2021年に延期された東京オリンピックを控える中、新型コロナウイルスの感染拡大は欧米を中心に今もなお続いており、日本でも感染「第3波」が懸念されています。
そのような状況の中、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、11月15日~18日に来日する予定となっています。
東京オリンピック開催の可否に注目が集まる中、本記事では東京オリンピック開催に向けた見通しについて考察します。
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11月15日にIOCバッハ会長が来日予定:東京オリンピックはどうなる?
11月11日、IOCのバッハ会長は、11月15日~18日に来日し、2021年に延期された東京オリンピックに関する協議を行うことを明らかにしました。
IOCのコーツ副会長も同行し、菅首相や小池都知事と会談する予定となっており、オリンピックの開催に関して何らかの決定が下される可能性もあります。
一方バッハ会長は、11月11日のオンライン記者会見で東京オリンピックの中止について議論するか問われたのに対して、「しない」と否定しています。
また、「私たちは来年、新型コロナウイルスへの対策に何が必要かを感じ取るための決定的な段階に近づいているため、この訪日は重要だ」とも述べており、最近の日本で開催されているスポーツイベントが、観客を会場に入れて行われていることは自信を与えるものだとも話しています。
「疫病に打ち勝った証」としての東京オリンピック開催を目指す政府:無観客・規模縮小も視野に
日本国内では菅政権誕生以降、全世界からの入国制限緩和など、新型コロナウイルス対策としての活動制限の緩和が続き、経済活動の再開が目立っています。
安倍前首相が示した「完全な形」でなくても、東京オリンピックを開催したい考えで、菅首相は9月26日の国連演説で、「来年の夏、人類が疫病に打ち勝った証しとして東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意だ」と表明しています。
選手・国民の間で広がる不安の声:組織委 森委員長も中止に言及
日本政府とIOCが開催に向けて取り組みを進める一方で、東京オリンピック代表選手や国民の間では不安の声も広がっています。
2020年7月のNHKの世論調査「新型コロナウイルスの影響で延期された東京オリンピック・パラリンピックの来年7月からの開催について」では、「さらに延期すべき」と「中止すべき」と答えた人があわせて66%にのぼりました。
また民間調査会社「東京商工リサーチ」の調査では、 都内に本社を置く企業の30・7%が「来年のオリンピック中止」が望ましいと回答しています。
「延期」を望む回答も22・4%にのぼり、開催を望まない企業が半数を超える結果となりました。
出場予定の選手の間でも意見が分かれており、「声援がモチベーションになる」「簡素化されても開催されるだけで嬉しい」といった声が上がる一方で、「感染におびえながら無理に行うべきなのか」「オリンピック以外でも活躍の場はある」といった声も聞かれています。
大会組織委員会の森委員長は、2020年4月に、2021年に開催されなければ「中止になる」との考えを明らかにしています。
大会組織委員会は、2020年末に終了する予定となっているスポンサー企業の契約を延長してもらう交渉を行っていますが、スポンサー側は契約継続にあたって、企業から大会組織委員会への出向者の人件費などを負担するよう要請していると一部のメディアで報道されています。
大会延期に伴うチケットの払い戻しなどで、すでに出費がかさんでいる大会組織委員会にとって、さらなる費用負担は厳しいものとなっており、スポンサー企業と契約を延長できるかどうかも不透明な状況となっています。
小池知事 「五輪の簡素化」検討...「完全な形」での実施は困難か
2021年夏に開催される予定の東京オリンピック・パラリンピックについて、政府と大会組織委員会が開催の「簡素化」を検討していることが6月4日早朝、一部で報道されました。背景として、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、当初目標としていた東京オリンピック・パラリンピックの「完全な形」での実施が危ぶまれる可能性を考慮してと思われます。こうした報道がなされたことについて、東京都の小池都知事は「開催には都民、国民の皆様の共感とご理解が必要。そのためにも合理化すべきところ、簡素化すべきところを進...
そもそも東京オリンピックを開催する意義とは?
