「官民が一体となれば、世界と戦える」岐阜県のデジタルマーケティング戦略とは【自治体DX・MEO対策事例】

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現在、企業や団体のマーケティング活動において、デジタルデータの分析・利活用が必要不可欠となっています。自治体や行政機関も例外ではありませんが、専門人材の不足などに課題を抱えるケースが多いのが現状です。

そこで今回は、デジタルマーケティングの先進的な取り組みを進める岐阜県で、観光国際部 観光誘客推進課 課長を務める加藤 英彦氏にインタビュー。岐阜県が進めるSEO・MEO対策等について、その内容を詳しくお聞きしました。

お話を伺った方:岐阜県 観光国際部 観光誘客推進課 課長 加藤 英彦氏

▲岐阜県 観光国際部 観光誘客推進課 課長 加藤 英彦氏
▲岐阜県 観光国際部 観光誘客推進課 課長 加藤 英彦氏

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自治体におけるデータ活用やデジタルマーケティングの課題とは

ーー まず岐阜県の事例をお聞きする前に、行政や自治体のデジタルマーケティングには、現状どのような課題があるのでしょうか?

自治体がデジタルマーケティングを推進する上で、課題と言われることはたくさんあります。

例えば、収集したデータをプロモーションなどに活用するためには、詳細な分析が必要です。しかし、自治体ではそもそものリテラシーが低かったり、分析のノウハウがなかったり、活用方法がわからなかったりする場合が多い。

また、こうしたスキルは属人化しやすいうえ、県庁や市町村役場は数年で部署移動があるのが慣例なので、知識や経験が蓄積しにくいという問題もあります。その結果、専門知識を持った人材が育ちにくく、慢性的な人材不足に陥りやすいというのが、行政ならではの課題ですね。まずは自治体職員の一人ひとりが、データやスキル、ノウハウを集積していく必要性を理解することから始める必要があると思います。

岐阜県のデジタルマーケティング戦略とは

ーー 様々な課題がある中で、岐阜県のデジタルマーケティングはどのような戦略で進められたのでしょうか?

岐阜県では、コロナ禍前からインバウンド向けのマーケティング戦略を強化させてきました。特に2017年以降、LCCの台頭により個人旅行者が増加してからは、ブランディングとデジタルマーケティングの2つを戦略の軸として、サステイナブルツーリズムの概念も盛り込みながら、魅力の発信と認知度アップに取り組んできました。

2018年には新しいブランディング「Gifu:Timeless Japan, Naturally an Adventure」をスタート。このブランディングを全てのツールで活用するマーケティング戦略を基に外国人向けの観光サイト「VISIT GIFU」を新しく立ち上げ、SNSやオンライン広告なども活用して、サイトへの集客と情報発信を強化しています。

多言語での発信も積極的に行い、検索データや口コミなどの収集・分析・活用を積極的に実施してきました。ノウハウの属人化を防ぐために、人材育成などにも力を入れています。


岐阜県が実施するSEO対策事例

ーー 具体的な施策内容についてお聞きしたく、まずはSEO対策について教えてください。

SEO対策については、まずは徹底的にデータ分析を行い、情報発信に活用してきました。

例えば、観光サイト「VISIT GIFU」(https://visitgifu.com/ )は多言語で情報整備を行い、その上で国ごとの検索キーワードを分析・可視化しました。国が違えば上位で検索されるワードにも違いがあるので、国ごとにどんなワードを盛り込めばサイトに来てもらえるか、戦略を練って発信に活かしています。

検索ワードの洗い出しにあたっては、国・言語別に、かつ、複数の切り口で検索順位の上昇及び自然流入増加を目的に、分析・解析を進めました。具体的には、「コンテンツ」の切り口なら「monet pond(モネの池)」、「地名」の切り口なら「magome(馬籠)」、「Japan」の切り口なら「japan adventure」、「gifu」の切り口なら、「gifu toursm」といった具合です。

とにかく地道な努力が必要ですが、こうしたキーワード分析を国・言語別に時系列で追うことで、時代に合った検索ワードの最適化を進めることができます。

例:

  • 検索ワード「takayama」でのVISIT GIFUの順位(英語圏)・・・79位(2020年)→18位(2023年)
  • 検索ワード「monet pond」でのVISIT GIFUの順位(英語圏)・・・5位(2020年)→2位(2023年)
  • 検索ワード「shirakawago」でのVISIT GIFUの順位(英語圏)・・・61位(2020年)→16位(2023年)

また、ライバルとなる観光地との比較にも力を入れています。他県のサイトがどんなワードで検索されているのかを調査して、我々のサイトの情報発信に活かしているんです。あえて近隣の県へのアクセスや観光地紹介なども盛り込んで、岐阜以外の地域とセットで訪れてもらえるような工夫もしています。

その結果、VISIT GIFUのPV数は2019年から2023年の4年間で約3倍になりました。


ーー サイトへの自然流入が大幅に向上していますね。取り組みを成功させるために意識した点はどのような点でしょうか?

