日本の“空の玄関口”として多くの人が利用する成田空港が、大きく生まれ変わろうとしています。成田国際空港株式会社(以下NAA)は、2024年7月に「新しい成田空港」構想を取りまとめ、国に報告しました。
本記事では、構想の内容や、中間取りまとめからのアップデート事項についてわかりやすくまとめます。さらに、今後成田空港はどう変わっていくのか、インバウンドの観点からも解説します。
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「新しい成田空港」構想とは
成田空港は海外101都市との間に航空ネットワークを有する日本最大の国際拠点空港であり、引き続きその輪の拡大が見込まれています。またアジアを中心に外国人旅客は増加を続けており、旅客数におけるインバウンド比率も一層高まってきています。
そんな中で、今後も増大が見込まれる航空需要に対応していけるよう、「さらなる機能強化」を目指して国家プロジェクトとして進められているのが「新しい成田空港」構想です。
構想の方向性は、大きく分けて「旅客ターミナル」「貨物施設」「空港アクセス」「地域共生・まちづくり」の4つです。
現在の旅客ターミナル、貨物施設の多くは1970年代に整備されており、老朽化が深刻な問題となっているほか、レイアウトも開港当時の施設配置を踏襲したままになっています。そのためこれからの成田空港には、刻々と変化する航空ニーズに迅速かつ柔軟に対応できる施設が求められています。
また地域共生・まちづくりについては、地域と空港の関係をさらに深めて、持続的な発展を促していくことが望まれています。
前回のとりまとめから検討を深化
この構想については、2022年10月より学識経験者、国、県、地元市町を委員とする検討会で意見交換を実施しながら、空港周辺の自治体の意見も反映されてきました。その上で、取り組みの方向性については見解の一致が見られたことから、2023年3月に「中間とりまとめ」が示されました。
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その後はNAAが中心となって、4つの方向性を最新情報にアップデートした上で検討が進められました。
そしてその内容について再び見解が一致したことから、改めて「とりまとめ2.0」として国交省への報告が行われています。
構想の方向性
「新しい成田空港」構想の方向性は、大きく分けて4つあります。
1. 旅客ターミナルの再構築
現在の旅客ターミナルには、変化するニーズへの対応や、航空需要増加によるキャパシティの拡大など、さまざまな課題が生じています。また空港は訪日外国人にとって最初に日本に触れる場所であり、帰国する際には最後に利用する場所となるため、日本らしさを体感できる空間である必要があります。
そうした課題に対応していくべく、コンパクトなワンターミナル(チェックイン・出入国審査などの「本館」機能を1つの建物に収めた方式)への整備を行います。
今回のアップデートでは、ワンターミナルの形状や規模、実現可能な整備ステップについてイメージを示し、段階的にワンターミナルへ集約する計画を具体化しました。その中では、現在の成田空港駅(成田第1ターミナル)を閉鎖し、新旅客ターミナルに直結する新駅を設置するといった案も示されています。
2. 新貨物地区の整備による、物流機能の集約
成田空港の現在の貨物施設についても、次世代の物流フローに向けた施設設計や、キャパシティの拡大といった課題が生じています。日本の経済を支える貿易港として物流事業者が使いやすい空港を実現するために、施設とオペレーション両方を整備していく必要があります。
今回のアップデートでは、貨物保管と物流手配の一体運用や、フロー効率化の具体的なイメージ、空港隣接地との一体運用について検討しました。
3. 空港全体のアクセスの最適化
成田空港は京成本線などの鉄道や、都心のホテルなどから直通運転しているバスが接続しています。また今後は訪日外国人の利用も想定し、空港全体としてアクセスを最適化する必要があります。
今回のアップデートでは、コロナ回復期における混雑状況や課題を改めて確認し、新旅客ターミナルの整備に合わせた施策の方向性を検討しました。
4. 地域と空港との相互連携による持続的発展
成田空港は大規模内陸空港であることや、その建設をめぐる歴史的経緯により、地域の生活環境にも大きな影響を与えてきました。今後は持続的に発展していくエアポートシティの実現に向けて、地域と空港が相互に連携する必要があります。
今回のアップデートでは、参考となる海外事例を調査し、エアポートシティ実現のための方針検討を行いました。具体的には、日本ひいてはアジアの物流拠点としての「グローバルな視点」と、空港周辺の環境や産業を活かした「ローカルな視点」でのコンセプト策定などが検討されています。
今回の取りまとめの中では、新旅客ターミナルに機能の集約が完了した「ステップ2」までの事業費として、施設の整備費を8,000億円程度と想定しています。ただしこれはあくまで現在のイメージであり、具体的には今後の検討結果を踏まえて算出されます。
インバウンドへの影響は?
成田空港はこうした「さらなる機能強化」によって、年間発着容量が20万回増加し、インバウンド需要の受け皿にもなることが想定されています。またLCCを中心とした国内線の成長によって訪日外国人の地方送客も強化され、外国人にとっても使いやすい空港となることが期待されます。
「新しい成田空港」構想の検討内容は多岐に渡るため、その実現には多大な努力とエネルギーを要すると思われます。しかしインバウンド需要の増加を追い風に、国・地域の発展に貢献していくためには必要不可欠なものであり、実現が推進されることが期待されます。今後の取り組みも注目していきたいところです。
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<参照>
成田国際空港株式会社:『新しい成田空港』構想検討会
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