韓国最大級OTA「ヨギオテ」日本市場に挑戦。「1日1万部屋以上の予約調達めざす」【CEOインタビュー】

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2024年1月に日本法人を設立し、日本でのビジネスの第一歩を踏み出した韓国のオンライン旅行予約サービス「ヨギオテ」。運営会社ヨギオテカンパニーの日本法人である株式会社ヨギオテジャパンでは、韓国での訪日需要の高まりを受け、韓国のユーザーと日本の宿泊施設の橋渡し役となるべくサービス拡充を進めていくと発表しています。

今回、同社の代表取締役であるチョン・ミョンフン氏に取材。ヨギオテジャパンが日本の宿泊・観光産業に今後与えうるインパクトについて探るべく、韓国における旅行市場やトレンドから、同社の日本事業におけるビジョンまで、さまざまなお話を伺いました。

ちなみにチョン氏は、大の日本旅行好きだとか。鹿児島、甲府、阿蘇、唐津、小樽、尾道などの地方にもたびたび足を運んでいるそうで、取材中はたくさんの思い出話も。日本での事業展開に込める同氏の熱量が伝わる取材となりました。

株式会社ヨギオテジャパン 代表取締役 チョン・ミョンフン氏
▲株式会社ヨギオテジャパン 代表取締役 チョン・ミョンフン氏:訪日ラボ撮影

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韓国最大級の旅行予約アプリ「ヨギオテ」が日本進出。日本国内のホテル情報を韓国へ発信

ーー日本法人の設立、おめでとうございます。改めて「ヨギオテ」について教えていただけますでしょうか。

今年で設立から10年目を迎えたヨギオテは、今や韓国人の5人に4人が利用する、韓国最大級の旅行予約プラットフォームです。モバイルアプリの総DL数は4,000万回、アクティブユーザー数は1,100万人を突破しており、その規模は韓国国内で使われるOTAで最大級といえます。

また、85%がオーガニックトラフィック(※他サイト経由ではなく、ヨギオテを直接開いて検索すること)となっており、韓国では「旅行に行きたいからヨギオテを見てみよう」と検索するような、宿泊予約サイトの域を超えた使われ方を確立できています。

ヨギオテジャパン オープニングセレモニー
▲ヨギオテジャパン オープニングセレモニーで、ヨギオテのサービスや強みについて説明するチョン氏:訪日ラボ撮影

ーー感染症拡大や不況など、旅行業界にとっては特に激動だったこの10年で、ヨギオテが急成長を遂げた理由は何でしょうか?

ユーザーとサプライヤーの両者にとって良いサービスにこだわり続けてきたことが一番だと思っていますが、外的要因を挙げるとすれば、韓国の旅行市場が影響しています。

韓国は日本と比較して経済規模は小さいですが、その経済規模に対して旅行市場は近年特に大きくなっています。たとえば、一人あたりの国内外旅行消費額はアジア主要国の中で最も高いんです。また人口あたりの海外旅行者数はコロナ禍前で日本の4倍ほど、コロナ禍後で日本の6倍ほど。韓国人の海外旅行への関心の高さがうかがえますね。非婚率の上昇など社会的な背景もあって、旅行する時間や金銭的な余裕が生まれているのではないかと考えられます。

ーーそうした背景の中で、日本ではどのようなビジネスを展開していくのでしょうか。

日本の宿泊施設に関する豊富な情報を韓国人ユーザーへ届け、予約へ繋げるサービスを展開していきます。目指すは、訪日旅行を計画する韓国人ユーザーと日本のホテルの「橋渡し役」。韓国では訪日需要が急速に高まっているのに対し、日本のホテルをよく知っている韓国人は少ない状況なんです。知りたくても韓国語での情報は多くありません。私自身、一人のカスタマーとして日本のホテルは清潔で、安全で、非常にコストパフォーマンスが高いと感じているのですが、その良さが韓国人に知られていないのはとてももったいないと思っています。

また、韓国人ユーザーに対する日本の魅力の発信にも力を入れていく考えです。たとえば、芸能人やインフルエンサーを起用した日本旅行のコンテンツはすでに取り組みを進めていて、次は韓国で人気のYouTuberのチャンネルで、鹿児島の小旅行コンテンツを紹介する予定となっています。単なるホテル情報の提供や予約機能にとどまることなく、「日本に行きたい」という旅行心を刺激するサービスとして成長させていきたいと考えています。

韓国で人気の海外旅行先はダントツで日本!韓国人の旅行トレンドは?