私たちが特に重要視したのがノウハウの蓄積です。データ分析等のマーケティング施策は属人化しやすいので、ツールの設定手順や施策実施に必要な考え方を全てマニュアル化。異動してきた職員全員に配布しています。

行政の特性上、どうしても2〜3年で人員の入れ替わりがあります。長い目で見てクオリティを高い状態に保ち、持続的な業務の仕組みを作ること。「持続可能」であるかどうかを意識して取り組みを進めています。

岐阜県が実施するMEO対策事例


ーー 長期的な目線での仕組みづくりが大切なんですね。MEOの施策についてはいかがでしょうか?

MEOについては知見が全くない状態だったので、movさん(※)にサポートしていただきました。特に私たちは外国人旅行者の誘客を目的としているので、デジタルの知識に加えて、インバウンドの知見も豊富なmovさんから、様々な角度でアドバイスをいただけるのは大変ありがたいですね。

※訪日ラボ運営会社。岐阜県をはじめ様々な企業・自治体のデジタルマーケティングやMEO対策、インバウンド対策等を支援している。

具体的な施策としては、まずGoogleビジネスプロフィールの情報を、英語、繁体字など多言語で整備しました。その上でデータ収集と分析を詳細に行ったのですが、その際に意識したのが、スポットとエリアの両方の分析です。ミクロとマクロの両方の視点でデータを分析し、市町村や事業者と分析結果を共有しながら、具体的な施策に落とし込んでいきました。

例えば、同じ郡上のエリアでも、欧米の方には藍染などの伝統工芸品の人気が高く、一方でアジア・東南アジアの方には食品サンプルの方が需要が高い。それぞれ訪問の目的が違うんですよね。そういったポイントを口コミデータから把握して、個別に戦略を練っていったんです。

スポットとエリアの両方のデータを分析すれば、人気のスポット同士を結びつけた施策を打つこともできます。例えば、外国人にも人気のスキー場エリアと伝統的な盆踊り「郡上踊り」がある地域は少し離れています。そこで、スキー場で郡上おどりの催し物を開催するなどすれば、新しい客層の呼び込みにもなりますし、宿泊客の滞在が1泊伸びるかもしれない。データを分析することで、ターゲットの思考や行動傾向に合わせたプロモーションを行うことはとても効果的だと感じています。

ーー データを活用して実際のプロモーションにしっかり活かしているんですね。取り組みを進めるうえで、苦労した点などがあれば教えてください。

マーケティングを成功させるためには、県庁だけでなく、市町村や民間事業者含めて、関係者みんなが同じ方向を向いて取り組む必要がありました。そのために、民間事業者の方々に我々の考え方をどうやってご理解いただくか。一番時間をかけて丁寧に進めたのがこの部分だと思います。

施策を始めた当初は、個別のデータを見せたくない事業者の方々も多くいらっしゃいました。そこで、定期的にデジタルマーケティングに関する研修や勉強会を開催し、市町村や事業者の方々にも出席していただき、我々の戦略について説明したんです。

取り組みを成功させるためにいかに各施設のデータが必要かを伝えたことで、徐々に「乗り遅れちゃいけない」と理解を示してくださる方が増えていきました。今では、県内の500施設のデータを県の方で集計・閲覧・分析できるまでになっています。

常に「現場への貢献」を最優先に

ーー 多くの人を巻き込みながら進めることが必要なのですね。最後に、行政のデジタルマーケティングを成功させるために、一番重要だと感じることを教えてください。

やはり大切なのは、県と市町村、そして民間事業者が同じ方向を向き、共にレベルアップしていく姿勢を持つことだと思います。

私はこうした取り組みを進める上で、常に「現場への貢献」を最優先に考えています。県庁だけが独りよがりに物事を進めても、県内の細かなエリアや各施設のマーケティングまでは難しく、その効果は3倍から5倍と限定的です。しかし官民が連携し、各事業者がそれぞれデータを活用していくことができれば、その効果は300倍にも500倍にもなります。

「官民が一体となれば、世界と戦える」。その想いを強く持ち、信頼関係の下に関係者が一丸となって実行していくことが大切だと思います。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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