昨今、コロナ禍を経て人々の健康に対する意識が高まっており、富裕層を中心に海外で医療サービスを受ける「医療ツーリズム」の需要が高まっています。
中国アリババグループの日本支社 アリババ株式会社は22日、中国最大級の越境EC「Tmall Global（天猫国際）」にて、医療のオンライン予約サービスを開始することを発表しました。
さらに、10月に開院を予定している医誠会国際総合病院（大阪市北区）は、インドネシアの旅行代理店などと協業で、インドネシアの富裕層向けに日本の先進医療を提供するサービスを行うことを発表しました。
新たなサービス登場を受けて盛り上がりが期待される医療ツーリズム市場。今後の行方について解説します。
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中国アリババ、越境ECにて中国人向け医療オンライン予約サービス開始
中国アリババグループの日本支社であるアリババ株式会社は22日、医療ツーリズム分野での新事業開始を公表し、第一弾として訪日中国人観光客向けに自費診療サービスの提供を行うことを発表しました。
同グループが運営する中国最大級の越境ECプラットフォーム「Tmall Global（天猫国際）」に、検診や人間ドックなどの医療サービスを提供する日本の企業や団体などが公式店舗を出店することで、医療サービスのオンライン予約が可能になります。
中国におけるアフターコロナでの健康意識の高まりを受けて、富裕層を中心とした医療ツーリズム需要を獲得するねらいです。
同社は今後、新事業の第二弾としてTmall Globalでの美容医療サービスの展開を予定しているということです。
大阪市の病院、インドネシア富裕層向け医療プログラム実施予定を発表
10月に大阪市北区に開院予定の医誠会国際総合病院は22日、株式会社ジェーシービー、インドネシアの旅行代理店などと協業で、訪日富裕層向けに先進医療を提供する新事業の開始を発表しました。
今回発表されたプログラムは、事前の問診から診療内容のフィードバックまでインドネシア語の通訳をつけ、さらにフライトや宿泊、移動手段の手配も行うというものです。
同院によると、インドネシアの富裕層の間では海外で高度な先進医療サービスを受ける医療ツーリズムがトレンドとなっているといいます。日本でもインドネシア語で医療を受けられる機会を提供することで、需要に応えるねらいがあります。
今後の医療ツーリズムの行方は？
近年の観光庁の政策では「高付加価値化」「付加価値向上」などのキーワードが各所に登場しており、日本の先進医療を高付加価値化して提供する医療ツーリズムは、国の方針とも親和性が高いといえます。
3月に厚生労働省が発表した「地域の医療・観光資源を活用した外国人受入れ推進のための調査・展開事業」報告書には、「診療所や医療関連企業を活用したインバウンド地方誘客モデルの拡大可能性調査を通じて事業をさらに発展・拡大させるための検討を行う」との記載があり、国としても医療ツーリズムを積極的に推し進めていく姿勢です。
医療ツーリズムでは富裕層の訪日や長期滞在が見込まれるため、訪日外客数に加えて消費額の重要性が強調される昨今、高単価の訪日外国人客の獲得が期待できるという意味でも注目されます。
一方で懸念点もあります。
2010年に日本医師会は、病院が利益を優先し、自費診療の外国人患者ばかりを受け入れることになった場合、保険適用となる国内患者の治療がおろそかになる可能性を指摘しました。この問題は現在も解決したとはいえず、いまだ制度の整備が待たれる部分です。
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＜参照＞
アリババグループプレスリリース：アリババ株、越境EC 「Tmall Global」 を活用した日中医療ツーリズム事業の開始を発表
医療法人医誠会プレスリリース：医療法人医誠会はインドネシア向け日本先進医療ツーリズムを開始JCB、JTSと協業
社団法人 日本医師会：国民皆保険の崩壊につながりかねない最近の諸問題について －混合診療の全面解禁と医療ツーリズム－
厚生労働省：令和４年度事業調査報告書 地域の医療・観光資源を活用した外国人受入れ推進のための調査・展開事業
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