20か国は以下の通りです。

国名 訪日外客数

伸び率(前年同月比)

1 中国

9,594,394人

14.5%

2

韓国

5,584,597人

-25.9%

3

台湾

4,890,602人

2.8%

4

香港

2,290,792人

3.8%

5 米国

1,723,861人

12.9%

6 タイ

1,318,977人

16.5%

7 豪州

621,771人

12.5%

8 フィリピン

613,114人

21.7%

9 マレーシア

501,592人

7.1%

10 ベトナム

495,051人

27.3%

11 シンガポール

492,252人

12.6%

12 英国

424,279人

27.0%

13 インドネシア

412,779人

4.0%

14 カナダ

375,262人

13.5%

15

フランス

336,333人

10.3%

16 ドイツ

236,544人

9.8%

17 インド

175,896人

14.2%

18 イタリア

162,769人

8.5%

19 スペイン

130,243人

9.5%

20 マカオ

121,197人

11.5%

▲[2019年の入国数が多い上位20か国] : JNTOの資料より編集部作成

韓国以外の市場は全て増加

2019年、日本に入国した外国人観光客数は、韓国で前年比-25.9%となったものの、韓国を除く全ての国では前年度よりも増加しました。

韓国からの入国者数が減少した原因としては、韓国で勃発した日本製品の不買運動が挙げられます。

韓国では、日本が輸出を厳格化した7月以降、日本製品の不買運動が相次ぎ、日本製のビールや衣料品に加えて日本への旅行も不買の標的となりました。

JNTOは「韓国経済の低迷に加え、7月以降の日韓情勢もあり、航空便の減便や運休による航空座席供給量の減少などから、訪日旅行を控える動きが発生した」と分析しています。

韓国が「ボイコット・ジャパン」しきれない4つの事情:浸透する日本製品、あらがえない日本旅行の魅力

日韓関係の悪化から、2019年夏より活発化した「ボイコット・ジャパン」による訪日旅行の需要減少が、冬の繁忙期をむかえて、回復傾向がうかがえます。韓国の航空会社が札幌・沖縄路線の運航を再開するといった供給拡大が、需要促進につながった理由の一つとして考えられるでしょう。さらに今年2月には、新型コロナウイルスの拡大を受け中国路線を運休していた韓国LCCが、振り替え先として日本線を検討していることも明らかになりました。「ボイコット・ジャパン」が開始されてから半年がたった今、インバウンド韓国市場の最...


ラグビーワールドカップで欧米豪市場が急増

2019年、ラグビーワールドカップ日本大会が開催されました。これをきっかけに、ラグビー強豪国である欧米・豪州諸国からの訪日外国人観光客数が大幅に増加しました。

ラグビーワールドカップは、9月から12月にかけて全国各地で試合が行われ、日本各地に熱狂をもたらしました。インバウンド消費としては「訪日外国人観光客のうち、ラグビーワールドカップを観戦した人の旅行費は、観戦していない人の2.4倍にもなった」というデータ(観光庁調べ)からわかる通り、日本に多大な経済効果を生みました。

また、JNTOが「9月の訪日外国人観光客数は、前年同月比で5.2%増加した」と公表していることからも、ラグビーワールドカップはインバウンド市場に大きく影響を与えたといえます。

【ラグビーW杯】経済効果6,464億円、うち54%が「インバウンド消費」だったと明らかに:日本ラグビー協会が公式レポートを公表

日本ラグビー協会は6月24日、2019年秋に開催されたラグビーワールドカップ日本大会の分析レポートを公開しました。全国12都市で44日間にわたり、42試合(台風で中止になった3試合除く)が開催され、約1か月半のあいだ日本が熱狂した同大会は、日本人にとって記憶に新しいことでしょう。同レポートによると、大会の経済波及効果は過去最高の6,464億円(4,309百万ポンド)となり、うち訪日客による消費が54%の3,482億円を占めたようです。以下では、ラグビーW杯日本大会の影響を、同レポートの分析...


観光・レジャー目的の都道府県別訪問率

訪日外国人観光客の中には、日本を初めて訪れる人もいれば、複数回訪れているリピーターもいて、その属性により観光のタイプは異なります。

以下では、2019年の「訪日外国人消費動向調査に基づき、外国人観光客の訪日回数による訪れる場所の違いについて解説します。

訪問率により訪れる場所に違いがある

観光庁が2019年に行なった「訪日外国人消費動向調査」によると、訪日外国人観光客は、訪日回数によって訪れる場所が異なると判明しています。

三大都市圏(千葉県、埼玉県、東京都、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県)の延べ訪問率は、訪日回数「1回目」の訪日外国人観光客で高く、三大都市圏以外(地方部)の延べ訪問率は訪日回数「2回目以上」のリピーターで高いことがうかがえます。

訪問地別に見ると、訪日回数「1回目」の訪日外国人観光客は、三大都市圏のみ訪れる人が40.0%です。一方、訪日回数「2回目以上」の人のうち、三大都市圏のみ訪れる人は39.0%で1ポイント減少しており、地方にも興味を持っていることが予想できます。

