じゃらんリサーチセンターは6月13日、「観光振興セミナー2024 オープン・ラボ Online」を開催しました。全国の先進事例やじゃらんリサーチセンター(JRC)独自の調査・研究を、研究員自らが解説するセミナーイベントです。
訪日ラボでは、各講演の中から特にインバウンド観光に関連する講演を取り上げ、解説していきます。第一弾として、じゃらんリサーチセンター研究員 松本百加里氏による「3年で予約実績1,000万円!秋田県インバウンド富裕層向けプロモーションの軌跡」の内容をお届けします。
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3年で予約実績1,000万円!秋田県インバウンド富裕層向けプロモーションの軌跡
松本氏の講演は、秋田県の事例をもとに、富裕層をターゲットとしたインバウンドプロモーションの考え方や具体的な流れをまとめたものです。以下ではセミナーの中で特に注目したい内容をまとめます。
インバウンド富裕層向けプロモーションは「石の上にも3年」
欧米豪のミドル富裕層向けプロモーションについて研究した松本氏は、この施策について「石の上にも3年」、つまり最低でも本格的に販売できるようになるまで3年かかることを意識してほしいと話します。
前提として、「欧米豪のミドル富裕層」の定義は、着地消費額80万円〜150万円程度と、富裕層に限らず価値を感じたものにお金を払いたいと考えている欧米豪の旅行者を指します。
そうしたターゲットに地域を訪れてもらうための、3年間のステップが以下です。
1年目は地域資源の整理やコンテンツ造成を行い、海外旅行会社にコンテンツへの理解を深めてもらう取り組みを進めます。2年目にはFAMツアー(旅行会社やメディアなどを招請して行うツアー)を実施するなどしてフィードバックを得て、コンテンツや販売の磨き上げを行い、後半から本格的な販売を始めます。
そこから3年目まで問い合わせ対応や販売ツアーのバリエーションを増やすなどの施策を進め、ようやく3年目の後半から訪日客が増加してくるとしています。
松本氏は、3年間取り組むべき理由として
- 海外旅行会社の商品企画担当からセールス担当まで販売するための体制準備が必要
- 海外旅行会社やDMCとの信頼関係を築くための地域側の受け入れ体制整備が必要
- コンテンツ(点)をツアー(線)に磨き続けて売れ筋ツアーを型化することが必要
の3点を挙げています。実際にイギリスの旅行会社担当者にインタビューしたところ、「日本では魅力的な旅行がたくさんあるが、旅行商品を作る体制を整えたタイミングには、日本で話せる担当者がいなくなっている」と課題を指摘されたそうです。
実際に秋田県で実施したこと
秋田県のプロモーションで実施したことを見ていきましょう。1年目には訴求コンセプトとターゲットの設定や、海外旅行会社へ詳細インタビューをし、注力エリアを決めるなどしています。
海外旅行会社へのインタビューでは、ただ桜を見るだけでなく「桜の木で作る樺細工体験」といった付加価値があった方がいいことや、人気の秋田犬との散歩などもニーズがありそう、など気づきが多かったといいます。また、アクセス面で訴求しやすいエリア(仙北)を注力エリアとして設定しています。
続いて2年目は、海外旅行会社に情報を届けたり、FAMツアーを実施したりといったところに力を入れたといいます。注力エリアは男鹿や湯沢エリアまで拡大しました。
2年目の取り組みで重視したのがFAMツアーで、一番大事なのが「完成度の高いツアーをやること」。ここで粗雑なものになってしまうと海外旅行会社からの信頼度が下がるので、中途半端にやるくらいなら次年度に延期するのがいいとしています。
また、地方部でDMC対応できる方が1年目にはいなかったため、一度経験のある会社に入ってもらい、2年目に伴走しながら秋田県内で引き継いだということです。
そして3年目には売れ筋ツアーを「型化」してさまざまなツアー商品を展開し、FAMツアーも8回開催。地域DMCもついに自走できるようになりました。
肝心の旅行会社販売件数と予約獲得金額ですが、やはりこの進め方だと1年目はゼロ。ですが、3年目に一気に1,000万円超まで上がっています。途中でやめず、しっかり3年やり切るのが大事だと松本氏は強調しました。
最後に松本氏は、3年継続体制をつくるには
- 商流上でファンをつくる
- 毎年振り返りできる体制をつくる
- 観光戦略に3年以上継続事業として理由とセットで入れる
の3点を意識すべきだとしています。最低でも3年継続できなければ持続的に訪日客を呼ぶのは難しいため、継続した施策にできるかどうかが何よりも重要です。
そこで、この取り組みをやると「地域にどんな未来が訪れるのか」を観光戦略に明示しておくことが大事だとしました。
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以上、秋田県とじゃらんリサーチセンターが実施したインバウンド富裕層向けプロモーションのセミナー内容をまとめました。
本セミナーを見て、プロモーションに対する考え方や施策の進め方は、富裕層向けに限らずさまざまな訪日プロモーション施策に応用できそうだと感じました。
また、観光戦略に「地域にどんな未来が訪れるのか」を明示しておくというのは非常に重要な視点です。そのようにして地域が目線をそろえて目標へ向かっていくことで、「何十年先も持続可能な観光」の実現に近づくことができるでしょう。
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<参照>
じゃらんリサーチセンター:観光振興セミナー2024 オープン・ラボ Online
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