「ハラル(ハラール)」とは、イスラムの教えで「許されている」ということを意味し、ムスリムの人々にとって生活に密着した極めて重要な概念です。
世界のムスリム人口やムスリム訪日観光客の増加を考えると、ハラルの理解を通したムスリムの人々への対応は求められるようになっています。
本記事ではハラル対応の重要性やハラルの定義、対象となるもの、対応施策などについて整理します。
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ハラルとは?なぜ今対応が必要なのか
イスラム教徒であるムスリムの人口は増加傾向にあり、その増加幅はキリスト教徒やヒンドゥー教などほかの主要宗教より顕著です。
また訪日観光客における東南アジア諸国からのインバウンドも増えており、インドネシアやマレーシアなどからのムスリム観光客は多いと考えられます。
そのため、ムスリムにとって生活の基準となる「ハラル」について理解を深めることが重要です。
ムスリムにとっての重要概念「ハラル」
「ハラル」は「ハラール」とも表記され、イスラム教の教えにおいて「許されている」という意味をもつ言葉です。
多くのイスラム教徒が守りながら生活しているイスラーム法には、厳格に定められた合法的なものと非合法的なものが存在します。
非合法なもののことをハラム(ハラーム)といい、近年では非ハラル(non halal)と称する事もあります。
ハラルとハラムの区別の基準は、基本的にその対象が「神に許されている」か「禁じられている」に依ります。
イスラム教徒であるムスリムにとって、ハラルは生活するにあたって考慮しないことはできません。
日本国内、世界で増加するムスリム人口
ムスリムの人口は世界最大のムスリム国家であるインドネシアをはじめ、増加傾向にあります。
アメリカのシンクタンク「ピュー研究所(Pew Research Center)」によれば、2015年時点で全世界のムスリム人口は18億人であるとされ、世界人口の約4分の1を占めるまでになっています。
宗教別で人口を見た場合、1位はキリスト教徒の約23億人で世界人口の31%を占めているとされ、イスラム教はキリスト教に次ぐ2位に位置しています。
また同機構の予想では、ムスリム人口は2060年までに30億人近くに増加し、世界人口の31.1%を占めると予測されています。
日本においては、ムスリムの人数はまだ少ないものの、外国人労働者や留学生の増加にともない、その数が増加傾向にあります。
早稲田大学の店田廣文氏は、日本に住むムスリムの数は、過去10年間でおよそ2倍以上に増えており、2010年の11万人から2019年末には23万人へとなったと示しています。
上述したように、増加しているムスリム対応に関する取り組みが問われていると考えられます。
訪日外国人が増えている今、対応が必要
2019年の訪日観光客数のデータを見ると、約70%を東南アジアや東アジアからの旅行者が占めています。
東南アジアには2億人と世界最大のムスリム人口をかかえるインドネシアがあり、ムスリムの観光客も日本へと観光に来ている傾向が伺えます。
しかしながら、日本の多くの観光地ではハラル対応に遅れが出ているという問題があります。
観光庁の「訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プランの概要」によれば、訪日ムスリムやムスリム向けの旅行会社から、ハラル基準に適合した食べ物やその成分の表示が不十分であること、そもそもムスリム向けの食事ができるお店が少ないこと、礼拝できる場所が少ないことなどの点で不満が上がっています。
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実際は何が「ハラル」「ハラム」なのか
ハラルやそれに相反する概念としてのハラムは、国や地域、個人や学派によっても解釈が異なります。
基本的な原則として、豚やアルコールなどは禁忌であるとされますが、細かい例外も存在します。
本項ではハラルとハラムの違いや、ハラルに関するポイントを紹介します。
一般的にハラムとされるものや行為
一般的にムスリムにとってハラムとされているものや行為として「豚肉やお酒を口にする」「嘘をつく、物を盗む」などが挙げられます。
ハラムとされるものの定義は個人や宗派、所属団体によって見解が異なるため、自分で判断できないものに関しては「シュブハ」として避けることも多くあります。
