SITとは「Special Interest Tour」の頭文字の略で、特別な目的に絞った旅行のことを指します。
本記事では、SITの定義と事例について紹介します。
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SITの定義
SITの定義について解説します。
SITとは 特別な目的に絞った旅行
SITとは「Special Interest Tour」の頭文字の略で、趣味やテーマ性が高い特別な目的に絞った旅行のことです。
SITはもともと、従来の一般的な周遊・滞在型の旅行とは異なり、スポーツ観戦やサイクリング、美術・音楽鑑賞などの旅行目的に従って旅行地が設定される旅行のことを指していました。
現在では海外旅行自体が成熟化し、パッケージツアーにおいても目的を絞った旅行が多様化しています。
SITに含まれる旅行の対象が拡大したため、あえてSITと呼ばれる領域の旅行は少なくなりました。
インバウンドにおいては、日本の冬を体験したり、夏の花火を楽しんだり、サイクリング大会に参加するなどのSITと呼ばれるツアーが開催されています。
また国内で人気のアニメの聖地やお遍路をめぐる旅なども、SITの一種といえます。
SITには、有名観光地には一通り行ってしまった人など、普通の観光では物足りないと感じる人向けの需要があります。
国内観光客向けのSIT
国内観光客向けのSITについて紹介します。
インフラツーリズム
インフラツーリズムは、橋やダム、港などのインフラ(公共施設)を観光として楽しむものです。
普段はなかなか入れない歴史的な遺構や、先端的な産業施設などを訪ねるツアーは、非日常の体験を気軽に楽しみたい観光客から人気を博しています。
工場など非公開施設の見学や、高速道路開通前のイベントなど、自治体や民間事業者とのタイアップによって実現した限定性の高いコンテンツづくりは、地域づくりの礎を築くことにもつながります。
経済的な非合理性という観点からメディアに取り上げられることも多かった八ッ場ダム事業は、2015年に八ッ場ダムの本体工事が始まりました。
ダム見学が多くの観光客を呼び込むようになり、最近ではインフラツーリズムの成功例として取り上げられるようになっています。
八ッ場ダムツアーは、東日本有数の観光地である草津温泉や軽井沢にも近く、多くの車が通行する観光ルート上にあることも注目されました。
列車ツアー
2020年12月12日~13日に「鉄道旅倶楽部および交流団体専用貸し切り列車ツアーサロンカーなにわで行く岡山・倉敷の旅」が開催されました。
国鉄時代に大阪地区で既存客車を改造した豪華客車「サロンカーなにわ」は、編成の前後に展望車があり、お召し列車に起用された実績もあり、鉄道ファンには人気の車両となっています。
国鉄時代の製造のため貴重なこの車両を、鉄道旅倶楽部という社会人団体が貸し切り、ツアーを企画・開催しました。
このような団体専用車両への乗車が目的となるツアーは、一人旅では実現できず、コアなファンが集まるマニアックなSITといえます。
サウナ
近年、サウナブームが盛り上がりを見せています。
三重県紀宝町にある「飛雪の滝キャンプ場」は、滝とサウナを体験できるテントサウナを提供しています。
荘厳な滝を目前に、大自然の力強さを感じながら体験するテントサウナでは非日常を感じることができます。
フィンランド製の専用テントの中には、薪ストーブを設置した本格的なサウナがあり、身体を温めた後は滝壺の天然水風呂へ浸かることができます。
飛雪の滝キャンプ場は、周辺に観光施設の少ない紀宝町で新たな集客の起点となる場所を目指しリニューアルオープンされました。
冬のオフシーズンに利用者が減少してしまう課題を解決するため、冬季も楽しめるテントサウナを考案し、唯一無二のロケーションを活かして全国のコアなサウナーが遠くの熊野まで足を運ぶようになりました。
東京からは電車とレンタカーで約6時間かかりますが、時間をかけてもわざわざ訪れたいと思わせるテントサウナとなっています。
また最寄り街の新宮までは、新宿・横浜から三重交通の夜行バスも運行されています。
訪日観光客向けのSIT
訪日観光客向けのSITについて紹介します。
アニメツーリズム
アニメツーリズムは「聖地巡礼」とも呼ばれ、マンガやアニメ作品の舞台となった土地や建物、作家のゆかりの地、作品に関する建造物や博物館などの施設を訪れる旅行を指します。
日本のマンガやアニメは「クールジャパン・コンテンツ」として、日本国内だけでなく海外からも注目されており、多くの海外ファンを擁しています。
