「クールジャパンDXサミット2024」が12月9日、八芳園(東京都港区白金台)にて開催されました。官民問わず業界のリーダーが集結し、日本のコンテンツの発見・磨き上げや、海外需要開拓に必要なベストプラクティスを共有、意見交換することを目的としたカンファレンスです。本記事では、イベントのダイジェストをお届けします。
※訪日ラボ(株式会社mov)は、「クールジャパンDXサミット」のメディアパートナーです。
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元サッカー日本代表監督・岡田 武史氏、俳優・斎藤 工氏など著名人の登場も。豪華登壇者が「クールジャパン×DX」について議論
「クールジャパンDXサミット」第3回目となる今回は、「デジタルで進化する日本のブランド力」、「成功者が語るDX戦略のリアル」を届けることをテーマに、豪華登壇者を迎えてのパネルディスカッションが複数行われました。
パイオニアトーク(基調講演):元サッカー日本代表監督 岡田氏登壇
パイオニアトーク(基調講演)には、元サッカー日本代表監督、現在は株式会社今治. 夢スポーツ 代表取締役会長としてFC今治を経営する岡田 武史氏が登場。クールジャパンDXサミット オーガナイザー VponグループCEO 篠原 好孝氏を聞き手役に、「日本の魅力で世界を元気に!岡田会長に迫る!FC今治の躍進と今治地域創生モデルの真髄」のテーマでディスカッションしました。
先日、J2初昇格を果たしたFC今治。会長就任前は監督としてサッカーのマネジメントをやってきた岡田氏は、試合日以外の日にも賑わいや交流が生まれるスタジアム「アシックス里山スタジアム」を2023年1月に完成させるなど、地域の経営者として今治を盛り上げる活動を精力的に行ってきました。
篠原氏は「クールジャパンを進める上で課題となるのが地域の周遊。今治のモデルは何かヒントになるのではないか」と話します。岡田氏は「世界は変わり始めていて、ロールモデルがいない時代、自分で考えて自分で行動しなければいけない時代が来る。『エラー&ラーン』の時代だ」「次世代のためにどういう社会を残すかという想いで、環境教育にも取り組んできた。目の前でできること、自分にできることをやっていきたい」と語りました。
新たなクールジャパン戦略を機能させるには
続いてのセッションでは、「鍵はDX!新たなクールジャパン戦略は機能するのか」と題したセッションが行われました。政府が今年6月に策定した「新たなクールジャパン戦略」では、数値目標としてクールジャパン関連産業の海外展開を「2033年までに50兆円」、さらに日本ファンの拡大として「日本が大好き」の割合の10ポイント上昇を目指すとしています。
エンタメ業のコンサルティングを専門とする中山氏は、「日本は『製造業立国』。その中で15%程度の規模をコンテンツで賄うという考え方は初めて。この10年で(市場規模が)3倍になったのを、この後の10年で4倍にするというのは大変だが、もしかしたら可能なのかもしれないと思えてきた」と語ります。山田氏は、フードロスなど食に関する事業を行う中で「今まで日本は全てのコンテンツが素晴らしいにもかかわらず、言語の壁が大きかった。その中で食には言語の壁がない」と指摘するなど、各々の専門分野に関する知見の共有が続きます。
梅澤氏は労働力不足を業界の大きな課題とした上で、最後に「体験価値を高めること、適切な値付けをすることで収益性を高めること、そしてそれを従業員あるいはサプライヤーにも還元することが重要」と締めくくりました。
日本の食文化「発酵」の伝統と革新:俳優の斎藤工氏登壇
続いて「発酵」をテーマとするセッションでは、“発酵オタク”を自称する俳優・映画監督の斎藤 工氏が、金沢の酒蔵 福光屋の14代目・福光 太一郎氏、アスリートの腸内フローラの研究を専門とするAuB株式会社代表の鈴木 啓太氏、そしてVponグループCEO 篠原氏とともに、発酵と体調管理、そして日本の食文化について語り合いました。