1回目の訪日都道府県ランキングTop10

訪日回数「1回目」の訪日外国人観光客の訪問率が高い都道府県は、以下の通りです。

都道府県

訪問率

1

東京都

60.1%

2 大阪府

58.0%

3

京都府

48.4%

4

千葉県

44.5%

5

奈良県

20.8%

6

愛知県

14.1%

7

山梨県

12.3%

8

静岡県

9.8%

9

神奈川県

9.5%

10

北海道

7.1%

▲[2019年に訪日「1回目」の訪日外国人が多く訪れた上位10都道府県] : JNTOの訪日外国人消費動向調査より編集部作成

上位4位以内の、訪問率40%以上の県は全て三大都市圏の都府県であり、初めて日本を訪れる外国人観光客からの高い人気がうかがえます。

2回目以降の訪日都道府県ランキングTop10

訪日回数「2回目以上」の訪日外国人観光客の訪問率が高い都道府県は、以下の通りです。

都道府県 訪問率
1

大阪府

35.4%

2

東京都

32.8%

3

千葉県

26.3%

4

京都府

22.0%

5

福岡県

12.2%

6

北海道

11.5%

7

沖縄県

9.4%

8

奈良県

8.6%

9

愛知県

7.1%

10

兵庫県

6.3%

▲[2019年に訪日「2回目以上」の訪日外国人が多く訪れた上位10都道府県] : JNTOの訪日外国人消費動向調査より編集部作成

訪日回数が2回目以上の外国人の訪問地では、1回目の訪日外国人に比べ、福岡や北海道、沖縄も上位にランクインしており、3大都市圏以外の地方にも足を運んでいることがわかります。

また、訪日回数が増えると、他にも1人当たりの旅行支出が高くなる傾向があります。

さらに、訪日回数が増えるにつれて、ショッピングなど都市部で行う「モノ消費」だけでなく、地方でしかできない経験などの「コト消費」へと関心がシフトしていく傾向もあります。

インバウンド対策としては訪日観光客の心をつかみ、日本を好きになってもらうことで、訪日旅行のリピートにつなげ、さらなる消費につなげることが重要だと考えられます。

訪日外国人の旅行目的

日本の魅力としては、日本料理や温泉・旅館といった観光スポット、季節により全く異なる四季などが挙げられます。訪日外国人観光客も、それらに関連した日本ならではの体験がしたいと考えることが予想できます。

以下では、2019年の「訪日外国人の消費動向」に基づき、外国人観光客の旅行目的について解説します。

訪日前に期待していたこと

観光庁が2019年に行なった「訪日外国人の消費動向」では、訪日外国人観光客が日本を訪れる前に期待していたことについての調査結果があります。

期待していたことのうち「日本食を食べること」が69.7%ともっとも多く次に「ショッピング」(52.6%)、「自然・景勝地観光」(47.0%)、「繁華街の街歩き」(43.3%)と続いています。

その他では「温泉入浴(26.7%)」、「日本の酒を飲むこと」(24.4%)、「日本の歴史・伝統文化体験」(22.2%)、「美術館・博物館等」(20.8%)、「旅館に宿泊」(18.9%)、「テーマパーク」(18.1%)と続いており、比較的コト消費に期待している訪日外国人観光客が多いことが予想できます(数値は複数回答)。

今回したことと次回したいこと

訪日外国人観光客が今回の日本滞在中にしたことで、もっとも多いのは「日本食を食べること」(96.6%)で、次いで「ショッピング」(82.8%)「繁華街の街歩き」(74.6%)「自然・景勝地観光」(65.9%)の順で選択率が高くなっています。

また、次回日本を訪れた時にしたいことでは「日本食を食べること」(57.6%)「温泉入浴」(49.2%)「自然・景勝地観光」(45.0%)「ショッピング」(42.9%)の順で選択率が高くなっています(数値は複数回答)。

「日本食を食べること」や「ショッピング」、「繁華街の街歩き」といった項目では、今回したこととしての回答率が高いものの、次回したいこととしての回答率は低く、回答率の乖離が大きくなっています。

一方「温泉入浴」や「スキー・スノーボード」、「四季の体感」といった項目では、今回したとの回答よりも次回したいとの回答の方が多くなっていることから、訪日外国人観光客は、訪日のたびに日本の新たな魅力を発見したいと考えていることがうかがえます。

様々なランキングを活用して最新のトレンドをつかむ

2019年の訪日外国人観光客は過去最多となり、アジア圏からの観光客を中心に多くの人が日本を訪れました。

初めて日本を訪れる外国人観光客は、三大都市圏に足を運ぶことが多い傾向であるものの、2回目以上のリピーター客はその他の地方にも興味を持つ傾向にあります。

また、訪日のたびに新たな日本の魅力を開拓したいと考える人が多いこともうかがえます。

今回はJNTOの「訪日外客統計」や、観光庁が行なった「訪日外国人消費動向調査」や「訪日外国人の消費動向」に基づいて分析を行いました。

これらのデータは月ごとや年ごとに更新されていくため、トレンドを掴むためには、最新のデータを手に入れる必要があります観光庁JNTOといった信頼できる機関からの情報を集め、インバウンド対策に生かしていくことが大切です。

<参照>

JNTO:訪日外客数(2020年6月推計値)

JNTO:訪日外客統計(2003年~2020年6月)

JNTO:令和元年訪日外国人消費動向調査「訪日外国人旅行者(観光・レジャー目的)の 訪日回数と消費動向の関係について」

JNTO:訪日外国人の消費動向(2019年度)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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