海外のクールジャパン・コンテンツファンによる、訪日時の「アニメの聖地を訪問したい」というニーズがあり、アニメツーリズムは目的が明確で、年齢が若くアクティブな層が多いことも特徴です。
コロナ禍の2020年は、聖地巡礼に関わるイベントのほとんどが中止されました。
アニメツーリズム協会では、コロナ禍においても国内外のアニメファンに楽しんでもらえるよう「アニメ聖地88旅の思い出コンテスト」などさまざまな取り組みを行っています。
このコンテストは、ファンが過去に訪れたアニメ聖地の思い出を旅行記として投稿してもらい、毎月優秀作を選び協会のWebサイトで発表するというものです。
さらに同協会では、VRを活用した聖地巡礼でのマネタイズにも取り組んでいます。
2020年に京都で開催されたイベントでは、米澤穂信氏の小説「古典部シリーズ」をアニメ化した「氷菓」の舞台となった岐阜県高山市のVRでのガイドが行われました。
その横では現地から取り寄せた飛騨高山の名産品が販売され、多くの利用者が飛騨牛を使ったラーメンやカレーなどを購入しました。
アニメツーリズムにおいても、VRなどウィズコロナ対策の取り組みは、積極的に行われています。
アフターコロナにおいて、マンガやアニメのファンは、達成したい目的がコロナ禍における旅への不安に優先する傾向がある、重要な訪日SIT層のひとつといえます。
関連記事:アニメツーリズムとは | インバウンド需要とコロナ禍における取り組み
アートツーリズム
「観光×アート」は世界中のアート愛好家や研究家に対して訴求力を持つ、重要な訪日SITのひとつです。
東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市では、2017年から「アート」「音楽」「食」の総合芸術祭「Reborn-Art Festival」を開催しています。
「利他と流動性」をテーマに、新型コロナウイルス対策に配慮しながら、アート作品や地元食材に関するアクティビティを用意していますが。
専用の宿泊場所も用意され、マイカーやレンタカー、キャンピングカーなどを利用して楽しむことができます。
牡鹿半島の広大なエリアを会場とした屋外展示が中心の芸術祭であるため、密を避けやすいニューノーマルのイベントとしても適していると考えられます。
観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」に採択された事業でもあり、新型コロナウイルス対策を徹底した、魅力的で安心・安全な観光の実現を目指す「あたらしいツーリズム」として選定されています。
関連記事:観光庁が推進「あたらしいツーリズム」とは?採択されるメリット、先行事例を紹介
サイクルツーリズム
自転車を活用した観光「サイクルツーリズム」においては、欧米豪を中心とする本格的なサイクリストがターゲットとなります。
和歌山県はでは800kmにもわたるサイクリング推奨ルートを「WAKAYAMA800」と名付け、利便性や安全性を考慮したサイクリングロードの整備を推進しています。
「WAKAYAMA 800」PR動画は、英語とフランス語が用意され、アウトドアな体験を好み個人旅行を主流とする欧米人を対象として、サイクリングで訪問できる和歌山県の壮大な自然景観や歴史的建造物、温泉などの魅力を発信しています。
新型コロナウイルス感染拡大により屋内型のレジャーが敬遠されるなか、アウトドアのアクティビティーへの注目は高まっています。
関連記事:「サイクルツーリズム」成功事例3選、インバウンドの地方誘客の方法
SIT旅行 コロナ禍でますます注目される
成熟しつつあるSIT旅行ですが、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにさらに多様化しました。
旅行者の回復をめぐっては先が見えない現状ではあるものの、SIT層は重要な考え方のひとつであり、アフターコロナにはスタンダードとなる可能性もあります。
地域の観光資源が、どのSIT層がターゲットとなるのか理解する必要があります。
特にアフターコロナにおいては、目的をもって訪日してもらうために、単に日本側目線のコンテンツ開発ではなく、各国の市場ニーズを捉えた情報発信が重要となります。
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<参照>
八ッ場あしたの会:インフラツーリズムとしての八ッ場ダム(日本経済新聞の記事)
飛雪の滝キャンプ場:テントサウナ®の聖地でサウナ体験
Reborn-Art Festival:公式サイト
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