11月1日〜4日、台湾最大の国際旅行博「2024台北国際旅行博(ITF2024)」が開催されました。会期中すべての日程で来場者数が昨年を上回り、4日間で36万4,563人を動員しました。
日本館(日本ゾーン)では、自治体・民間企業合わせて98団体が出展。台湾の旅行者へ日本の観光地や旅行商品・サービスをアピールする絶好の機会となりました。
訪日ラボは、現地で日本ブースに出展した10団体に取材しました。台湾向けのインバウンドプロモーションや旅行博出展における先進的な取り組み、そして台湾の旅行者に人気のエリアやコンテンツまで、台湾のインバウンド対策に役立つ情報をお届けします。
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- 台北国際旅行博(ITF)とは:日本ブースを運営する日本観光振興協会に取材
- 1. 西日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 グループインバウンド推進室 主任 神谷さおり氏
- 2. 阪神電気鉄道株式会社 スポーツ・エンタテインメント事業本部 甲子園事業部 広告・歴史館担当 主任 樋渡太一氏
- 3. 秩父市 産業観光部 観光課 課長 中島学氏 / 西武鉄道株式会社 鉄道本部 運輸部 スマイル&スマイル室(インバウンド担当)片山 陽介氏
- 4. 株式会社東京ドーム セールスプロモーション部 販売企画 グループ長 半田雅弘氏
- 5. 三井不動産商業マネジメント株式会社 海外企画・観光統括部 観光統括課 久保敬太氏
- 6. 公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会 審議役 川村泰正氏
- 7. 岐阜県 観光国際部 観光誘客推進課 誘客政策係 主任 内木智美氏
- 8. 公益社団法人ツーリズムおおいた 誘致営業部 海外誘致営業課 課長 川上武士氏
- 9. 熊本市経済観光局 観光交流部 観光政策課 主幹 石松祐一氏
- 10. 香川県交流推進部空港振興課 副主幹 久米純子氏
目次
台北国際旅行博(ITF)とは:日本ブースを運営する日本観光振興協会に取材
台北国際旅行博は、1987年に始まり、今回で32回目を迎える台湾最大の国際旅行博です。
日本ゾーンでは、自治体、鉄道会社、小売事業者などさまざまな団体が出展しており、地域やテーマに合わせて連携したブースも目立ちました。
日本ブースを運営する日本観光振興協会の髙橋氏によれば、今年は宿泊事業者などの新規出展団体が増加し、コロナ禍前の2019年に匹敵する盛り上がりとのこと。豊島区と区内の事業者が共同で出展し、コスプレやアニメを打ち出してPRする「チームとしま」や、台湾の半導体メーカーTSMCを誘致したことでも注目される熊本県の大型ブースなど、プロモーションに力を入れる自治体も目立ちます。
2025年5月に鳥取県で開催される「日台観光サミット」を控え、髙橋氏は「インバウンドだけでなくアウトバウンドも見据えた相互交流への注力を行っていきたい」と語りました。
ではここから、日本ブースに出展した10団体へのインタビューをお届けします。
1. 西日本旅客鉄道株式会社 マーケティング本部 グループインバウンド推進室 主任 神谷さおり氏
台湾のお客様に西日本エリアの魅力発信と、JR西日本を活用した旅行プランの認知拡大を目的としています。関西にお越しの皆さんを西日本各地へ送客したいと考えています。そのため、関西空港から入ったお客様に対して、広島や山口へ送客し福岡空港から帰国するルート等、多数の西日本エリアの周遊の方法をご紹介しています。
(訪日ラボ編集部:来場者の反応は?)
旅行会社さんにブースに入ってもらい、レールパスの販売をしていますが去年よりも売上は好調です。
(注目されているコンテンツは?)
西日本の観光名所を掲載したボードを設置し、台湾人の方が行きたい場所にシールを貼ってもらったところ、定番の京都や姫路城だけでなく、鳥取砂丘や出雲大社、黒部渓谷など幅広いエリアにばらけている印象です。
これまでは大阪のニーズが極端に大きかったですが、定番ではない日本を体験したいというニーズが見てとれます。
(今後のプロモーションは?)
台湾の方は、観光列車への関心が高い人が多い印象です。JR西日本でも多くの観光列車があるので、それらを訴求したいと考えています。瀬戸内エリアのPRも引き続き行っていく予定です。
2. 阪神電気鉄道株式会社 スポーツ・エンタテインメント事業本部 甲子園事業部 広告・歴史館担当 主任 樋渡太一氏
阪神グループとして出店し、ブース内で甲子園歴史館の入館券、六甲山スノーパークの入場券などを販売しています。ITFでチケットをご購入いただいた方には、ITF限定でユニフォームもプレゼントしていますよ。
(人気のコンテンツは?)
