東京オリンピック開催の経済効果やメリット/延期で6千億円、中止なら4兆円損失との試算も

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2020年に開催予定だった東京2020オリンピック・パラリンピックは、新型コロナウイルスの世界的パンデミックを受け、1年延期して開催が決定しました。

世界中から人が集まる一大イベントであり、その開催が日本にもたらす経済効果は30兆円を超えるともいわれていました。

一方で、開催後の景気の落ち込みや、治安の悪化を懸念する声もあります。延期が決まったことで経済損失も大きなものになると懸念されています。

この記事では、東京オリンピックがもたらす日本経済へのポジティブな影響や、地方創生の可能性、また延期や中止の場合の経済損失について解説します。

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東京オリンピックの経済効果は?

2017年に東京都が公表した試算によれば、東京オリンピック招致が決まった2013年から大会が終了した10年後の2030年までの18年間で、経済効果は約32兆円とのことです。

その32兆円の内訳は13年から20年までの8年間で21兆円、21年から30年までの10年間で11兆円で、大会終了後も経済効果があると見込まれています。32兆円のうち6割が東京都への経済効果、残りがそのほかの地域と考えられ、経済効果は日本全国へ広がるとみられています。

オリンピックによる付随効果は直接効果の10倍以上!?

東京オリンピックの経済効果は、競技会場の整備など大会開催のための直接的投資訪日外国人観光客の増加などの付随効果の2つに分けて計算されます。

このうち、付随効果の方が圧倒的に大きな経済効果を持つと予想されています。

直接効果は2兆円程度に止まると見られていますが、インフラ整備・インバウンド対応などによる付随効果は28兆円に上ると見られています。

付随効果によるインバウンド市場への経済効果も大きなものになると考えられており、オリンピックはインバウンド事業者にとっても事業拡大の大きなチャンスといえます。

「一年延期」の経済損失は約6,408億円、「中止」の場合は約4兆5,151億円とも

関西大学の宮本勝浩名誉教授は、東京オリンピック・パラリンピックが延期あるいは中止になった場合の経済損失について試算したところ、1年延期となった場合は約6,408億円、中止となった場合には約4兆5,151億円になると2020年3月19日に公表しています。

この場合の経済損失とは、東京オリンピック・パラリンピックが延期もしくは中止になった際に発生するコストと、開催によって盛り上がるとされる付随効果が失われた場合の額を合計したものを意味しています。

東京オリンピック・パラリンピックが経済に与える影響額については諸説存在しますが、中止となってしまった場合はもとより、延期となった場合にも大きな経済損失が発生することがわかります。

東京オリンピック開催がもたらすメリット:地方創生なるか?

約32兆円という経済効果が想定されている東京オリンピックですが、実際にはどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは東京オリンピックによって私たちの生活に起こるであろう変化について解説していきます。

高まるオリンピックムードにより消費活動が活発になる

まず考えられるのが、オリンピックを見据えた消費活動の活発化です。

森記念財団都市戦略研究所が2014年に発表したレポートによればオリンピックによって個人消費が活発化することが指摘されています。

たとえば、オリンピック中継をより美しく大きなテレビで見たいとのニーズが上昇し、テレビ購入の増加が想定されています。

オリンピックがもたらす高揚感や期待感によって消費者の消費行動が促進されることで、日本国内における内需が上昇する可能性があります。

地方の民泊利用者が増加

続いて外国人観光客の東京以外での民泊利用です。増加する訪日観光客ですが、オリンピック開催によってその増加には拍車がかかると考えられます。そこで問題となるのが宿泊施設不足です。

特に東京や大阪などの都市圏で宿泊施設不足が発生する可能性が高く、それに伴って大都市圏以外での民泊需要が増加すると考えられています。外国人が地方で民泊を利用することは同時に地方の魅力を発信する好機です。

疲弊する地方経済の起爆剤ともなりうる動きが、オリンピックの開催を機に加速するのではないかといわれています。

雇用ニーズが高まる 80万人の雇用創出

雇用ニーズが高まることもオリンピックによる大きな変化でしょう。

とりわけ競技会場などの施設建設を担う建設業や、外国人対応にあたるサービス産業において、雇用ニーズの上昇が顕著です。リクルートワークス研究所のレポートによれば、建設業で33.5万人、サービス業では16.8万人ほどの雇用が発生すると想定されています。