ーー韓国では訪日需要が高まっているとのことですが、どういった理由があるのでしょうか?

韓国で人気の海外旅行先はダントツで日本ですが、これは近距離旅行の人気が高まっていることが理由の一つとして挙げられます。昨年海外旅行をした韓国人の55%が近距離旅行で、国際情勢や旅費の高騰、為替などが関係しているのではないかと考えています。

そんな中で日本は治安が良く、リーズナブルで、気軽に旅できる距離で、観光コンテンツも豊富にある。韓国人の旅先に日本が選ばれる理由は無数にあります。訪日数を国別で見ても韓国が1位となっており、日本人の皆さんも最近街中で多くの韓国人旅行者を見かけるのではないでしょうか。

ーーヨギオテのユーザーにも、日本旅行は人気ですか?

もちろんです。ヨギオテは20代・30代のユーザーが全体の67%を占めており、9割が40代以下。ユーザー層が非常に若いので、低予算で気軽に行ける近距離旅行の人気は先ほどの傾向以上に顕著です。

実際にヨギオテの海外旅行予約データを見ると、90%が近距離旅行で、そのうち60%が日本向けのニーズです。この数字はグローバルOTAと比べてもずっと大きく、日本向けビジネスのスタートを決断した大きな理由の一つでもあります。前もって旅を計画するのではなく、「今週末、日本へ行こうよ」というように、近場を気軽に旅をするユーザーが多い印象ですね。

株式会社ヨギオテジャパン 代表取締役 チョン・ミョンフン氏
▲株式会社ヨギオテジャパン 代表取締役 チョン・ミョンフン氏:訪日ラボ撮影

ーー近距離旅行以外に、最近の韓国人の旅の仕方にはどんな傾向が見られますか?

韓国に限った話ではありませんが、物より経験を重視する傾向がますます強くなっています。SNSの発達が影響しているのだろうと考えていますが、「何を買ったか」「何を持っているか」ではなく、「どういう経験ができたか」を表現したい人が増えていますよね。旅行はまさに自身の経験に繋がるもので、だからこそ旅行の需要が高まっているとも言えます。

ーー訪日韓国人観光客は、具体的にどのような経験を求めているのでしょうか?

たとえば、韓国にも屋台はたくさんあるにもかかわらず、博多の屋台も人気なんです。それはなぜかというと、日本の雰囲気を感じたいから。メニューが日本語で書いてあり、写真を撮れば韓国とは違った感じに仕上がる。それが面白いんです。

また、東京・大阪・京都などの主要観光地ではなく、中小都市を訪問する旅行者が増えていますね。 「人とはちょっと違う場所に行きたい」という需要でしょう。誰もが行ったことのあるような場所では面白い話題になりませんから。近年、団体ツアーの比率が下がり、個人旅行が増えているのは、この傾向の現れだと考えています。昨年海外旅行をした韓国人の80%が個人旅行だったというデータもあるほどで、特にヨギオテのユーザーにおいてはほぼ100%が個人旅行を選んでいると思います。

ーーチョンさんも日本旅行がお好きとのことでしたが、どのような旅をしていますか?

私自身も最初は東京や京都、福岡を旅行しましたが、その後はもっぱら地方を楽しんでいます。例えば山梨県を訪れた際は、富士山だけでなく甲府まで行って、武田信玄ゆかりの地を見に行ったりもしました。

他にも鹿児島が大好きで、黒豚など韓国では見ないものが食べられますし、都心とは風景も異なります。霧島や屋久島などの観光スポットもありますし、そして何より歴史的なコンテンツも豊富。「坂本龍馬はここで日本初の新婚旅行をしたんだな」というように、歴史に思いをはせながら旅行したりするのが醍醐味ですよね。

ーーすごくお詳しいですね…!日本人より日本旅行をしているのではと思うくらいです(笑)

本当に日本旅行が好きなんです(笑)。日本の地方の魅力を知っているからこそ、もっと多くの韓国人がより簡単に地方の旅行を楽しめるようになればいいなと個人的には思っていますね。ヨギオテとしても、日本の地方にスポットを当てることで他社との差別化に繋がっていくと考えています。

ーー経験を重視する韓国人旅行客が、日本を旅する際に困っていることはありますか?