2014年に台湾で上映された「KANO」という映画に阪神甲子園球場が出てくるのですが、その作品に関連したコンテンツが人気です。球場内を一望できる「バックスクリーンビュー」で球場をバックに記念撮影をしたり、KANOのユニフォーム、蔡英文氏のサインボールなどを写真に撮っていく人が多いです。
(今後の取り組みは?)
まだまだ甲子園歴史館の認知は高めていけると感じました。日楽座、灘五郷など阪神グループ間で連携したコンテンツも用意しているので、一人でも多くの方にPRしていきたいですね。
3. 秩父市 産業観光部 観光課 課長 中島学氏 / 西武鉄道株式会社 鉄道本部 運輸部 スマイル&スマイル室(インバウンド担当)片山 陽介氏
西武鉄道と秩父市で連携して出展しています。新型特急車両「ラビュー」の利用促進、鉄道から秩父市への誘客の双方を高めるねらいがあります。西武鉄道を利用すれば池袋から最速77分で快適に秩父まで来られることをもっと伝えていきたいです。
(来場者の反応は?)
西武鉄道の認知度が高く、予想以上に多くの方がブースに足を運んでくれました。鉄道に乗って秩父を目的に旅をするという観光スタイルにもニーズがあると感じます。中には西武鉄道のワンデーパスで秩父へ出かけたことがあり、また行きたいと言ってくれた人もおり、非常に手応えを感じています。
(今後の取り組みは?)
台湾をメインターゲットとして、秩父をもっと印象付けていきたいです。旅行博のようなリアルプロモーションからSNSなどのオンラインプロモーションまで行っていますが、現地でのお出迎えから秩父へのアテンドまで行うなど、一気通貫したプロモーションを考えています。
4. 株式会社東京ドーム セールスプロモーション部 販売企画 グループ長 半田雅弘氏
東京ドームは野球熱の高い台湾ではよく知られていますが、周辺施設「東京ドームシティ」の認知度をもっと高める目的で出展しました。また、日本の企業が台湾でどのようなプロモーションを実施しているかも今回の出展で勉強したいと思っています。
(売り出している主なコンテンツは?)
まずは「東京ドームシティ」はどんな施設なのか、何が体験できるのかをPRすることに注力しています。また体験価値を知ってもらう為、よみうりランド様、東京都競馬様(大井競馬場)を加えた3社で「東京で楽しめる冬のイルミネーション」の訴求も実施しています。
(今後の取り組みは?)
今回、KKdayで期間限定割引を仕掛けたところ、目に留まってチラシを持っていってくれる方が多くいました。このようなプロモーションを通して台湾の方や現地旅行会社に東京ドームシティを認知してもらい、今後セールスコールの足掛かりにしていきたいと考えています。
また、東京ドームグループが持つ宿泊施設(東京ドームホテル・熱海後楽園ホテル)もあるので、宿泊とセットにしたPR活動や仕掛けもしていく予定です。
5. 三井不動産商業マネジメント株式会社 海外企画・観光統括部 観光統括課 久保敬太氏
11/26に開業する「三井アウトレットパーク マリンピア神戸(兵庫県)」のオープン告知等、運営する各地の三井ショッピングパーク(ららぽーと)と三井アウトレットパークを知ってもらうことを目的に出展いたしました。
昨年より来場者数も増えていて、私どものブースでも昨年以上に盛り上がりました。
(売り出している主なコンテンツは?)
弊社が運営・管理している三井アウトレットパークと三井ショッピングパーク(ららぽーと)が持つ、バラエティに富んだ店舗ラインナップや楽しいショッピング体験をしていただける点などを訴求しています。
(人気のコンテンツは?)
ショッピングだけでなく、水辺環境を活かした各種アクティビティが魅力の「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」への期待の高さは感じました。
また、台湾から近く、実物大ν(ニュー)ガンダム立像が観光名所の一つとなる三井ショッピングパーク ららぽーと福岡(福岡県)や、人気のハイブランドが数多く揃う三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島(三重県)など地方の物件の問合せも多かったです。
(今後の取り組みは?)
台湾からのお客様は非常に多く、引き続き観光展を活用して当社の運営管理をする商業施設の認知拡大に取り組むことと、SNSによる発信も強化し、よりリアルでタイムリーな情報をお届けしていきたいと考えています。
また、今後は、台湾にある三井アウトレットパークや、ららぽーと とも相互で連携した取り組みも積極的に行っていきたいです。
6. 公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会 審議役 川村泰正氏
2025年4月から10月まで開催される「大阪・関西万博」に伴い、台湾を重要なターゲット国と位置付け、旅行会社を通じたプロモーションを行っています。
(どのようなプロモーションを行っているか?)
