グリーンスローモビリティ(グリスロ)とは?自治体の事例やメリット、インバウンド誘致の可能性を解説

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近年、観光地の移動手段のあり方の1つとして注目されている「グリーンスローモビリティ(グリスロ)」。時速20km未満で走行できる、4人以上が乗れる電動車を活用した小さな移動サービスのことで、地域の交通課題を解消できるほか、インバウンド客の誘客につなげられるといったメリットから注目されています。

本記事では、全国で導入が広がるグリーンスローモビリティについて、グリーンスローモビリティによって得られるメリットや、人気観光地における取り組み事例を4つ紹介します。

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グリーンスローモビリティ(グリスロ)とは

▲出典:「グリーンスローモビリティとは」(国土交通省)(https://www.env.go.jp/content/000234241.pdf)より抜粋

時速20km未満で走行することが可能で、4人以上が乗れる電動車をグリーンスローモビリティといい、国土交通省はグリーンスローモビリティの定義として、以下の3点を挙げています。

  1. 時速20km未満で公道の走行が可能なこと
  2. 電動車を活用していること
  3. 小さな移動サービスであること

車両には窓ガラスを設置する必要はなく、シートベルトやチャイルドシートの装着も義務付けられていないなど、“手軽”に移動できる点で非常に優れています。

低速、かつ電動車を用いることで環境に配慮した移動手段でもあります。

グリーンスローモビリティが注目されているワケ

国土交通省はグリーンスローモビリティを導入することで、交通が行き届かない地域や高齢者の移動手段の確保、観光地での渋滞問題を同時に解決できるとしています。なかでも観光地において注目されている理由について深掘ります。

グリーンスローモビリティは時速20km未満の低速走行が義務付けられているので、安全面や手軽さがメリットではありますが、これに限った話ではありません。観光という視点で考えると、低速走行によって観光客が景色を楽しめるほか、ドライバーとの距離が近くコミュニケーションが生まれやすくなります。

「地域とのコミュニティ形成」の側面でも、グリーンスローモビリティは今後需要が増加すると予想されています。観光客はもちろん住民同士によるコミュニケーションを促進し、地域の活性化や新たな社会的つながりを生み出す手段としても大いに期待できます。

関連記事:サイクルツーリズムとは?国が推進する理由やメリット、課題も解説

グリーンスローモビリティを導入する3つのメリット

グリーンスローモビリティは「移動手段」であるだけでなく、地域や観光社会においても好循環を生み出せるのが魅力です。

ここではグリーンスローモビリティ活用のメリットを解説します。

1. 地域の交通課題を解消できる

国内の観光客が多く訪れる地域においては、これまで渋滞や混雑といった交通問題が提起されてきました。一方で、グリーンスローモビリティの導入によって、従来の交通機関では行き届かなかった短距離移動のサポートが可能になります。

狭い道やアクセスの難しい場所であっても、グリーンスローモビリティの導入で快適な移動が実現できます。

2. 観光客の誘客につなげられる

グリーンスローモビリティは観光客の誘致に非常に効果的だと考えられてきました。日本文化体験や人との交流を好むインバウンド観光客の誘致にも、各観光地がグリーンスローモビリティを取り入れている理由の1つです。

地域での回遊ハードルが低くなるので、柔軟に旅程を組めるようになり、アレンジができる自由旅行を好む層にとっては最適な移動手段といえそうです。

3. 新たな雇用創出につながる

日本が直面している少子高齢化社会の観点でもメリットが。低速かつ小型であることから比較的安全に運転できるため、高齢者など通常の自動車運転に不安がある人も運転しやすく、新たな雇用につながるとされています。

新たに雇用された人が“地域貢献”を実感でき、生きがいや社会的つながりを感じられる点でもメリットといえます。

グリーンスローモビリティの取り組み事例4選

これまで日本国内ではいくつかの観光地において、グリーンスローモビリティの導入や実証運行が行われてきました。各観光地がそれぞれ抱えていた問題と取り組みの詳細、導入や実証から得られた見解を解説します。