福光氏は、「戦時中にお米が足りなくなり、醸造用アルコールを混ぜてなんとかつくっていた。2001年から昔ながらの製法に戻したが、味わいが一度崩れると元になかなか戻せない」と、繊細かつ複雑な技術について解説。400年続く酒蔵の14代目でありながら、スキンケアなど新たな事業創造にも挑戦しているといいます。
登壇者4名は、いわゆる“おばあちゃんの知恵”など、日本に昔からある歴史的文化と健康との関連性について議論。斎藤氏は「たとえばロケ弁は予算が削られがちだが、食こそ表現に直結する、俳優だけでなくスタッフの方たちのパフォーマンスにも影響するもの」と、日々の食体験の重要性について語りました。
「忖度なしの観光DX」インバウンドの高付加価値化と現在地
インバウンドに関するセッションも。「忖度なしの観光DX - インバウンドの高付加価値化と現在地 -」と題したセッションでは、「都道府県別の外国人消費単価」の話題に。消費単価を軸にみてみると、奈良県・山梨県・千葉県など「観光地」としてのイメージがあるはずの意外な地域がワースト5になっており、地方への分散はもちろん「価値を高める」取り組みが必要となっている地域も多くある状況です。
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こうした課題に対する「デジタルの活用」について問われた陳内氏は、「データを活用して(PDCAを)高速で回す地域が勝ち組になるが、こうしたことを真面目に語っている地域が少ないのではないか。将来どうなっていたいかを描いている地域が少ない」と指摘しました。高橋氏もこれについて、「アナログでもできなくはないが、20年といった時間軸まで待っていると、その時には地域が生きているのか。デジタルでできるならやるべき」と応じました。
大阪・関西万博カウントダウンセッション
さらに大阪・関西万博に関するセッションでは、元観光庁長官、現在は公益財団法人大阪観光局理事長を務める溝畑 宏氏が韓国からリモート出演。地方分散が課題となる中で、「大阪という都市は、歴史的に見て大阪に来たお客さんを全国に送客していく機能を持っていた」と話します。イタリア・ミラノも例に挙げながら、その国のほかの地域や、近隣国に送客する拠点となる都市の重要性を指摘しました。さらに「万博自体は6か月で終わってしまう。これからレガシーとして30年長く続けていけるように進めれば、万博は成功したといえる。そのためには各都市との“線”を結んでいくのが大事」と呼びかけました。
万博の催事企画プロデューサーを務めるクリエイティブディレクターの小橋氏は、万博について伝えたいことを問われると「最も大事にしているのは、184日ある中で、来た人たちが何か心で感じて、持ち帰ってもらうこと。一度だけでなく、次に来る人のガイドとして、何度も来て味わってもらいたい」と話します。コンテンツとしては万博史上最大の水上ショーや、サウナ、ライブエンターテインメントなど「万博史上初」の取り組みを進め、184日間毎日味わえるイベントを用意しているといい、「どんなきっかけでもいいので、万博に行ってみたいと思ったらぜひ来てほしい」と熱く語りかけました。
クールジャパンDXアワード2024
イベントの最後には、クールジャパンを推進する取り組みを表彰する「クールジャパンDXアワード2024」が行われました。
最優秀賞に輝いたのは、和包丁の販売などの事業を行うにあたりShopify・Google口コミ・Googleアナリティクスのデータまで一元管理して施策に活かしているという、TAIMATSU株式会社 DXデザイナー 奥隅 風河氏。数十年後には産業自体がなくなってしまう可能性のある伝統工芸を、データを活用しながらより進化させ、守り抜こうと取り組む姿勢が評価されたようです。
また、優秀賞には、「伝統的酒造り」が無形文化遺産に登録される中、データを活用しながら小容量・軽量の日本酒缶を販売するアイディーテンジャパン株式会社 代表取締役 澤田 且成氏。特別賞には、本物さながらのバンジージャンプを体験できる次世代アトラクション「どこでもバンジーVR」を提供する株式会社ロジリシティ 代表取締役 野々村 哲弥氏が選ばれました。
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