外国人向け街歩きツアーの企画運営や株式マーケット、データから旅行市場を読み解く、インバウンドアナリストの宮本です。
国内は新型コロナウイルスが蔓延し、一日の新規感染者数は世界一となりました。そのような中、日本政府は厳しい水際対策を敷いており、外国人観光客が自由に日本を旅行することが許されておりません。
それを横目に日本・中国・台湾以外の国はアフターコロナに舵を切り、観光業はコロナ前の活況を取り戻し始めております。
さて、今回はアジアトップの観光立国タイと経済成長著しいベトナムのインバウンド状況を見ながら、日本のインバウンドがどう回復していくのかを考えてみたいと思います。
訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)タイは2022年中にインバウンド客数1,000万人を目論む

タイのインバウンド客数は2014年のクーデターにより、インバウンド客数が2013年比-7%と落ち込んだものの、そこから3,000万人台の大台を突破し、2019年には3,991万人まで伸びました。
しかし、コロナ禍の2020年以降大きく落ち込み、2021年は42万人の入国しかありませんでした。しかし、2021年10月頃から段階的に観光客の受入れを再開し、2022は年6月末時点で284万人の観光客がタイを訪れました。
そして、タイ政府は7月1日以降、入国申請システムの「タイランドパス」を廃止し、医療保険への加入義務を不要として、入国規制をさらに緩和致しました。それにより、7月には300万人を大きく上回るまでに回復する見通しです。
またタイの観光・スポーツ省によれば、2022年全体では1,000万人までインバウンド客数が回復する見通しが発表されています。
ベトナムは7月末時点で95万人のインバウンド客を集める

ベトナムのインバウンド客数は2016年から1,000万人の大台を突破。そこから2桁成長を続け、2019年には1,800万人を突破しました。
コロナ禍で2021年には15万人まで落ち込んだものの、2022年3月より観光客の受入れを再開しました。以降、堅調に観光客が戻りはじめ、7月末時点で95万人まで回復しました。
インバウンド客の"内訳"はコロナ前と様変わりしている
次にタイとベトナムの入国者別インバウンド客数を見ていきたいと思います。
以下の左図が、2022年6月まで累計で、タイに入国した国別インバウンド客数トップ10になります。右の図は2019年の累計になります。

トップがインド、次にマレーシア、シンガポールと近隣国がトップ3に入りました。以下、英国、アメリカ、ドイツなどの欧米諸国が続きますが、数が少ないのがわかります。
また、2019年に1,000万人以上だった中国が2022年にはトップ10にすら入っておりません(6月末時点でタイに訪れた中国人観光客数は7.7万人程度)。これは中国のゼロコロナ政策が大きく影響している事が要因だと考えられます。
一方、以下の左図が2022年7月まで累計でベトナムに入国した国別インバウンド客数トップ10になります。右図は2019年の累計になります。

トップは韓国、続いてアメリカ、カンボジアになります。以下、中国、シンガポール、日本が続きます。アメリカとオーストラリアを除くと、やはり近隣からの訪問が多い事がわかります。
日本のインバウンドの戻りはどうなるか?
筆者がベトナム、タイの現状を見て思ったのは、「日本のインバウンドの戻りも相当厳しいだろう」です。タイは2022年、インバウンド客数は1,000万人まで回復するという見通しですが、これはコロナ前の2019年比の約25%です。
回復が鈍いという原因は、足元の物価上昇や、ロシアウクライナ情勢での原油高などによる航空運賃の上昇などさまざまな要因が挙げられると思います。
日本はそれに加えて悪化する台湾情勢や例え水際対策が緩和されても厳しいマスク着用マナーなどで訪日意欲が高まらない可能性も大きくあると考えます。
今年のインバウンド客数は2019年比4%で着地してしまうおそれも
仮に日本の個人観光客の受入れが再開しても、タイと同様コロナ前の25%程度と想定したら、予測される訪日客数は約800万人(2019年の訪日客数は3,188万人)程度になります。
これはひとつの水準として頭の中に入れておくべき数値かと筆者は思います。
現状の厳しい水際対策の下、団体旅行客しか受入れない事を続ければ、2022年に日本に訪れるインバウンド客数は訪日外国人客数ベースで年間で120万人程度、2019年の4%程度の回復になると想定されます。
日本は厳しい水際対策対策を緩和したとしても、インバウンドの復活はいばらの道を覚悟しておく必要があると思います。
以下の図は、参考までに訪日客数の推移と2022年、2023年の予想グラフになります。
2022年8月以降は月12万人で計算。来年の1月から個人旅行が解禁されていると想定しています。こちらの政府観光局のデータは観光目的での入国の数値に加えて、留学生やビジネスも含まれています。

戻りが早い国はどこか?
筆者は韓国、シンガポール、タイ、マレーシアのアジア諸国と、アメリカ、オーストラリア、英国、ドイツ、フランスからある程度の訪日客が見込めると考えます。
しかし、2019年ベースで訪日客数の約68%を占める、中国(香港含む)と台湾からの訪日客数が当該国のゼロコロナ政策と厳しい水際対策によって訪日旅行への大きな足かせとなり、加えてロシアウクライナ情勢による物価高や景気懸念で、世界的にロングホール旅行需要が押し下がる可能性もあります。
これらを踏まえて、日本が水際対策を撤廃した場合のインバウンド回復の仕方を予想するのであれば、日本のインバウンドは①中国(香港含む)と台湾を除く近隣諸国から、②2019年の25%程度になる事が考えられると思います。
筆者紹介:Japan Localized代表 宮本 大

・立命館大学卒
・SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社
・外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当
・米国College of William & Mary School of Business 卒(MBA)
・Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事
・まいまい京都・東京事務局
・会計事務所にて、資金調達・事業計画アドバイザー
・訪日ラボで「株式市場からインバウンド復活の動向を読み解く」を連載中
Japan Localized 公式サイト
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
訪日ラボに相談してみる
【12/16開催】ホテルの売上・利益最大化に必須の「3つのポイント」を解説

2025年、ホテル業界はインバウンド回復、需要の激しい変動、OTA経由の予約集中、そして深刻な人手不足といった、かつてない環境変化に直面しています。
このような状況下で、今後も安定的に売上を伸ばし続けるためには、「集客」「予約数の向上」「レベニューマネジメント」の3領域で、確実に成果を出すことが不可欠です。
本セミナーでは、ホテルの売上最大化を支援する3社が、宿泊施設が今すぐ押さえておくべき実践的なポイントをわかりやすく解説。また、自社公式サイトの予約率を向上させた取組事例も併せて紹介します。
<セミナーのポイント>
- ホテルが“選ばれる状態”をつくるためのMEO・口コミ対策の要点が学べる!
- 公式サイトでの自社予約率を高めるための改善ポイントがわかる!
-
テクノロジーを活用してレベニューマネジメントと販売活動をアップデートする考え方が理解できる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→ホテルの売上・利益最大化に必須の「3つのポイント」を解説【12/16無料セミナー】
【インバウンド情報まとめ 2025年11月後編】中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは? ほか

訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に11月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※訪日ラボ会員にご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国の訪日自粛要請、観光庁長官の受け止めは?/ 10月の訪日外客数389.6万人、国別1位は韓国 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年11月後編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
訪日ラボの会員限定コンテンツ「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!
その他、訪日ラボの会員になるとインバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い教科書コンテンツやインバウンドを分析したレポート、訪日ラボのコンサルチーム登壇のセミナーなど役立つコンテンツが盛りだくさん!










