訪日外国人が最も訪れる場所として、2年連続1位になった「渋谷」。その地に2001年に開業し存在感を放ってきた、地上40階建ての「セルリアンタワー東急ホテル」が、5年をかけて全フロア改装に乗り出そうとしています。
日本を代表する人気エリアに構えるホテルとして、インバウンド需要にどのように対応していくのか。実際に訪日ラボ編集部が現地を訪れて取材しました。
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セルリアンタワー東急ホテルが、9月9日に新たなフロアをオープン
「セルリアンタワー東急ホテル」は、大規模改装の第一弾として、9月9日に新たなフロアとラウンジをオープンしました。
今回新設されたのは、28〜31階に位置する「セルリアンフロア」、セルリアンフロアに宿泊したゲストが利用できる「セルリアンラウンジ」、短時間の休息などに適した「ホスピタリティルーム」の3つです。
日本らしさを残しながら、幅広いニーズに対応した「セルリアンフロア」
セルリアンフロアは、最上級クラスの「エグゼクティブフロア」と、ビジネス利用も多い「スタンダードフロア」の中間グレードとして、28〜31階に誕生しました。
インバウンド増加による多様なニーズに応えるべく、ほとんどの部屋において、ベッドの仕様を「ハリウッド」または「ツイン」に調整可能。インバウンドではダブルベッドの需要が高い傾向にあるため、ゲストの希望に応じた柔軟な対応ができるようになっています。
*ハリウッド…シングルベッド2台を隙間なく寄せてダブルベッドに配置したスタイル
またバスルームのアメニティは環境を意識し、ミニボトルからポンプ式に変更。世界的に注目が高まっているサスティナブルツーリズムにも対応しています。
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最も部屋数が多い「スーペリアキング」は、開業時からのデザインコンセプト「選択・伝統・創造」を受け継いだ、和モダンスタイルに改装。ヘッドボードは伝統工芸を用いた格子模様、照明は行灯(あんどん)をイメージしており、日本らしさが全面で表現されています。
最大4名まで宿泊可能な「グランドルーム」は、家族連れの利用をイメージして改装されました。バスルームやウォークインクローゼットを広めにとっており、荷物が多い訪日外国人も使いやすい設計になっています。
ベッド脇の壁は渋谷の駅をイメージしたデザインになっており、セルリアンタワー東急ホテルならではの特別感が光ります。
宿泊者限定「セルリアンラウンジ」も家族連れを意識
セルリアンフロアの宿泊客が利用できる「セルリアンラウンジ」も、同日にオープン。コーヒーなどのソフトドリンクや和菓子が、セルフサービスでいただけます。
内装は障子や畳を取り入れた和のデザインで統一されていますが、畳を敷いた小上がりにはあぐらが描けるように高めのクッションが置いてあるなど、インバウンドを意識した配慮がされています。
また子供用のぬりえや駄菓子なども置くことで、家族連れにも対応できる空間となっています。
チェックイン・アウト前後でも快適に過ごせる「ホスピタリティルーム」
ロビー横にオープンした「ホスピタリティルーム」は、チェックイン前やチェックアウト後のゲストが利用できるスペースになっています。
パウダールームを兼ねた更衣室や荷物の整理台を備えており、訪日外国人がチェックイン前に荷物を整理する場所として使ったり、チェックアウト後にフライトまで時間を過ごすタイミングでの活用を想定しています。
セルリアンタワー東急ホテルは宴会場も擁しており、ロビーが混雑することも多いそう。宿泊客がより快適に過ごせるよう、このようなスペースを新設したとのことです。
宿泊客の外国人比率は8割、富裕層は家族で来る傾向
急増するインバウンドに対応できるよう、今後も改装を続けるセルリアンタワー東急ホテル。実際に、ホテルを取り巻く状況はどのように変わってきているのでしょうか。
今回、マーケティング部マネジャーの太田氏にお話を伺いました。
ーーインバウンドが急増する中で、特に渋谷は人気が高いエリアです。セルリアンタワー東急ホテルにおいて、インバウンド需要はどのように変化していますか。
セルリアンタワー東急ホテルの宿泊客において、外国人の比率は足元で80%となっています。2019年は66%、2023年は75%だったため、それよりも増加しています。そのうち欧米から来られている方が7割程度です。
我々の実感としても、系列ホテルと比べて、コロナ禍からの回復率は渋谷が群を抜いています。渋谷を目指して来られる方が増えたな、というのは前から感じていましたし、コロナ禍が明けてからは、さらに加速したように思いますね。
ーー80%!すごく高い割合ですね。またインバウンドの中でも、「グランドルーム」など家族連れを意識した改装をされていると思うのですが、背景について詳しく教えていただけますか。
ファミリー層の増加が理由です。DOR(一室あたりの滞在人数)という指標では、2019年は1.6人だったのが、2023年度は1.74人、足元では1.78人と、だんだんと上昇傾向にあります。
また富裕層は家族連れ、特に未就学の小さなお子さんを連れて来ることも多いです。
実際にコロナ禍前は、年末年始以外でエキストラベッドが不足することは無かったのですが、2023年には桜シーズンやそれ以外の期間にもエキストラベッドが足りなくなる事態が発生しています。また、2室以上の複数部屋の予約も増えています。
現在はアジョイニングルームやコネクティングルームで対応していますが、やはりワンルームにしたいという希望が多いです。
系列ホテルの「渋谷エクセルホテル東急」には4人部屋がありますが、それもすぐに満室になりますし、富裕層の方は広さや快適な空間を求めていらっしゃいます。
*アジョイニングルーム…隣接した部屋や向かい合わせの独立した部屋
*コネクティングルーム…隣接した部屋を内側のドアでつなげた客室タイプ
ーー富裕層ほど、ファミリーで来られるんですね。ただ、渋谷にはそういったニーズに対応できるようなラグジュアリーホテルが少ない印象があるのですが、実際はいかがでしょうか。
確かに渋谷は長い間ホテルが少なく、特にラグジュアリーホテルはほとんどありませんでした。最近は徐々に増えてきていますが、以前は渋谷自体の観光地化は進んでるのに、対応できる客室数が足りていないという状況だったんです。
そういった状況から、富裕層の方々のニーズに対応すべく、セルリアンタワー東急ホテルでは広さや快適さにもこだわった空間を作りました。
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20年以上、渋谷の一等地に構えるセルリアンタワー東急ホテル。単にインバウンド向けの仕様に変更するのではなく、国内の宿泊客も含め、ゲストのニーズに沿って柔軟に対応する、という細やかさが印象的でした。
セルリアンタワー東急ホテルは、5年をかけて全フロア改装に乗り出そうとしています。今後のリニューアルでは、どのような進化を遂げていくのでしょうか。注目していきたいところです。
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