特に地方においては、「どこに行こうか」「何をしようか」の参考になるような韓国語での情報はまだまだ限られています。

また、地方を旅する際の交通手段に困ることもあるかもしれません。私は最近、レンタカーを使って唐津を旅したのですが、電車で行くには時間がかかりすぎてしまいますよね。昨年行った阿蘇山も車でなければ行けないでしょう。日本でレンタカーをするというのはまだ韓国人にとって一般的ではないので、観光地として想起されたとしても諦めてしまう層が一定数いると思いますね。

こうした課題の解消も、今後ヨギオテが日本と一緒に取り組んでいきたいことの一つです。多くの韓国人ユーザーとのコミュニティを築いてきた私たちなら、韓国にまだ知られていない日本の魅力や新しい旅の仕方を広める役割を果たせると思っています。同時に日本のオーバーツーリズムの解消や地方の発展などにも繋がるでしょう。ヨギオテジャパンを、ユーザーと日本のホテルの両者に良い影響を与えられるビジネスとして成長させていく考えです。

2028年の売上目標1,100億円。1日1万部屋以上の予約を日本の宿泊施設へ

ーー韓国における訪日需要は今後どのようになっていくと考えていますか?

まず、韓国の海外旅行市場は今後も拡大を続けると予想しています。あるグローバルコンサルティングファームの調査によると、昨年4兆円だった韓国の海外旅行市場は、2028年には6.3兆円になるとのこと。コロナ禍以降の海外旅行需要は徐々に回復しているものの、実はまだ2018年、2019年のレベルには戻り切っておらず、その分今後まだまだ成長の余地があると考えられています。

ただし、韓国の訪日需要の今後については、今のところはっきりと言えるデータはありません。というのも、為替の変化や国際情勢など、さまざまな要因に影響を受けるためです。ただ、長期的な傾向としては増加傾向を続けるとされています。ヨーロッパの事例にはなりますが、昨年1,700万人ものイギリス人がスペインを訪問しました。これはイギリスの4人に1人がスペインを旅したことになるようで、その割合を韓国に置き換えれば1,300万人に。直近の訪日韓国人は年間およそ700万人なので、現在の2倍ほどの韓国人が日本を旅するポテンシャルは十分にあると私は考えています。

ーー現在の市況や今後の見通しをふまえると、訪日韓国人の誘客に積極的に取り組みたいと考える日本の宿泊施設も多いのではないかと感じます。韓国人観光客を迎えるにあたって、宿泊事業者が運営やサービス面で工夫すべきことは何かありますか?

いち旅行者として、日本の宿はどこもすごく努力されているなと感じています。利便性が高く、清潔で、安全で、コストパフォーマンスも良い。他の国や地域ではなかなかそうはいきません。すでに日本のホテルは韓国人旅行者に対して良い状態を提供できているので、その魅力を旅行を考えている韓国人たちにどう知ってもらうかが次の課題になるのではないかと思います。

ーーなるほど。では、ヨギオテや他のOTAに宿情報を掲載する際には、どんなことを意識すると良いでしょうか?

いろいろなホテル予約サイトを見ていると、同じ形の部屋がいろんな名前で販売されていたり、空き状況がリアルタイムでなかったり、正確でない情報も少なくないと感じます。これはサイト側とホテル側が直接やりとりせず、間にサプライヤーが入っている弊害でしょう。「行ってみたら想像と違った」「予約できていると思っていたけどできていなかった」みたいなことになりかねません。ですから私たちは、ユーザーにより良い経験を届けるためにも、ホテル側との直接契約にこだわっています。韓国向けのインバウンド対策に限った話ではありませんが、予約サイトで正しい情報をリアルタイムで取得できる状態は多くの旅行者が求めていることだと考えています。

ーー最後に、ヨギオテジャパンが描いている今後のビジョンについて教えてください。

2028年には年間1,100億円の売上高を目指しており、日本のホテルの予約を1日に1万部屋以上調達する計画です。大きい数字に見えるかもしれませんが、これは決して非現実的な目標ではありません。2024年5月時点で、ヨギオテユーザーに対して日本のホテルを1日に2,000部屋ほど販売できている状態で、この推移であれば順調に達成できる見込みです。

ユーザーの量的にも質的にも圧倒的な地位を確立した今の私たちには、結果に繋げる自信と、日本の宿泊施設にとって良きパートナーになる覚悟があります。ヨギオテに少しでも興味を持っていただけた宿泊施設の担当者様がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡をいただけたらと思います。

株式会社ヨギオテジャパン 代表取締役 チョン・ミョンフン氏
▲株式会社ヨギオテジャパン 代表取締役 チョン・ミョンフン氏:訪日ラボ撮影

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    この記事の筆者

    訪日ラボ編集部

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