ハラルな食べ物
イスラム教においてハラルとされている食べ物は主に野菜や果物、穀物や魚介類、卵や牛乳とされています。
動物の肉に関しては、イスラム法によって定められた方式を採用して屠殺した家畜の肉やその加工製品もハラルとして認められることがあります。
ただし、豚に関してはこれらの例外なく全てが禁止されています。
ハラム、シュブハな食べ物
ムスリムの人々はハラムされているものを手にしたり口にすることはできません。
豚や犬などの不浄とされている動物や酒、死んだ動物の肉、イスラムの方式にしたがって屠殺されていない家畜の肉とその加工品はハラムと定義されます。
特に豚とアルコールは、非ハラルなものとして日本でも広く知られています。
ハラムとされるものの中でも忌避される度合いは異なり、多くのムスリムは特に豚を避ける傾向にあります。
アルコールに関しては調味料に含まれる微量なものも禁じるかどうかは個人や宗派によって異なり、自然に発生したアルコールであれば問題ないとする場合もあります。
またアルコールが含まれているかどうか不明なものや、屠殺方法が不明な牛肉や鶏肉はシュブハとして避けられる傾向にあります。
ハラル認証を受けてムスリムをおもてなし
日本にもハラル認証する機関が存在し、その数は15機関以上にもなります。
これらの機関から認証を受けて、ハラルに適合した商品やサービスを提供していることが証明されれば、認証マークを店舗や施設に掲示できます。
これによってムスリムの人々は、ハラルに対応した店舗を容易に見分けられ、安心して観光を楽しむことができます。
ムスリムに安心を与えられる「ハラル認証マーク」
ハラル認証マークはムスリムがその製品やサービスがハラルであるかどうかを容易に判断できるようにするための認証制度です。
宗教的な適合性と食品化学の両面から専門家が評価し、ハラルであることを第三者が担保します。
しかしこれらの認証団体は世界に200以上、日本だけでも15以上存在し、いまだに統一的なハラルの基準は存在していないのが現状です。
日本でできる対応やハラルビジネスは?
日本でムスリムに対応したハラルビジネスを展開する場合、一般社団法人ムスリム・プロフェッショナル・ジャパン協会の見解によると、各事業者は3段階の対応方法が考えられるようです。
- ムスリムフレンドリー:ムスリムやハラルについての基本的なことを理解して、受け入れる側ができる範囲でハラル対応していくこと。
- 国内流通向けハラル認証/ローカルハラル認証:専門の認証機関からハラル認証を受けハラルに対応する。
- 輸出向けハラル認証:最も厳しい基準を設けているとされるマレーシア、インドネシアの認証機関から認証を受けることで、海外のイスラム教国家などに輸出していくこと。
上記の三段階があげられています。
なお「訪日外国人をもてなす」と考えるインバウンド事業においては、1と2の段階においてハラル対応することが望まれます。
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ハラルを理解してムスリム観光客を迎える準備を
ハラルはムスリムの人々にとって生活から切り離すことのできない概念です。
ムスリムの人々を迎える上ではハラルを理解することが必要不可欠です。
しかし、地域や宗派、国によってハラルの基準が異なることから、画一的な基準は存在しておらず少々扱いが難しいのも事実です。
日本の各観光地でハラルに対応した施策を実施する際には、ムスリムについての基本的なことを理解し、できる範囲でハラル対応していくムスリムフレンドリーや、専門の認証機関からハラル認証を受けるなどのレベルが考えられます。
アフターコロナのインバウンド回復時に、ムスリムの人々も安心して日本観光を楽しめるよう、ムスリムやハラルに対する理解を深め、徐々に対応していくことが大切です。
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<参考>
・観光庁:訪日ムスリム旅行者対応のためのアクション・プランの概要
・Pew Research Center:The Changing Global Religious Landscape
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