雇用全体では80万人ほどの雇用ニーズが高まると言われ、人口減少に伴う労働力不足に悩む日本にとっては人材確保も大きな課題になるのも事実です。

いいことばかりではない?オリンピック開催を前に日本が直面する問題点

これまでオリンピックによる経済効果やもたらされる社会の変化について解説してきました。そのどれもがポジティブな事柄でしたが、一方で実際にはオリンピック開催による負の側面も存在します。ここではオリンピック開催によるデメリットや懸念点を解説していきます。

開催後の景気の落ち込みを懸念する声も

オリンピック開催前までは特需と言われるほど経済が上向きになりますが、大会終了後、その反動で経済が落ち込む可能性が度々指摘されています。

事実、日本経済は前回の東京オリンピック後に落ち込みを見せています。内閣府が公表した「平成29年度年次経済財政報告」によると、実質経済成長率は1964年が11.2%なのに対し、翌65年は5.7%となっています。

1965年は56年からの10年からでもっとも成長率が低下した年であり、オリンピック開催によるものと見られています。

先述の32兆円の経済効果も実際には景気の落ち込みを計算に入れていない試算のため、実際の経済効果がどのくらいのものになるのか、本当にオリンピックが景気を押し上げるのかはまだ不透明です。

マナーの問題・治安の悪化

世界中から多くの人々が集まるオリンピックですが、それは同時に日本や東京に多くの文化が混在することに他なりません。

それによって文化的な軋轢や衝突が生まれうることも事実です。マナーの問題や治安の悪化を懸念する日本人は多く、日本法規情報によれば、東京オリンピックのデメリットと感じるものとして「治安が悪くなる」が最多で31%「外国人との文化の差による問題」は12%という数字が出ています。

外国人材の受け入れを積極的に進める日本ですが、日本の中でいかに多文化共生を根付かせていくのかということは、オリンピックを契機に改めて考えるべきテーマと言えそうです。

開催延期に伴う経済損失

3月19日、関西大学宮本勝浩名誉教授が発表した大会延期によって約 6,408 億円が失われると試算しました。

内訳は以下の通りです。

  • 「競技場、選手村などの施設の1年間の維持、修理、管理の費用」約225億円
  • 「大会に関係する各種スポーツ団体の五輪に合わせて再び準備する 1 年間の必要経費」約3900億円
  • 「その他の広報、連絡関係の経費など」約100億円
  • 「新規恒久施設・選手村などの後利用、東京のまちづくり、環境・持続利用性のレガシー効果」「 スポーツ、都民参加・ボランティア、文化、教育・多様性のレガシー効果」「経済の活性化・先端技術の活用のレガシー効果」などから、約2183億円

延期によって経済だけでなく、選手村の2023年3月下旬から入居延期の可能性やスペシャルナビゲーター起用が決まっている嵐は続投するのかなど経済以外にも懸念点を解消していかなくてはいけません。

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東京オリンピック開催後も持続可能な観光地を目指す

東京オリンピック開催にあたり、30兆円規模での経済効果が想定されています。中でも注目すべきなのはその経済効果のほとんどが訪日外国人対応やインフラ整備などによって得られる経済効果=付随効果である点です。

すなわちオリンピックは観光業を成長戦略として位置付ける日本にとって千載一遇のチャンスです。なぜなら日本にとって東京オリンピック開催は多くの訪日外国人へ日本をアピールする機会に他ならないからです。

しかし、その中でもマナーの問題や治安の問題など日本国民が抱える不安感や恐怖感は確かに存在します。これらの課題を乗り越えながら旅行者が気持ちよく訪日旅行を楽しめる環境を整備することは困難が伴います。

だからこそ世界の中で訪日旅行が一過性のブームとして終わらず、持続性のある日本独自のコンテンツにしていくには地道な準備が欠かせません。まずは開催まで500日を切った東京オリンピックに向けて外国人対応を進めていくことが観光立国・日本への確かな一歩になるでしょう。

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<参照>

東京オリンピック/「1年延期」で経済損失約6408億円(関西大学試算)

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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