「地域で頼りにされるDMO」になるには?地域経営のあり方を検討する5つのステップ【じゃらん観光振興セミナー vol.3】

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じゃらんリサーチセンターは6月13日、「観光振興セミナー2024 オープン・ラボ Online」を開催しました。全国の先進事例じゃらんリサーチセンター(JRC)独自の調査・研究を、研究員自らが解説するセミナーイベントです。

訪日ラボでは、各講演の中から特にインバウンド観光に関連する講演を取り上げ、解説していきます。第三弾として、じゃらんリサーチセンター研究員 森 成人氏による「地域住民から頼られるDMOになる ~必要な事業設計のSTEPとは?~」の内容をお届けします。


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多くのDMOで「持続的な経営」に課題

観光庁によれば、DMO(Destination Marketing/Management Organization, 観光地域づくり法人)は、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域への誇りと愛着を醸成する地域経営の視点に立った「観光地域づくりの司令塔」です。

地方自治体は人事異動が多いなどの事情から持続的な観光地域づくりに同じ担当者が関わっていくことが難しい場合も多く、その意味でもDMODMC(地域の観光活性化につながる自主収益事業を主体として地域経営していくモデル)に期待される役割は大きなものになっています。また、DMO自ら「稼ぐ力」をつけることで、自走できる経営が求められています。

しかし、多くのDMOが「持続的な経営」に課題を抱えていると森氏はいいます。DMOの取り組み自体が地域の資産を作れているかという視点で考えると、国の補助金を費消していく形の事業がほとんどであり、かつほとんどが単年度予算、単年度事業であると指摘しています。


そこで森氏は、複数の対象地域を設定し、アドバイザーとして伴走しながら新たな事業づくりやアクションプランづくりを行いました。

地域経営のあり方を検討する5つのステップ

森氏は、どんな地域経営を行っていくべきかを検討するステップとして、以下5つの順を挙げています。

  1. 他地域の事例研究
  2. 現状業務・ありたい姿の棚卸し
  3. 実現するための課題
  4. 実現するための役割分担
  5. 具体的なアクションプランづくり

1. 他地域の事例研究 では、まずはどんなDMOの事業経営の型があるのかを研究します。

次に2. 現状業務・ありたい姿の棚卸し を行います。現在取り組んでいる事業、今年度末までに行うこと、行う上での課題を書き出します。

その上で、3〜5年後にありたい姿や、その時に地域にどんな資産が残っているのかをイメージします。この業務をやめると地域は何を失うのかを考え、未来がある事業を選別していくことが重要だとしています。

2でしっかりとありたい姿をイメージすることができれば、3. 実現するための課題、4. 実現するための役割分担、5. 具体的なアクションプランづくり はかなりスムーズにいくのではないかということです。


5つのステップを実践した事例2選

実際にこれらの検討を通じて出た地域のアウトプット事例も紹介されました。そのうちの2事例を紹介します。

1. 山形県米沢市のDMO法人 プラットヨネザワ株式会社

プラットヨネザワ株式会社では、DMO設立から2年で、すでに多岐にわたる業務を任され、業務量がひっ迫。まさに「地域で頼りにされるDMO」ではありますが、たくさんの事業がある中で、各事業の最終ゴールや優先順位などのすり合わせが不十分だったといいます。

そこで先ほどの検討ステップに沿って全事業を再度グルーピングし直し、それぞれのグループごとの目標を明確化、DMOの戦略と人員構成を再検討しました。

プラットヨネザワ株式会社の担当者は、「何のために何をゴールにやるのか明確になりリソースの無駄を省け、目的を持って遂行できた」「良くも悪くも走りながら進めていたところで、目指すべき姿を整理し、進むべき方向を整理・認識合わせする良い機会となった」と話しているということです。


2. 和歌山県田辺市の先駆的DMO 一般社団法人 田辺市熊野ツーリズムビューロー

世界遺産熊野古道を有する和歌山県田辺市のDMOであり、日本に3法人しかない「先駆的DMO」としても知られる田辺市熊野ツーリズムビューロー。

すでに取り組みを大きく評価されているDMOですが、現状を分析したところ、以下2つの課題が浮き彫りになったといいます。

  1. 現在の受け入れ手配でもかなりのキャパ。このままだとさらなるインバウンドの受け入れの拡大を行えない
  2. 旅行業に次ぐ事業の柱がない

そこで課題1に対しては手配オペレーションや手配システムの改良とそれを担う人材のミッション化、さらに熊野古道から市街地で「プラスもう1泊」を狙う商品開発。課題2に対しては熊野古道の空き家を活用した不動産投資事業と、企業研修の商品開発/誘致・受け入れを戦略として明確化しました。

田辺市熊野ツーリズムビューローの担当者は、「論点整理や目線合わせ等の調整が円滑に進み、限られた時間の中で目指すべき方向性を効率的に検討することができた」と振り返っているそうです。


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以上、「地域住民から頼られるDMOになる ~必要な事業設計のSTEPとは?~」セミナーの内容をまとめました。

今実践している事業が観光地にとって重要なものなのか、何年後かにこうありたいという姿を見据えた上で必要な取り組みなのかどうかというのは、DMODMCに限らず、企業や行政が観光に関する事業を行う際に検討すべきものだと感じました。

また、DMOの事業が単年度予算・単年度事業に終わることが多いという森氏の指摘はもっともで、持続可能な観光を実現するためには、事業自体も数年・数十年単位の長いスパンで目標や戦略を考え、都度修正していく形の方が、より良いものになるのではないかと考えられます。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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