トランスフォーマティブトラベルとは?「織田信長・井伊直弼に今の生き方を学ぶ旅」が外国人に与えた"変化"【じゃらん観光振興セミナー vol.4】

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

じゃらんリサーチセンターは6月13日、「観光振興セミナー2024 オープン・ラボ Online」を開催しました。全国の先進事例じゃらんリサーチセンター(JRC)独自の調査・研究を、研究員自らが解説するセミナーイベントです。

訪日ラボでは、各講演の中から特にインバウンド観光に関連する講演を取り上げ、解説していきます。第四弾として、じゃらんリサーチセンター研究員 北 真理子氏による「人生観と資源の『見え方』が変わるトランスフォーマティブ トラベルとは?」の内容をお届けします。


【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】

会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。

ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。

トランスフォーマティブトラベルとは?

米国のThe Transformational Travel Council(トランスフォーメーショナルトラベル評議会)の定義によれば、トランスフォーマティブトラベルとは、意図的に旅をすることで新しいあり方や世界との関わり方を学び、成長することを目指す旅です。

トランスフォーマティブは日本語で「変革的な」という意味で、自分自身の内面の変化を目的とした旅行のことを指すようです。

トランスフォーマティブトラベルと、他の旅行との違いは?

似た概念であるアドベンチャートラベルウェルネスツーリズム、着地体験型ツーリズム、コンシャストラベル(目標貢献型トラベル)と比較すると、トランスフォーマティブトラベルでは「楽しみ」よりも「学び」を重視し、リフレッシュだけでなく「新しい成長・変化」「レベルアップ」まで目指します。

また、必ずしも地球環境や保護活動などといったサステナビリティを意識した旅だけではなく、あらゆるテーマの旅を対象としています。


近年、このトランスフォーマティブトラベルの注目度は増しており、過去10年間のSNS投稿トレンドを見ると、先に挙げた4つの類似した旅行よりも大きく話題量が増加しているといいます。

そこで北氏は、どのようにしてトランスフォーマティブトラベルの旅行者と日本の地域を結び付け、地域に新しい観光の可能性をもたらしてくれるかを研究しています。

日本市場におけるトランスフォーマティブトラベルの可能性

北氏は、日本は以下の理由からトランスフォーマティブトラベルに最適な環境であると述べています。

  1. 異国文化…「モダン・伝統」の2つの側面があり、世界中の旅行者がその独特性に興味津々
  2. 大自然への没頭…自然景色の多面性に加え、日本の美しい「四季」が世界中の人々を魅了できる
  3. 現地人との交流…日本人の日常生活のユニークな習慣が旅行者に驚きと刺激を与え、当たり前であった自分の価値観に挑むきっかけとなる
  4. 神秘性の実践…アニミズム(神道)、仏教13宗派、自然宗教(修験道)など、インドを除き、日本ほど豊富な精神的な体験を提供できる国は他にない
  5. 挑戦…「便利と不便」(例:言葉が通じない(=英語が苦手)の多数場面、靴を脱ぐ習慣…)両方を体験するからこそ、日本は「ちょうどよい」具合の挑戦感を与える国である


一方で、日本の文化として根付いている礼儀や精神性といったものを本当の意味で理解することは難易度が高く、また各地の観光地が「表面的に」似ており、一定訪問・体験すると似たようなものを見た感覚になってしまうといった、日本の観光資源をアピールする上での難しさを挙げています。

そこで地域観光資源の“内面”を読み解き、その背景にあるストーリー(生き方や考え方)を浮かび上がらせ体験させるコンテンツを造成することが重要ではないかと指摘し、実際にストーリーと体験の観点から有識者を招き、「日本版トランスフォーマティブトラベル」の造成に取り組みました。


滋賀県での実証実験事例:織田信長・井伊直弼に今の生き方を学ぶ旅

実際に滋賀県を実証地として、トランスフォーマティブトラベルのコンテンツ造成を行っています。

テーマは「湖の国、違う時代に生きた二人の侍の歴史・史跡を辿り、今の生き方を学ぶ旅」。織田信長、井伊直弼を主人公とするストーリーで、ターゲットは20代後半〜40代半ばのアメリカカナダイタリアシンガポールの外国人としてモデルツアーを実施しています。


旅の最初には、太郎坊宮でのお守りづくり体験や、安土城跡を訪れる体験などが続きます。古来自分で作るものだったというお守りの文化体験や、「景色はきれいだが行っても何もない」という人も多い織田信長ゆかりの安土城跡を、安土城に真っ直ぐに続く道や、信長の権威を示す石仏などに着目しながら見ていくといった体験を通して、ただ観光地を訪れるだけではない体験が盛り込まれています。

さらに井伊直弼が勉学・修行に励んだ埋木舎を訪問し、直弼公が立ち上げた流派を継ぐ「彦根一会流」のお点前体験や、直弼公が考案した懐石を参考にしたお弁当を食べるなどの貴重な体験も実施。こうした体験の合間には、経験・体験したことを感じる時間・場を設定したといいます。


参加した外国人からは「力を与えてくれる物語だった」「ただ技術を完成させるだけではダメで、自分も自分の道を体現する必要があることを学んだ」といった声が上がりました。織田信長、井伊直弼といった日本の偉人には馴染みがなくても、ナポレオンなど馴染みのある偉人と重ねて理解することができたのだそうです。

また、仕事への指針や、日常生活に対するスタンスが変わったといった、「気持ちの変化」を受けた参加者もいました。


また、事業者からは「単なる史跡の紹介にとどまらず、それにまつわるストーリーや人物の人となり、また現代まで保存に尽力した人々の思いをいかに伝えるかが重要だと気づきを得て、今後の活用を考える上での一助となった」といった声があったということです。

北氏は、「新しい知的好奇心を刺激するトランスフォーマティブトラベルは、旅行者・地域をつなぐだけでなく、次の可能性を生み出す創発的な旅」「どのように旅行者と日本の地域を結び付け、地域に新しい観光の可能性をもたらしてくれるかが重要」であるとし、この研究を実施したことで改めて学びになったと振り返りました。

ーーーーー

以上、「人生観と資源の『見え方』が変わるトランスフォーマティブ トラベルとは?」セミナーの内容をまとめました。

織田信長、井伊直弼を主人公としたストーリーの旅は、外国人ではなく日本人でも、特に歴史に興味のある方は体験してみたいコンテンツだったのではないでしょうか。安土城跡や埋木舎など前提知識がない状態で行くとその良さが伝わらないスポットを、上手く体験の中に組み込んでいる点が秀逸だと感じました。

アドベンチャートラベルウェルネスツーリズム、そして今回紹介されたトランスフォーマティブトラベルのように、海外では浸透しつつあるものの、日本ではまだ確立されていない旅行形態は多く存在します。実際に完成したコンテンツを参考に、各地でも旅行商品造成の取り組みが進むことが期待されます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

▼この連載の記事

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!

訪日ラボに相談してみる

<参照>

じゃらんリサーチセンター:観光振興セミナー2024 オープン・ラボ Online

※8月末まで見逃し配信が視聴可能

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

<本セミナーのポイント>

  • 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
  • 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
  • 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
  • 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける

詳しくはこちらをご覧ください。

宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月後編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる


完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに