中国の不動産大手・中国恒大集団は8月、米ニューヨークで破産法の適用を申請しました。
かつて中国で2番目に大きい不動産開発業者として知られていた恒大集団は、2021年に債務不履行に陥り、それが中国で現在まで続く不動産危機の引き金となりました。
今回の中国恒大集団による破産法適用申請は、中国経済や日本のインバウンドにどのような影響をもたらすのでしょうか。
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中国恒大集団が米破産法適用申請
中国恒大集団が8月、米ニューヨークで連邦破産法第15条に基づく申請を行ったことが明らかになりました。
かつて中国国内で2番目に大きい不動産開発業者としてその名を知られていましたが、資金繰りに行き詰まり、2021年にはドル建て債の債務不履行(デフォルト)に陥りました。
米連邦破産法第15条は、経営再建中の外国企業が債権者による資産差し押さえなどから米国内の資産を保護するために申請するものです。
国際的な債務再編の際に必要となることがあり、今回の申請は、経営立て直しを円滑に進めるための手続きの一環と見られています。
規制強化で資金繰りが悪化していた
恒大集団の経営状況は、どのようにして悪化していったのでしょうか。
その経緯は、中国の習近平国家主席による2020年の「3つのレッドライン」政策と深く関係しています。
これは中国人民銀行(中央銀行)が提唱した政策で、不動産市場のバブルを抑制し、貧富格差を緩和するために大手不動産企業に対し、負債比率の制御を求めたものでした。
具体的には、「自己資本に対する負債比率を100%以内」「資産負債比率70%以下」「短期負債を上回る現金保有」の3つが求められ、これに違反する不動産企業は銀行からの融資が制限されました。
恒大集団は長らくの拡大路線で重い債務を抱え、経営の行き詰まりに直面していました。物件の価格を大幅に引き下げるなど経営改善を試みたものの、資金不足に陥り、経営状況は急速に悪化していきます。その結果、2021年12月にドル建て債の債務不履行(デフォルト)に陥り、2022年3月には株式の取引を停止する事態となっています。
2022年末時点での負債総額は2兆4374億元(約47兆円)に上り、債務超過状態に陥りました。現在は地元広東省政府などの支援を受けつつ、再建に向けて取り組んでいるということです。
中国経済への影響は
現在中国内においては、不動産会社や関連企業の間で不安感が高まっています。
恒大集団に続き、中国最大手の不動産開発デベロッパー「碧桂園」でも資金繰りが悪化しているとの報道がありました。同社は恒大集団よりも規模が大きいため、債務不履行に陥った場合、中国で不動産バブルがはじける可能性が高まると見られています。
中国政府は不動産関連企業への金融支援を延長するなどの対策を講じていますが、その効果は限られているようです。
中国においては不動産業界以外でも景気が悪く、また若年層の失業率も20%超と高い状態にあります。国の社会福祉制度が十分に整っていないこともあり、経済低迷を受けて国民の間では将来に対する不安も出ており、消費より貯蓄を優先する傾向が強まっていくとの見方もあります。
中国市場の低迷は今後もしばらく続きそうです。
インバウンドへの影響は
では、日本のインバウンドへの影響はどうなるのでしょうか。
中国国内の景況感の悪さや失業率の高さ、そして節約志向の広がりによって、人々の消費意欲が低下する可能性があります。これにより、日本から中国への輸出が激減する恐れや、インバウンド需要・インバウンド消費が減少する可能性も考えられます。
加えて中国は原発処理水の海洋放出について反発を強めており、これも中国人の訪日意欲にマイナスの影響を与える可能性があります。中国版TwitterのWeiboでは実際に、「もう日本にいかない」「日本産のものは使わない」「日本語のアニメは見ない」等のコメントが見受けられました。中国からの訪日団体旅行が解禁され、インバウンドの本格回復が期待されていた矢先の出来事で、今後の中国インバウンド市場は不透明な状況です。
インバウンド対策を“一国集中”で行っていると、このような事態に対応するのが難しくなります。そのため、普段からターゲットとする国を”分散”させることを意識し、リスクヘッジをすると良いでしょう。中国市場については、今後も動向を注視していきましょう。
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<参考>
NRI 野村総合研究所:中国恒大がNYで連邦破産法15条の適用申請:中国不動産問題は恒大の経営不安が表面化した2年前よりも深刻
NHK:中国「恒大グループ」米裁判所に破産法適用を申請 巨額の債務
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