そもそも東京オリンピックを開催する意義とは、どのようなものがあるのでしょうか。
まず挙げられるのは、オリンピック開催による経済効果の大きさです。
オリンピックの誘致決定後には、開催国のインバウンド需要が長期間にわたって喚起される傾向があり、2008年の北京オリンピックでは、2001年の開催決定から2012年までの約10年で、訪中外国人が約3倍にも増えています。
2017年に東京都が示した東京オリンピックの経済効果は、雇用の促進や観光客・消費の増加を見込み、開催決定の2013年~2030年までで約32兆円にものぼっていました。
コロナ禍での開催となった場合はこれほどの経済効果は望めなくとも、開催国である日本のイメージ向上、文化や魅力を発信する大きな機会となることには変わりありません。
実際の例として2010年のバンクーバーオリンピックでは、国内外メディアと連携しカナダの情報発信活動を展開したほか、国際会議の誘致などによりカナダの国際イベントの実行力をアピールしました。さらに、観光地を巡る聖火リレーで、カナダ各地の観光地のプロモーションにつなげることにも成功しました。
その結果、2008年のリーマンショックによって落ち込んでいた訪加観光客は、バンクーバーオリンピック開催後に回復傾向に転じ、訪加外国人消費額も増加しました。
新型コロナウイルスの流行という世界的な危機を乗り越えてオリンピックを開催させたということとなれば、後世に長く語り継がれる大会となるかもしれません。
東京オリンピック開催の経済効果やメリット/延期で6千億円、中止なら4兆円損失との試算も
2020年に開催予定だった東京2020オリンピック・パラリンピックは、新型コロナウイルスの世界的パンデミックを受け、1年延期して開催が決定しました。世界中から人が集まる一大イベントであり、その開催が日本にもたらす経済効果は30兆円を超えるともいわれていました。一方で、開催後の景気の落ち込みや、治安の悪化を懸念する声もあります。延期が決まったことで経済損失も大きなものになると懸念されています。この記事では、東京オリンピックがもたらす日本経済へのポジティブな影響や、地方創生の可能性、また延期や...
中止になった場合、広範囲への影響は避けられない
一方で、もし東京オリンピックの中止が決定された場合、広範囲にわたる影響は避けられません。
インバウンド業界では、東京オリンピックに向けてホテル建設ラッシュがありましたが、このような先行投資が実を結ばない恐れがあります。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で経営が傾いている事業者も多い中、大きな痛手となるでしょう。
宿泊業以外でも、小売・サービス業など、東京オリンピックでの消費増を見込んでいた業界に広く影響がありそうです。
また日本政府にとっては、経済損失によるダメージはもちろん、内閣の支持率低下につながる可能性もあります。
大会組織委員会は、これまでかけてきた多額の費用と多大なる労力が無駄となってしまうかもしれません。
IOCも、NBCの東京オリンピック独占放映権料44億ドル(2014年ソチ冬季大会から2020年東京夏季大会までの権利)が受け取れなくなる可能性があります。
東京オリンピックのスポンサー企業に目を向ければ、日本国内の企業だけでなく、日本国内での放送権を買っていたメディアなど海外の企業にも影響があるでしょう。
その他にも、建設業や工事資材を扱う企業や警備会社にも影響するほか、CM広告の減少や、特番中止による減少などで民放各社にも影響が及ぶなど、さまざまな影響が考えられます。
感染拡大防止と経済再開を両立した先に見据える「東京オリンピック開催」
現在、新型コロナウイルス感染拡大は欧米を中心として続いており、日本でも「第3波」が懸念されています。
11月15日からのバッハ会長の来日により、オリンピックの開催可否について何らかの動きがある可能性もあります。
日本政府とIOCは、大会規模の縮小や無観客での開催なども視野に「開催中止」を否定しており、オリンピック選手の間でも開催を望む声も聞かれていますが、感染拡大を懸念し中止を叫ぶ国民の声も少なくありません。
しかしいざ中止になれば、東京オリンピックに関わるさまざまな人や組織、企業、業界など広範囲に影響が出ることは避けられません。
ただ東京オリンピックは経済の活性化だけでなく、日本の魅力や文化、観光地を国外に広くアピールできる場でもあり、無観客となった場合でも、インバウンドに対するアフターコロナの旅行意欲の訴求となりうるでしょう。
今後の状況を注視しつつ、オリンピックの開催実現が期待されます。
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<参照>
BBC NEWS JAPAN:東京五輪、「再延期はない」 森会長が言明
観光庁:過去のオリンピック・パラリンピックにおける観光の状況
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