コロナ禍で消費傾向の変化がより強まっている中で、「モノ消費からコト消費」という消費傾向の変遷を経て、最近では「トキ消費」が注目されています。
「トキ消費」とは、同じ体験を再現できない「非再現性」、さまざまな人々と体験や感動を共有する「参加性」、イベントや体験の盛り上がりに参加している「貢献性」の3要件を満たす消費のことです。
本記事では、「トキ消費」の特徴や、ビジネスチャンスに活かすポイントについて解説します。
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新たなキーワード「トキ消費」とは
トキ消費は、「その時、その場所でしか味わえない盛り上がり」を楽しむことへのニーズから生まれた消費潮流です。似たような言葉で「コト消費」があるため、以下で違いを説明します。トキ消費がもつ3つの特徴、コト消費との違いは「体験」に留まらないこと
トキ消費とは、人と何かを体験したり、生み出したりするトキを共有する消費潮流のことです。博報堂総合研究所が、モノ消費、コト消費に続く消費潮流として、2017年より提唱しています。コト消費とトキ消費は、「参加型」で、「二度と同じ体験ができず」「貢献した」と実感ができる点で異なります。
トキ消費は、以下の画像で示す3つの要件を満たしています。
時間や場所が限定されていて同じ体験を再現できない「非再現性」、不特定多数の人と体験や感動を共有する「参加性」、イベントやサービスの盛り上がりに貢献していると実感できる「貢献性」の3要件を満たすと、トキ消費を生み出せます。
ただ「体験している」だけではないところにコト消費との違いがあります。
背景はインターネットの普及、コロナ拡大も後押し
これまで、モノの所有に価値を見出す「モノ消費」が広がり、その後モノが普及すると、より新しく珍しいコトの体験が価値となる「コト消費」へと消費潮流の変遷がありました。その後、インターネットが普及したことでコト消費の疑似体験が可能になり、「その時、その場所でしか味わえない盛り上がりを楽しみたい」という欲求が生まれたことがトキ消費へと変化した背景だと考えられます。
さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大で、多くのイベントが中止となり「リアルな参加」が断念される中で、イベントのオンライン化が進んだことも影響しています。時間の余裕がない、物理的な距離などでトキ消費を諦めていた方も、オンライン化によって参加するハードルが下がったといえるでしょう。
トキ消費をビジネスチャンスに活かす3つのポイント
トキ消費をビジネスに活かすためには、3つのポイントをおさえることが重要です。それぞれのポイントについて以下で解説します。1. トキのお題を与える
「トキのお題を与える」とは、参加者がそのトキに盛り上がれるような新しい記号やルールをお題として提供することです。その結果、顧客が受け身な存在にならずに、主体的に動いてもらえることが期待できるでしょう。例えば、特定の期間だけしか手に入らない限定商品を提供することが挙げられます。
2. 新しいトキをつくる
「新しいトキをつくる」とは、新しい習慣を設定したり生み出したりすることです。日常性からの脱却、つまり「新しい歳時記や旬を開発する」という視点を取り入れることで、従来はモノ消費やコト消費であったものでも、「トキ消費」へと発展させられる可能性が高まります。
3. モノ、コト、トキを循環させる
モノ、コト、トキを循環させることとは、モノ消費やコト消費を「トキ消費」へとつなげることです。イベントやサービスにおける非制限性と参加性を高めることで、「コト」を「トキ」に変化させられます。
また、「モノを介した体験型サービス」を提供することで、「モノ」を「トキ」にできます。そして、商品に「いまだけ、ここだけでしか買えない」などの限定性がある価値を付加させることで、「モノ」が「トキ」になるでしょう。
トキ消費を取り入れたマーケティング事例
モノ消費やコト消費を「トキ消費」に変化させる取り組みを実施し、すでに成功している企業や団体もあります。ここでは、トキ消費を取り入れたマーケティング事例を紹介します。1. 日本愛妻家協会
日本愛妻家協会では、1月31日を語呂合わせで「愛妻(アイサイ)の日」と制定し、さらに8時9分も語呂合わせで「Hug(ハグ)」とすることで、「1月31日の8時9分に夫婦でハグをしよう」というプログラムを生み出しています。イベントや祝日などがなかった日を「特別な日」として制定し、時間も指定することで、さらに限定性と再現性の低さを創出している事例といえます。
2. Glico(江崎グリコ)
Glico(江崎グリコ)では、1999年に11月11日を「ポッキー、プリッツの日」と制定し、新しいトキを生み出しました。さらに、参加型イベントも開催することで、「トキのお題を与える」という点もおさえられています。また、コロナ禍で人と触れ合う機会が少なくなっている昨今でも、SNSを利用して共通点でつながろうというキャンペーンを実施しています。
Twitterに「#プリッツ組 #ひとり読書組」などの楽しみ方を投稿することで、離れていても共有できる「参加性」と、イベントを盛り上げている「貢献性」を生み出しています。
3. フレッシュネスバーガー
フレッシュネスバーガーでは、過去に、期間限定でメニューの生き残りを決めるキャンペーンを実施していました。売上数ランキングにおいてワースト1位の商品を販売終了させるか、継続させるかを対象期間中の商品売上で決めるという内容です。結果として、そのメニューの売上はキャンペーン実施前よりも3倍以上を記録しています。
消費者の購入状況によって結果が変わることは、「トキのお題を与える」、「貢献性」と関連性があります。SNSを通じた、リアルタイムでの売上状況の配信も行い、これはトキ消費の「参加型」を実際に表しています。
4. オンラインダイニング「ズムメシ」
ズムメシとは、「お気に入りのあのお店にZoom(ズーム)で集まろう!」という企画です。各世帯が同じ飲食店から食材を取り寄せて、決められた日時にオンラインを通じて食事会を開催します。そこに飲食店のスタッフも加わり、厨房の様子や料理、材料などについて会話します。
この企画では、消費者や料理人、生産者がそれぞれの場所からアクセスするため、特別なトキの共有が可能です。つまり、「コト」が「トキ」に変化しており、「モノ」「コト」「トキ」を循環させることにもつながります。
変わりゆく消費潮流を捉えることが大切
「モノ消費」から「コト消費」への変遷があったように、昨今では「トキ消費」という消費潮流が生まれています。「トキ消費」は、企業が消費者と共に生み出すものともいえる特徴があります。「トキ消費」は、新たなビジネスチャンスを捉える際に、おさえるべきトレンドして重要です。さらに、最近では「イミ消費」や「エモ消費」なども生まれており、今後も消費潮流は変化していく可能性があるでしょう。
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<参照>
博報堂:モノ、コトに続く潮流、「トキ消費」はどうなっていくのか江崎グリコ:ポッキー&プリッツの日
江崎グリコ:なぜ?なに?コーナー
株式会社フレッシュネス:プレスリリース
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