観光庁は8月25日、令和5年度予算の概算要求を公表しました。
概算要求の総額は455億円となり、前年比で約2倍に増加したことになります。
特に「国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開」については、国際旅客数の大幅回復を見込み、前年比334%増となる270億円となりました。
随所に「DX」「高付加価値化」「地方」といった観光業界のトレンドが盛り込まれた概算請求となりました。
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令和5年度予算の概算要求、前年比2倍に
観光庁は8月25日に令和5年度予算の概算要求を公表し、総額は前年度予算の230億円の約2倍となる455億円にのぼりました。
内訳としては、一般会計が前年比25%増の177億円、復興枠が前年度と同額の7.7億円、そして「国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開」については、前年比334%増となる270億円となりました。
最も増加率の高かった国際観光旅客税充当分については、今年度後半以降の訪日旅客者数の回復を見込んでの数字となりました。来年度予算の確保という面においても、今後の水際対策の緩和に伴うインバウンドの回復ペースに注目が集まります。
一般会計の各項目については、既存の項目で大幅に要求額が増加したものはありませんでした。
その一方で、4つの項目が一般会計に新規に追加されました。「DX」「地方」「高付加価値化」といった観光業界のトレンドが、新規の4つの項目に盛り込まれました。
以下では一般会計の項目のうち、新たに追加されたものを中心にその内容を詳しくみていきます。
観光立国復活に向けた基盤の強化
昨年度には見られなかった、「観光立国」というワードがみられることも、今回の概算要求の特徴の一つといえます。
昨年度の時点では外国人観光客の受け入れ再開の目処が立っていなかったため、一般会計の内容としても「再生」や「段階的復活」といった記述にとどまっていました。
今回の概算要求では、一般会計と事項要求において「観光立国の復活」というワードが盛り込まれており、コロナ禍からの近い完全復活を目指すことが方針として打ち出されているといえます。
1. 新たな交流市場の開拓
新規の項目として、「新たな交流市場の創出事業」が追加され、要求額は6.5億円となっています。この項目は前年度における「ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業」「『新たな旅のスタイル』促進事業」を内包するものです。
コロナ化を経て多様化した旅行者のニーズに対応すべく、地域との関係性構築を通じた「第二のふるさとづくり」や「ワーケーションの推進」、さらに将来にわたって地域の観光資源となりうる「レガシー形成」などに取り組むということです。
また「ユニバーサルツーリズム促進事業」も、前年比69%増となる3,000万円の要求額となりました。年齢や障がい等の有無にかかわらず、誰もが楽しめる旅行を実現するため、認定制度のさらなる展開や環境整備に取り組むということです。
2. 地域の魅力向上と持続可能な観光地域づくり
この項目では、観光客の地方分散化や持続可能性の向上に関する施策が挙げられています。
新規の項目として、「地域の資源を生かした宿泊業等の食の価値向上事業」が追加され、要求額は5,700万円となっています。
地域の食材を積極活用した食を提供することは、地域の魅力を楽しみたい旅行者への訴求力を高め、地域経済の発展にも貢献します。食を強みとできていない観光事業者が多い現状を変えるために、一流シェフのマッチング支援やトップランナーの事例共有を行うということです。
また前年比で増額となるのは「ポストコロナを見据えた受入環境整備促進事業」で、要求額は前年比13%増の30.6億円となっています。ポストコロナでも安心して旅行ができる環境を、オーバーツーリズム対策とも関連させながら整備していくことで、持続可能な観光地域づくりの実現を図るということです。
3. 観光産業の高付加価値化
この項目では、ポストコロナの観光業界の代表的なトレンドである、高付加価値化に関連した施策が挙げられています。
新規の項目として、「DXや事業者間連携等を通じた観光地や観光産業の付加価値向上支援」が追加され、要求額は15億円となっています。この項目は前年度における「新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援」「DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出」を内包するものです。
観光産業全体の生産性向上を図るため、宿泊施設のデータを地域の統合基盤に接続するなどして、域内、域外でのデータのさらなる活用を目指していくということです。
また前年比で増額となるのは「観光地・観光産業再生のための人材育成・確保等事業」で、要求額は前年比19%増の1.5億円となっています。地域活性化のための観光教育や、外国人材の確保などに取り組むということです。
インバウンド回復に向けた戦略的取組
ここで新規に追加された項目は「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくり支援事業」で、要求額は4億円となっています。
訪日旅行者のうち約1%の人数でありながら、インバウンド消費額全体の10%以上を占める「高付加価値旅行者層」を地方に呼び込み、地方創生につなげることを目的として、高付加価値なインバウンド観光地づくりを推進していくものです。具体的施策としては、モデル観光地におけるマスタープランの策定等の支援となります。
また前年比で増額となるのは「戦略的な訪日プロモーションの実施」で、要求額は93億円となっています。本格的なインバウンド回復を実現するため、民間との共同広告やデジタル技術を活用したマーケティングを展開していくということです。
事項要求:観光立国の復活に向けた施策の推進
要求金額を明示しない事項要求では、「観光立国の復活に向けた施策の推進」が掲げられました。
ここでも「観光立国の復活」という記述がみられます。地方を支えうる産業である観光を復活させるために、観光地の再生・高付加価値化や、新たなコンテンツの造成などに取り組みます。
具体的な施策としては、廃屋撤去の促進に向けた基金化などの継続的な支援や、地域の観光資源の磨き上げへの支援などを行うということです。
国際観光旅客税は前年比334%増、旅客数の回復を見込む
国際観光旅客税充当分の予算は、前年比334%増となる270億円となりました。今年度後半のインバウンドの戻りを見込んでの、大幅増額となっています。
快適な国際観光のための環境整備や、地域での体験滞在の満足度向上、さらには日本の魅力に関する情報のアクセシビリティ向上などに充てられるということです。
ここまででわかる通り、高付加価値化や地方創生といった観光業界のトレンドは、今回の観光庁の概算要求にも大きく反映されています。各施策がさらに具体化されていけば、観光立国の復活に大きく貢献すると考えられます。
現状としては、6月の観光客受け入れ再開以降、9月に至るまでインバウンドの戻りは低調となっています。しかし9月7日からは、一日当たり入国者数上限の引き上げや検査免除の拡大、さらには「添乗員なしツアー」の受け入れも開始しています。
入国制限が一段階緩和されたことによる、インバウンド回復の加速に期待がかかるとともに、さらなる受け入れ拡大のための規制の全面解除も待たれるところです。
予算の面からも、インバウンドの受け入れ拡大が「観光立国復活」のカギとなると考えられます。
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