1. 日光市(栃木県):観光客を分散して一極集中を回避

▲出典:「ルートマップ」(栃木県日光市)(https://www.city.nikko.lg.jp/soshiki/6/1024/4/2462.html)より抜粋

栃木の人気観光地・日光では、世界遺産日光東照宮に世界各国から観光客が集中し、日光の西側エリアへの観光客の訪問機会の少なさが問題視されてきました。

そこで2022年に、インバウンド客誘致も視野に入れつつ日光エリアでの回遊性向上を目標に掲げ、グリーンスローモビリティの導入に踏み切りました。

グリーンスローモビリティの導入の結果として西側エリアへの活性化が実現。“没入感のある体験”を求めるインバウンド観光客に対しても、非常に効果的な施策だったといえます。

2. 伊根町(京都府):不足する地域交通の代わりとなり快適な移動を実現

京都北部に位置する「伊根の舟屋」で有名な人気観光地・伊根町では、路線バスの本数が1時間に1本のみの運行状況から、基本的に観光客は自家用車でスポットを巡るのが主流でした。しかし、伊根観光の中心地は道路幅がとても狭く、渋滞に加えて歩行者の安全確保の課題が浮き彫りになっていました。

そこで伊根町は観光客が集中しやすいエリアにグリーンスローモビリティの検証運行を実施。平成29年にはじめて行われた実証運行では、期間中に延べ572人が利用し、そのうち77人のインバウンド客の利用があり、利用客からは以下の意見が寄せられたといいます。

  • 伊根の町並みを楽しみながら快適に移動できた
  • 運転手など地域住民とコミュニケーションができた
  • 子供づれの旅行に快適だった

伊根町は2度の実証運行を経て、車両の活用や観光需要を考慮した継続運行、地域のニーズや実情に応じた運行形態についてさらに検討するとしています。

3. 豊島区(東京都):アートとしての要素で、街に魅力をプラス

▲出典:「WILLER が新たな都市型交通「IKEBUS」の運行を開始」(WILLER株式会社プレスリリース)(https://www.willer.co.jp/news/press/2019/1101_3860)より抜粋

豊島区のグリーンスローモビリティである「IKEBUS(イケバス)」は、池袋駅周辺と駅から少し距離のある4つの公園や主要スポットを周遊するものです。

当時、池袋は2020年に開催予定だった東京オリンピックや「Hareza池袋」のリニューアルオープンに向けて国際アートカルチャー都市としての転換期でした。そこで同時期にオープンした公園やさまざまな観光スポットの移動をボーダレス化するため、グリーンスローモビリティが導入されました。

IKEBUSは単なる移動手段としてだけでなく、生まれ変わった池袋の街並みとインバウンドを含めた観光客との共存を創造しています。

4. 石見銀山エリア(島根県):観光客だけでなく住民も便利に活用

島根県大田市に位置する石見銀山は、世界遺産に登録された2007年当時、地元住民の生活に影響をおよぼすほどの渋滞が問題視されていました。2008年には、銀山地区への観光路線バスおよび観光客による自家用車の進入が禁止になりました。

その結果として一時期81万人とピークを迎えていた来訪者数は27万人まで減少してしまったのです。そこで大田市が着目したのがグリーンスローモビリティ「ぎんざんカート」の導入です。

近年においては石見銀山への訪問者数も回復を見せつつあり、インバウンド観光客や移動が難しい高齢者など、ぎんざんカートは非常に賑わいを見せています。

大田市はグリーンスローモビリティの導入により、新たな移動手段の確立だけでなく、今後は石見銀山への来訪者のV字回復を目指すとしています。

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<参考>
国土交通省:グリーンスローモビリティ
国土交通省:IoT技術等を活用したグリーンスローモビリティの効果的導入実証事業の公募
環境省:グリーンスローモビリティ

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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