大阪・関西万博の公式サイトで電子チケットを販売することに加え、台湾の旅行会社に台北発着便と大阪万博の入場券がセットになったツアーの造成をお願いしています。開幕から夏休みまでの会期の前半は比較的空いている傾向にあるため、より安価なチケットになっています。旅行博で実施した万博キャラクター「ミャクミャク」のステージも好評です。
(来場者の反応は?)
反応はとても良く、パンフレットなど持ってきた販促ツールがなくなってしまいました。日本への関心度も相まって万博へのモチベーションも高い人が多いです。今後も旅行会社へのプロモーション、SNSでの情報発信などで万博の魅力を伝えて会期中に多くの人が来訪してくれるようにしたいですね。
7. 岐阜県 観光国際部 観光誘客推進課 誘客政策係 主任 内木智美氏
観光庁の宿泊統計によれば岐阜県には多くの台湾観光客が来ており、重要なインバウンド市場であると位置付けています。ブースでの台湾の方の反応を見て、今後の訴求に反映していければと考えています。
(売り出している主なコンテンツは?)
海外の方にも有名な白川郷、高山はもちろんのこと、岐阜市、関の刃物、関ヶ原古戦場、飛騨市、恵那市のほか、10月中旬にリニューアルした新穂高ロープウェイなどを中心にPRを行っています。
台湾の方にはスキーの人気が高いので、西日本最大級のスノーリゾートである郡上エリアも重要なコンテンツです。
(会場での反応は?)
多くの方がブースに足を運んでくださって嬉しいです。ドライブで行けるスポットなど、新しいコンテンツを探している方が多い印象ですね。コンテンツとしては、恵那峡の紅葉や、関の刃物、関ヶ原古戦場記念館といった戦国時代にちなんだものの反応が良く、新しい気づきを得られました。
今後のプロモーションとしてオフラインでは旅行博イベントや旅行会社へのアプローチ、オンラインではWebサイトやSNSでの情報発信に力を入れて、岐阜県をPRしていきたいです。
8. 公益社団法人ツーリズムおおいた 誘致営業部 海外誘致営業課 課長 川上武士氏
昨年に引き続き、大分県および18市町村の知名度の向上を目指して、さまざまな販促物を持ってきてPRしています。昨年は九州ブースの一員として参加しましたが、今年は大分県単独で出展しました。
(来場者の反応は?)
単独ブースということもあり、昨年とは違った反応が見られました。18市町村を広くPRしていますが別府、湯布院はご存知の方が多く、これまで同様にパンフレットを欲しがる方が多い印象です。
(今後の取り組みは?)
大分と台湾とを結ぶチャーター便が2024年から再開されているほか、福岡、熊本など九州各県に台湾便が飛んでおり、11月26日には宮崎からも新規就航することが発表されております。隣県からの誘客を目指して旅行会社へのアプローチ、情報発信を行っていきたいです。
9. 熊本市経済観光局 観光交流部 観光政策課 主幹 石松祐一氏
今年の出展では、熊本全体の知名度向上のために県と各市が連携する形で出展しています。大きなブースでの出展となったため、パンフレットの捌け具合や立ち寄る人数も昨年より多く、手応えを感じています。(売り出している主なコンテンツは?)
熊本県はくまモンや熊本城、上天草は今年から始まったジップラインのアクティビティをPRしています。ほかに反応としては南阿蘇鉄道や阿蘇山が人気のようです。「熊本城おもてなし武将隊」や山鹿市による「山鹿灯籠踊り」のステージにも注目が集まっていました。
(今後の取り組みは?)
熊本県は台湾との直行便も多く運行しているため、今後も県と市の連携を強め、県内を周遊をしてもらえるようなプロモーションに取り組んでいく予定です。
10. 香川県交流推進部空港振興課 副主幹 久米純子氏
高松空港には、台北からチャイナエアラインが週5便、台中からスターラックス航空が週3便発着しており、搭乗率も好調です。2025年に開催を控える「瀬戸内国際芸術祭」を台湾の方にも知っていただき、芸術祭を目的とした訪日客を増やしたいと考えています。
(売り出している主なコンテンツは?)
島旅、アートは香川らしい魅力だと考えています。船に乗って芸術と食を巡る旅を楽しんでもらいたいです。高松空港から観光地へのアクセスもよく、周遊しながらぎゅっと詰まった香川の魅力を感じていただきたいです。
(来場者の反応は?)
今年は「瀬戸内国際芸術祭」がメインテーマですが、すでに行ったことがある、これから行く予定だという人たちも多く来場してくださいました。3回も芸術祭に行ったことがあるという人もいて、アート県としての認知度拡大に期待を寄せています。
(人気のコンテンツは?)
小豆島や直島など「島旅」の人気が高まっています。最近ではサイクリングで周遊する訪日客も多く、高松から小豆島や直島、しまなみ海道をめぐるツアーが注目を集めているようです。旅行博で伺った生の声を今後の取り組みに反映していきたいですね。
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